[Another Side: ?]



――ここ最近、スレイプニルの仲間達が騒がしい。
まあ割とスピード狂が多い仲間だから騒がしいのは毎度の事である。

……が、ここ最近のそれはいつものそれとは大きく違っていた。


一つ、騒ぎの量がいつもより大きい気がしている。

一つ、騒ぎ方に微かな怒気が含まれている事が多く見られる。

一つ、トップスピードに乗って走るコースに他の種族や人間の住む地域が入り始めている。


原因は分かっている。人間の王の仕業だ。
あ奴がネクターの独占を始めた事が全ての始まりなのだ。

スレイプニルの仲間達が、いや全てのエンブリオがその行為に怒りを感じるのは当然であろう。
この件に関しては私も我慢ならない所がある。

しかし、それにしても行き過ぎているのではと私は考えてる。
何とかしたいものだが、拙者一人で何ができるだろうか……



〜・〜・〜・〜・



風の噂によると、人間達が王に反乱を仕掛け始めたらしい。
人間達が言うには『一揆』というらしい。
エンブリオ達の中にはこの一揆とやらに参加し、人間と行動を共にしている者もいるようだ。

拙者もエンブリオの端くれとして一揆に参加できるのではないだろうか。
それならば拙者にもできる事があるという訳だ。

早速一揆に参加すべく行動を開始しよう。
しかし、エンブリオとして参加するからにはその者と契約をすることになるわけだ。
できればよい契約者に巡り合いたいものだ……



〜・〜・〜・〜・



ついに一揆参加の冒険者を見つけた……と思ったがよく見るとあれは同族達ではないか。
一緒にいる者が契約者か……？

……いや、契約しているように見えない。
いかに同族といえど、契約者なしに行動を起こすとは思えなかったが……

気になった拙者はその同族達に会ってみる事にした。



〜・〜・〜・〜・

拙者は彼らに自分の事情を伝えた。
それと同時に彼らの事情も聞く事ができた。

どうやら彼の契約者は現在療養中らしい。
契約者抜きでここまでやれているのは中々のものだが、肝心の契約者の能力に不安を覚える。
しかし同族達の話を聞く限り、決して悪い人間ではない事が窺えた。

それならば実際に契約するかどうかは契約者を見定めてからでも遅くない――拙者はそう判断した。

拙者は同族達に同行を願い、彼らも拙者を歓迎してくれた。

そう言いながら拙者達スレイプニルに伝わる決めポーズを披露する。

こうして、拙者は同族であるフェリオ達と行動を共にするようになった。

この日は世話になっているらしい医者の家に止まる事となった。
その際、同族達の契約者の様子を見る事が出来たが、まだ眠ったままであった。

聞くところによると彼の病状は毒によるものらしく、目を覚ますのは1、2日後になるとの事。
病状を回復させるには遠いが、私は治癒の力を使い、彼の体力を少し回復させた。



〜・〜・〜・〜・



次の日、拙者達は医者からの次の依頼をこなすべく、水辺にやってきた。
今回も拙者達だけではなく同行者も一緒の依頼だ。

さて、こうして同族と手を取り合って戦うのは初めてである。
まずはお手並み拝見と行きたい所だ――

龍は少し思案する様子を見せた。

龍が廃墟と口にしたとき、花蓮の眉がぴくりと動いた。

横から何かが突風の如く素通りする。