「まんださん、最近調子いいみたいです。最初はどうなることかと思いましたけど」

　水辺の岩に腰掛けて、胸の奥に感じる気配に話しかけると、答えるようにじんわりと熱くなるのが分かりました。
　まんださんとのコミュニケーションは、昔からこんな感じで、いるのは分かるけれど話すことはできたことがありません。
　これをコルリに預けてくれた白狐にそのことをいうと、笑ってそのうちできるようになると教えられ、気長にその時を待って幾星霜。その気配はついになかったですが、ここ最近は急速に力が強くなっていて、もしかしたらもうすぐその時が訪れるのかもしれない、と期待半分です。

「まんださんはどんな人なんですかねー。クレーの子はちゃんと実体があるけどまんださんはないですし、エンブリオもいろいろですよね。」

　傍からみれば（自分で見ても）ひとりごとを繰り返してあたりを見渡すと、太陽が緩やかに西の山に差し掛かりつつあり、立ち上がりました。

「じゃ、行きますか。また森に戻りますよ。まんださん、明日も頑張りましょうね。」

コルリの目線に思わず体をこわばらせる。

なんの疑いもなく受け取ろうとした花束が瞬時に燃え上がる。
驚いた雪菜は思わず尻もちをついてしまった。

目の前で起こった出来事を理解するのに、少しの時間がかかった。

コルリの髪を指差して、ニヤリと悪戯ぽく笑ってみたり。

僅かに視線を逸らし、こめかみをポリポリと掻いて見せる。

少し珍しげな声音である。

それが何だって顔してる、と言われて、いや、と首を振り。

自分も尻尾持ちなので、ぱしんと地面を軽く打ってその存在を主張した。

（想像した）（１人で演奏会とか楽しそう）