［基本］OK.　［戦闘］OK.　［スキル］OK.　

いつも穏やかにゆっくり話す彼の返答をまたず、矢継ぎ早に言葉をかけます。
提案とはいうものの、実質的に強制であることを彼が気付く前に
ぱちんと手を叩いて有無を言わせず、話を締めくくりました。

そして、呆気に取られているであろう彼に
それでは後ほど、と声を掛けて場を後にしました。



森に入る直前、後ろを振り返ると未だ佇んでいる彼を見て、
小さく頭を下げます。
――ごめんなさい、と心で謝罪しつつ。








森に入ると手近な樹に背を預けると、一気に力が抜けます。
ずり落ちる様に座り込み……いえ、崩れ落ちました。文字通りに。

茎が、蔦が、葉が、花が。
私の脚が枯れていきます。



当然と言えば当然の結果です。
命を呑むのを止め、捕えていた魂を解放し、
それでも戦いを止めなかったのですから。

あと120日だったとしても、あと半日ほどだったとしても、
私の身体は持ちませんでした。



だから、嘘を吐きました。
純真な彼はきっと疑う事は無いと、知っていながら。

彼は探しに来てしまうでしょうか。
それとも、待ち合わせ場所でずっと待っているでしょうか。
待ち合わせに来ない私に怒って置いて行ってくれれば良いのですけれど……
望みは薄そうです。

待ちぼうけになることに申し訳ない気持ちはありますが、きっと大丈夫でしょう。
時間になればあの街に送られるでしょうから。





ゆっくり目を瞑ると森の中を吹き抜ける風を感じます。
風が心地よいですね、と声に出したところで
声を返すひとがいないことに気が付いて苦笑しました。

たったの一日半。
長い長い一日半。

すでに傍に居る事が自然になってしまっていたのですね。
その事に気が付いて再びの苦笑。
彼が同じで無ければ良いのですけれど。



そう。長い、一日でした。

――出逢いがありました

　　風の魔女さんは少し皮肉屋ですが、素敵なお茶の時間をくださいました。
　　いつか穏やかな旅ができますように。

　　キャンディショップの彼女は、花壇を作ってくださいました。
　　あなたの笑顔が陰る事がありませんように。

　　夜色の貴方は、穏やかに慰めてくださいました。
　　優しいあなたが心穏やかに過ごせる日が訪れますように。



――教えてもらいました

　　諦めないことを。信じることを。

　　私も共に居る世界を取り戻したいと吠えた彼。
　　一緒に居れる道を諦めたくないと切実な目で訴えた彼女。
　　世界が異なっても友人だと手を伸ばし続けてくれた彼女。
　　祝福を与えるから諦めるなと諭してくれた彼。
　　信じたもののために消えた聖女様。


　　戦うことの覚悟を。向き合う勇気を。

　　迷い悩みながらも真っ直ぐに向き合ってくださった先生。
　　戦いの結果によらずあの昏い世界へ向かうと言った彼女。

　　
　　あの世界でもあなた達が眩くあれますように。　　



――たくさんのものを貰いました

　　せんせいからは御守りと穏やかに眠れる事を祈っていただきました。
　　温かな言葉が、想いが私を暖めてくれました。
　　……せんせいも、どうか安らかに眠れますように。


　　甘い香りの彼女からは赦しと希望、優しさを。
　　彼方の思い出も、此方の思い出もぜんぶぜんぶ、この胸にあります。
　　朗らかな笑みがあなたと、あなたの周りに在り続けますように。


　　小さなお花のような彼女からはお花にお弁当、それと……想いを。
　　嬉しかったです。もう少しだけ、時間が欲しくなると思ったくらいに。
　　どうか幸せになってください。あなたが違う幸せも見つけることができますように。



――奇跡を見ました

　　いつかの世界で消えた彼女が、幸せそうに笑っていました。
　　あの夕暮れを、あの星空を、私は……忘れません。
　　あなたの幸せが長く続きますように。



――長い長い旅がありました

　　少しのんびり屋さんな、どこまでも純粋で、どこまでも優しいあなた。

　　ありがとうございました。一緒に居てくださって。
　　ごめんなさい。何も言わずに眠ることを。
　　さようなら。どうか、どうか幸せになってください。

　　そして願っても良いなら、また……うぅん。何でも、ありません。









少し重くなってきた体をどうにか動かして
手を大地につけ、枯れかけた声で歌います。

――どうか誰もが幸福に――










--:--　”祈り”――

ENo.274 咲星 とのやりとり


ENo.388 ユイノ とのやりとり


ENo.624 キャロ とのやりとり

特に何もしませんでした。