［基本］OK.　［戦闘］OK.　

守れなかった。



ぜんぶ、ぜんぶ中途半端だ。

侵略者を全員追い出すと意気込んでタクシーに乗ったはずなのに、最後まで非情になりきれなかった。
覚悟を決めて、早々に自衛隊のアサルトライフルでも持てば、もう少し戦えたはずなのに、最後まで小さな銃を威嚇みたいに振り回しただけ。

友達だった真柄から、はっきりと敵意を向けられたのに、捨て台詞を吐いてできるだけ出会わないように逃げ回るだけ。
あいつは最終的に、一番イバラシティの人を傷つけた。

親友だったホルスちゃんとは、絶対に協力し合えると思ったのに、お互いに深く傷つけあって喧嘩別れ。
ときどき、紗良と紅に白い目で見られている気がしていたのは、後ろめたさだけじゃないと思う。
のらりくらりと戦意をそぐための作戦に乗せられたと言われても、言い返せない。



どっちつかずの私は、帰る場所も、幼なじみの親友含むたくさんの友達も、イバラシティの外の家族も、かわいい服もきれいに保ってきた肌や髪も、ぜんぶ失くした。

『兄貴が自衛隊で国を守るなら、私は兄貴の帰る場所を守る』なんて、そんなことを言って送り出した私は、結局、なんにも、守らなかった。



あれから何日くらいだろう。

最初の数週間のことは思い出したくもない。
取り返しがつかないことも、何度もした。

協力できる人と会えて、幾人かの知り合い、特に弟と再会できた私はかなり運がいい方。
私の代わりに、一日のほとんどを眠り続けてくれる弟の異能のおかげで、私たちは小さなコミュニティに保護してもらえた。
弟が普通に寝起きできるようになっても、酷い目の隈はもうとれないかもしれないけど、しょうがない。
ちょっと九々くんと似てるしね。

アンジニティのいいところは、時間制限がないところ。
ここを出るための時間はいくらでもある。
もう少ししたら、他のコミュニティの手伝いがてら、ここを出るための手かがりを探しに行かせてもらおう。

ENo.27 虚仮神仏 とのやりとり


ENo.527 つむぎ とのやりとり