城内に至る地下通路は、既に魔王城と呼ばれるに相応しい怪物が徘徊する魔境であった。
狭い通路を駆けまわり障害を駆逐する黒く巨大な馬、様々な動物が継ぎ接ぎされた合成獣、
そして極めつけは疑似生命体。作られたからかなりの年月が経っていると一目で分かる彫像は、
しかし単なる装飾ではなく、侵入者を排除する為に自らの意思で動き出す生命体であった。
　しかもそれは、エンブリオだった。肉以外からなるエンブリオはさほど珍しくは無い。だが、
かのエンブリオ、ガーゴイルは、その言葉から察するに、その場を守護するという明らかな目的
があるようだ。契約者に命ぜられているのであればそれでいい。しかし、もし守護者として作られ
たエンブリオであるならば…。この城には人造エンブリオを創りだす術を持った人物いるのかも
しれない。そうでなくとも、その技法を記した文献などが残されているかもしれない。
　やはりこの反攻に参加したのは正解であった。平和であれば、この城に立ち入る機会など訪れ
なかっただろう。城を探索出来れば、収穫を得る可能性は大きい。期待を胸に抱き、想像を膨
らませていると、目の前に鋭利な爪が振り下ろされ、現実へと引き戻される。まずはこの番人たち
を仕留めなければならない。

目の前には執事服を纏った羊のような生命体