私の名前は探索者J。
今日はこの私の華麗なる一日を紹介したいと思う。


スパイ大作戦の朝は早い。

「おはようフェルプス君」

最近は良い情報が盗れないと口をこぼした。
まず、目標（ターゲット）の入念なチェックから始まる。

「そこで今回の君の使命だが……」

今日は潜入指令。
彼は秘密道具をカバンに詰め、仮想敵国へと向かった。
基本的な方法は決まっているが、最近の情報局員の嗜好に合わせ
多種多様な潜入方法を考えなければいけないのが辛いところ、と彼は語る。

「例によって、君もしくはメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても」

彼の手にかかれば見るだけで機密情報の隠し場所が分かってしまう。
軍事大国アメリカ、ここにあり。
今、一番の問題は後継者不足であるという。

「当局はいっさい関知しないからそのつもりで」

変装に満足できないとその日の潜入をやめてしまうという。
30年前は何十人もの秘密工作員達が鎬を削ったこの国だが、
今ではスパイは彼一人になってしまった。

「なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る」

今日も彼は、日が昇るよりも早く顔の整形を始めた。
明日も、明後日もその姿は変わらないだろう。


そう、スパイ大作戦の朝は早い……