［基本］OK.　［戦闘］OK.　［スキル］OK.　

斯くして、戦いは終わった。

──なんて、たったそれだけの言葉で片付けるわけにはいくまい。


戦争には、どうやら負けたようだ。
しかし、悔しさというものは特段感じない。
自分のできる限りはやったし、達成できた……と思えるからであろうか。
それとも、悔しさを感じるよりも大切なことがあるからであろうか。

きっと、両方だろう。


36時間。──短いようで、長い、永い戦いであった。
単なる戦いではなかった。よく見知った者が、実は自分とは出自を異とした敵であったり、
本来は敵であるはずなのに、彼らの持つ理由によって味方となったり、その逆となったり。

その中でも自分は……結果的にかもしれないが、本来あるべき立ち位置で戦えた。
今振り返って思えば、正解だったと感じる。


──結局のところ、選択が正解かどうかなんて、終わってみるまでわからない。
選んで、分かれて、ずっと進んで、ゴールイン。これから先結果が変わらなくなるまで、何もわからない。

たとえその場において間違った選択をしても、その後辿る道で誤りは正解へと変貌するかもしれない。
その逆で、たとえ正しい選択をしても、その後辿る道で正解は誤りへと変貌するかもしれない。

そう考えると私の異能は、ほぼ意味のないものと断言できてしまう。
それこそ、じゃんけんで絶対に勝てる程度の、つまらない異能だ。


今までそれに振り回されてきた人生が、途端におかしなものに見えてきた。
──いや、異能のせいにしてはいけないな。私はそれに勝手に振り回されていただけだ。

もう少しこれに早く気付けていれば良かった？
いや、その場合、また別の結末を迎えていたのかもしれない。

今はもう、後ろを振り返って、IFを考えるべきではない。
それは、自身の選択を否定することになるのだから。


私は師に拾われ、師に育てられ、師を捨てた。
私は妹と出会い、妹を育て、妹を手放した。
私は子と出会い、子を育て、子を送り出した。

私は家を築き、人を招き、ともに暮らした。
私は教鞭をとり、生徒と過ごし、生徒を見送った。

すべて、私自身がした選択。それを否定する気にはならない。
無論、否定されることを許しもしない。


行く先は、否定の世界『アンジニティ』だったか。
差し詰め、否定された者の世界なのだろうが……

少なくとも私は、戦争に勝った未来を否定されただけに過ぎない。
これまでの私の全てを否定されたから、辿りつくわけではないのだ。

本来そこにいた者たちとは、ワケが違う……なんて言ったら、失礼か。


──存外、なんとかなるのではないか、と思う。
ひどい世界であるという話を聞いたことはあるが、ひどいのは環境だけだ。
そこに降り立つ者たちは、そのほとんどがその本質を否定されている訳ではない。

やっていけるとも。それぞれが己の信念を折ってしまうことがない限り。




否定とは、一方的にされるだけでは成り立たないものである。
己の中でその否定を認めて、はじめて成り立つのである。


一生、認めてやるものか。
私は"戦争に負けた"だけだ。


戦争に負けた程度で、己そのものはまだ終わっていない。


まだ、生きていってみせる。

ENo.968 名も無い白花 とのやりとり