僅かの間なはずの説明の時間が、永遠にも感じられた。
おれは、イバラシティという街での『弟』の存在は全て偽りであったことを告げる。













内心、胸を撫で下ろす。
この点まで拒絶されるようであれば……
おれのしたことの意味が、全くなかったと思ってしまっただろうから。








最も恐れていた質問が、投げ掛けられる。
……すぐには口を開けなかった。








空が、穏やかで……それでいて冷静な視線を投げ掛けて来る。
覚悟を決めるしか、なかった。










やはり、おれの言葉だけでは届かないのか。
ならば……伝えるしかないのか。












空が一瞬、沈黙する。








どの道──この後すぐ、あやつは空に干渉してくるだろう。
ならば、別に今伝えても大差あるまい。








少しばかり、あの男のことを哀れに思ってしまう。








どう転ぶか分からないとはいえ……一安心だ。
これならば、空ももう少し話を聞いてくれる可能性はあるかもしれない。










……身体が浮遊感に包まれる。
空に『それを』認知されたからと、おれ自身覚悟を決めたからだろうか。
もう、この身体を保っていることはできそうにないみたいだ。




身体が透け、溶けていくように──桜の花弁が舞う。
おれもまた、あの大男──『櫻』に囚われたものの一人であることを、嫌でも思い出してしまった。
だが、不思議と気分は軽やかだ。

──仮に、この先おれがどこかで消え失せてしまったとしても。
空のことを託せそうな物好きが現れたからなのかもしれんな。


さようなら、ハザマ世界よ。
さようなら、イバラシティよ。

おれはどちらの世界も、十二分に堪能したぞ！！

▲	リンカ 「強くならなきゃ届かない目的…か。空も大変だね…。 「ここ」での記憶が残るかどーかはまだよく分かんないもんね。「ここ」での記憶が残ったり、「ここ」で手に入れた強さがそのまま残るなら…ワールドスワップできついトコに飛ばされても何とかしやすいかもね。 …あたし自身は勝てるなら記憶も力もいらなかったクチだけど…この状況じゃ、そーも言ってられないから」 少し落ち込んだ声。と、相手に刀を抜かれれば狼狽えだす。 「れ、練習戦はルール守ってやろ！？陣営戦で味方だったヒトに斬り殺されるとかシャレになんないし！ …まあ、みんな大事に至らなくてよかったけどさ。空とか、他にも攻撃重そーなヒトがけっこーいたんでその辺をどれだけ抑えられるかがあたしなりの全力の出し方だったんだけど、持ちこたえらんなかったなー…こっち的には、思ったよりは頑張れたんだけどね。」

	リンカ 「…まあ、空的に物足りなかったらゴメンなんだけど」 最後に、ちょっとだけ申し訳なさそうにそんな言葉を付け足した。

▲	イデオローグ 「……ああ。肩透かしにもほどがあったな……。 　覚悟はしてたが――手元に残ったのはお互いに草色の欠片だけ、か。 　どんなに優秀な材料だろうが、そいつを使う機会なんざ 　もう無いってのが悲しいトコだな……。 　記憶……記憶か。確かに、スワップ後に持ち帰れる保証は何処にもないもんな。 　せめて、シティの人々が何も知らないままにスワップが適用される…… 　なんてコトは起きたりしないと信じたいが」

	イデオローグ 「そうさな、おれの知る限りでもアンジニティの連中には色んなヤツがいたよ。 　根っからの悪党。そうする以外の道がなかった罪人。 　何かの間違いで堕とされたような、ツいてないヤツもいたっけな。 　おれがどれかは想像にお任せするとして―― 　ありがとうよ。 　それだけで十分過ぎるくらいだぜ」

	イデオローグ 「おまえさん個人の戦う理由と、その先に齎される結果ってのは 　あくまで別のもんだとおれは思ってる。 　復讐の為に技を磨いて追い続ける。そうして仇を殺したのなら、 　おまえさんは確かにただの復讐者でしかないだろうな。 　・・・・ 　それだけなら、確かに正しい側に立っているとは言い難い。 　だが、この侵略戦争に限ってはそれだけじゃあないのさ。 　おまえさんが磨いた技で戦い、退けた侵略者や守護者たち。 　そいつらはきっと、戦意のない他のシティの住人たちが出会っていたら 　少なくない犠牲を生んでいた筈だ。 　だが、ソラ。おまえさんが戦ったからこそ、そいつを未然に防げた。 　おまえさんの思惑がどうあれ、な」

	イデオローグ 「ただ……そうだな、悪かった。 　おまえさんが立っている場所は、光り輝く場所じゃあない。 　きっと、復讐の炎が燃え盛る道なんだ。 　おれはきっと、その火の揺らめきに一瞬照らされる暗闇を見たんだろう」

	イデオローグ 「おれがどうするか――か。 　ひと先ず、シティの皆の水先案内人でも務めようかと思ってる。 　アンジニティに自由に出入り出来るロストもいたし、 　通信じゃあ『他の世界も動く』って話もあった。 　元々の侵略者連中がスワップで抜け出す以上、これまでに比べれば危険も大きく減る。 　そんなワケで、脱出の目途が立つまではちょっとしたサバイバル生活だな。 　勿論、元侵略者であるおれを快く思わない連中もいるだろうが……そこはまあ、 　辛抱強くやっていくしかないだろうなあ。 　……そんなトコかね」

	イデオローグ 「おっと、どうやらそろそろ時間のようだぜ。 　ちょっとばかし名残惜しいが仕方ないな。 　 　またな、ソラ。――おまえさんにも、救いがあるコトを祈ってる」

▲	美琴 「......なるほど。羊羹が好き。いい趣味をしていますねぇ」 「私は......。みたらし団子が好物なんですよ。ふふふ......」

	美琴 「さて、陣営戦としては決着がついてしまいましたねぇ......」 「この先、世界がどうなるかはわかりませんが私が私である限り、 あなたの刀の切れ味はしっかり覚えておりますのでご安心を」 「私は......梅楽園とかで和菓子でも食べ歩きしていると思いますよ」

	美琴 「もし、合流できたらそうですねぇ......」 「空さんが覚えておりましたらその時、和菓子を食べながらあなたの殺したい鬼のこともお聞きしましょう」 「殺し方はそれからですねぇ。では、私はワールドスワップとやらが起きるその時まで......」

▲	ユイ 「今回はお疲れ様でしたっ！ ……向こうで会えても、お互い覚えているのかな？」

	ユイ 「仮にここでの記憶が引き継がれなかったとしても、またどこかでご縁があるかもしれませんね。」

▲	咲 「フッ、どうやらアタシ……トップって器じゃあなかったようね！！ 　いやー負けた負けた惨敗したわアハハハハ！ 　負けたのにイバラソロ３位なの普通に笑っちゃったけどネ☆」

	咲 「むしろなんでアタシ暫定トップだったのかしらね？ 　いやー少女ともどったんばったん大騒ぎしただけだったし、 　何の成果も得られなかったわ！」

	咲 「しかしアンタびっくりするほど力に拘るわね、わからなくもないけど…… 　ん？　……んー、願い……アタシの願いねー…… 　ごっめん何もないわ草しか生えないどうしましょ！」

	咲 「……いやま、正しくは無くなったっつーの？ 　多分、この騒乱に巻き込まれる前なら答えられたとは思うのよ。 　あんまお披露目したくない系のさ、女々しい願いがまあ一つ二つって感じでさ」

	咲 「けどまあ、アタシってばハザマは勿論イバラシティでもサバイバル気味でさあ？ 　そんな生活してる内にそれどころじゃなくなったっつーのかしらね……」

	咲 「……よくよく考えたらさ、この騒乱始まってからボチボチ二年近く過ぎてるわけで？ 　ここでの三十六時間で得たモノと、アッチで過ごしてる内に得たモノがニアイコール。 　ま、アッチでは時間が解決してくれたって感じなワケ」

	咲 「確かに、ハザマでの時間はそりゃもー濃厚も濃厚だったけどさ、 　冷静になりゃどう足掻いたとこで結局１日ちょっとっつーの？ 　力も経験も、渇望する程デカくはないと思うわよ……いや惜しいけどね実際！！」

	咲 「あ、でもそーよね。こー、なんつーの…… 　結んだ縁とか、その類は素直に惜しいかもしれないわ 　違う環境でもっかい最初から仲良くなるとか普通にエグイとこあるし……」

	咲 「よし、掌クルックル！　アタシもアンタに相乗りするわ。 　ぶっちゃけ記憶持ち出せずにアンジニティ送りされたらハチャメチャに面倒だし？ 　記憶も力も必須よね！　アタシも持ち帰りたいってのをマジの願いにしてやるわ」

	咲 「んでま、ココでの記憶とパゥワーがっつり活用してさ…… 　アンジニティでもテキトーに暴れてやろうじゃない？」

	咲 「つーかま、残るんじゃない記憶も力もなんもかんも？ 　ここでのアレコレ無しでアンジニティ行きとか……アタシら割と詰みだわさ」

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