［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

「だから僕はこう言ってやったんですよ。八十九基で守りは万全、って」
「そうね。よし、じゃあクリスタル消費量を見て頂戴」
「でもなんで僕ら浜辺でボドゲムしてるんですか？」
「知らないわよ。泳いでないからでしょ。あと何、その略し方」

　目の前に広がる夏の海と楽しそうな家族やカップルたちを尻目に、彼と彼の上司──茅芽笹子は優雅にボードゲームを広げていた。パラソルの陰とはいえ、猛暑日の海辺はインドア趣味には気温が高い。
　イバラシティでも有名なビーチまでは、車で一時間半かかった。到着した頃には日も高くなっており、海で泳ぐには最高の時間帯である。はしゃぎまわる子供、それを追いかける親、カップル、カップル未満……ごった返した浜辺にあっては、彼らの姿は異質極まりなかった。海の家の売り上げに貢献しない者を、海は歓迎しない。

「改めて言っておくけれど、これは決して休暇ではないのよ」
「心得ておりますとも。このスマートウオッチ。携帯から離れた時に連絡が来ても分かります」
「本社からの連絡は私によね」
「あれ？」

　これは決して休暇ではない。本部の指示に従った無期限待機業務であり、最低限の支所機能を有し──との建前で、実際は理不尽な本部へのささやかな抗議だった。偶然にも茅芽研究室は待機場所に海を選び、偶然にも夏を堪能しているだけで。
　当然、水着姿である。よく分からない柄のサーフパンツに日除けの白衣を雑に羽織った彼とは対照的に、上司の水着はフレアがどうとか、スカートがどうとか、シックな色合いでトレンドをおさえた（と思うが詳しくない）露出の控えめなものに、白のパーカーのラッシュガードだかを合わせている。日焼け対策の大きな麦わら帽子も見逃せない。水着姿は一度拝んだことがあるが、銭湯と夏の海での水着では、価値も意味も全く違ってくる。
　そんな思いを噛みしめていると、ふう、と上司がため息をついた。涼を取ろうと、扇子をパタパタさせている。

「しかし暑いわね。分かってたこととはいえ、照り返しも人の熱気も」
「焼けた砂とで両面焼きです。あ、水分ありますよ」
「ありがと……どうするの、これから。浜辺に居ても暑いだけよ」
「海に入れば幾分マシかもしれませんね」
「じゃあ泳ぐ？」

　邪魔になった粉砕バット（スイカ割り用）を炎天下に押しのけて、パラソルの下に陣取り直す。上司の提案は魅力的だったが、受け入れるわけにはいかない。

「実は泳げないと言ったらどうしますか？」
「なんで海に来たの？」
「男には海でしか得られないものがあるんです」
「そんな危険を冒してまでどうして」
「プールじゃほら、安全じゃないですか。大丈夫。僕としては笹子さんに両手を押さえてもらってバタ足の練習をしてもいいんですけど、笹子さんは大丈夫ですか？」
「良くはないけど大丈夫よ……折角海に来たんだし、海に入るのは悪くないわね。何にせよ暑いし」

　不承不承な口ぶりとは裏腹に、上司はどこか嬉しそうな素振りで立ち上がって砂を払う。
　小一時間ほど座り通しだったため、改めて拝んだ立ち姿は新鮮だった。見慣れぬ水着姿を前に、先刻飲み込んだ言葉が蘇る──直感は囁かない。今は違わないということだ。

「えーとですね。言い忘れてたことがもう一つありまして」
「また？　今度は一体──」
「その水着、似合ってますね。素敵だと思います」
「──ありがとう。素直に喜んでおくわ」
「素直に喜んでください」
「じゃあ、私も一つ聞き忘れてたことがあるんだけれど」
「聞かせてください」
「なんで貴方はそんな恰好なの？」
「白衣は仕事着ですからね。ほら、今って仕事中ですし」
「今すぐ脱いでね。泳ぐには邪魔だし、人の目が恥ずかしいから」

　渾身の踏み込みは、身から出た錆にいなされた。


────


　場面は変わり、海の中。この歳になって支えて貰いながらバタ足の練習をすることになるとは夢にも思わなかったが、これはこれで夢心地でもあった──人の目さえ気にしなければ。
　実際のところ、息継ぎが出来ないわけでもなく、泳ぎが苦手なわけでもないのだが。しばらく練習していると、上司も気づいたようだった。

「存外に上手いじゃない。なんで泳げないのかしら」
「目を開けられないんですよ。眼鏡無いと全然見えなくて海に入るのも大変ですし」
「確かにずっと手を引いて歩くのはちょっと恥ずかしかったわね」
「帰りもなんとか……そもそも水中って眼鏡着けられないのが駄目じゃないですか？」
「もっと前倒しで気づけなかった？」

　外気温より常に低く設定されている海中は快適でもあったが、強まりゆく日差しを直に浴びるのが欠点でもあった。日頃運動不足に悩んでいる彼らにとって、水中での全身運動は消耗も激しく、三十分もしないうちに疲れ果ててしまう。
　とりあえず海の家で休息することとし、先刻と同じように上司に手を引いてもらって浜辺に戻る。ロッカーから財布やらを回収しつつ、近場の建屋に転がり込んだ。

「かき氷って美味しいですね」
「急よね。私のカレーはまだ出てきてもいないのに」
「水も糖分も補給できるし冷たいし、焼きそばにも合いますし」
「合うかしら……」

　海の家は快適である。そして、人間は快適な場所を好む。
　すっかり海の家で時間を潰してしまった結果、日も傾き、ぼちぼち人影もまばらになってきた。パラソルに戻れなかったのは、快不快の問題の他に、体力的な問題があった。一度腰を下ろしてしまうと、中々立ち上がれない。
　とまれ、そのままにするわけにもいかず、気合を入れてシートとパラソルを片付ける。シャワーでざっくり砂と汗を流し、帰り支度をする頃には、新たな問題が浮上していた。

「大丈夫？　その、顔色が良すぎるというか、調子は悪そうに見えるけれど」
「日焼けで顔色はアレですが、すいません。ちょっと今日疲れて、車で長時間は……」
「疲れてるなら無理は禁物よ。でも……どうしましょ、これから」
「海の近くには宿泊施設が多い。というわけで、一応旅館は押さえておきました」
「……妙に手回しが良いわね」
「繁忙期ですからね。大の大人の男女が二人、夫婦ではないですと伝えていますし、大丈夫ですよ」


────


「……って、さっき貴方言ってたわよね」
「いや旅館だと思って」
「現実を見て。これは民宿よ」
「だってほら、『ビジネス旅館マシンガン』って。韻も踏んで」
「よくこの名前で選んだわね」
「旅のお宿ヒトゲノムと迷ったんですが、こっちかなと」

　車を降りた彼らが見たものは、風情と歴史を感じる宿泊施設だった。上司の言う通り民宿に近く、旅館と呼ぶには小さな、定年を迎えた老夫婦が旅行に使う雰囲気の。満身創痍で予約を入れた手前、細かく確認する余裕がなかったのである。
　『歓迎　いいひとイバラシティ支所御一行様』の看板と共に出迎えてくれたのは、女将か大女将か、年季の入った人当たりの良さを持つ女性だった。そのまま案内された客室は、階段を上がった畳敷きの六畳二間。新しくはないが小綺麗な部屋で、居心地は悪くない。窓の外には中庭があり、少し奥には夕日の沈む海を望む。グッドロケーションだ。

「くう～……やっぱり温泉って良いわねぇ」

　女湯から、上司の年寄りくさい愉悦の声が聞こえてくる。男女の露天風呂が仕切り板を挟んで隣り合わせという、フィクション世界でしか見たことのない構造で、イバラシティにはこういう旅館も存在する。

「露天風呂で会話って、結構な実績解除ですね」
「ここ、お風呂は原泉かけ流しらしいわよ。おまけに貸し切り状態。穴場も穴場ね」
「まさか改装工事中で客間が一つしか空いてないとは思いませんでしたが……」
「そうよねえ。どうしようかしら……」
「クソッ！　僕が……僕が旅館のファクトチェックを怠ったばっかりに……！」
「芝居がかった言動って真心を感じないのよね」
「いやまあ、本当に想定外だったんですよ」
「そうよねえ。悪知恵とか苦手そうだものね……先のことは後から考えましょ。私、晩御飯も楽しみなのよ」
「風情ある旅館には風情ある食事がつきものですからね……僕はもう上がっちゃいますよ、と」

　風呂から上がるタイミングが重なるのは流石に気恥ずかしかったので、一足先に夕食会場へ向かう。ひとっ風呂浴びて汗と疲れが流れたせいか、猛烈に腹が減っていた。
　温泉から客室への廊下の途中にある小さな宴会場には、既に支度が出来ていた。浴衣に着替えた上司も加わり、宴会を始める。近くに漁港でもあるのだろう。海鮮づくしの夕食は華やかで、活きの良さに甘えることのない、確かな技術が見て取れる。二人揃って下戸なのが惜しいくらい、酒も進みそうな料理の数々に舌鼓を打つ。

「旅館の名前ですけど、あれは夏を歌った名曲から拝借しているらしいですよ」
「へえ……あ、このお刺身美味しいわね」
「冬のお客さんには冬を歌った名曲だって説明してるってさっき女将さんから聞きました」
「へえ……あら、この煮つけも。こういうのって食べる機会がないのよね。一人暮らしなんかしてると」
「僕も好きですが、頻度は少ないですね。そもそも一人だとゆったり飯を食わないし」
「一人暮らしの自由さって、味気なさと隣り合わせよね……」
「あ、花火。そういえば花火どうします？　積んでありますけど」
「打ち上げとロケット以外なら……旅館の許可が下りれば、かしら」
「下りませんでした」
「そりゃあね」
「僕が脚本ならここで花火を挟むんですが……そのうちどっかでやりますか」
「事務所の屋上なら、貸してくれそうなものだけれど」
「大家さんのお孫さんも大喜び」
「え、人も呼ぶの？」

　腹を満たし、よきところで部屋に戻る。
　それは現実に戻ることでもあった。部屋は一つ。正確には二部屋だが、旅行気分で浴衣姿の男女が同じ部屋で一夜を過ごすことに変わりはない。緊急避難的に上司の部屋に泊めてもらったことはあれど、旅先の旅館では状況が違う。更には──

「で、これはどう解釈して良いものかしら。貴方ならどう考える？」
「これは……布団ですね。二つある。重要なのは数ではなく、六畳二部屋の客室に、何故かピタリとくっついて敷いてある点──」
「そう、ね。幻覚ではないことが分かって安心したわ」
「……気を利かせてくれたとかですかね」
「……有難迷惑よ。敷きなおして貰いましょう」

　流石にということで合意し、フロントに連絡する。すみません、そういうのではないので、別の部屋にしていただければ……
　そして。

「確かに部屋は別だけれども」
「襖一枚挟んだだけですね。六畳二部屋ですし」
「こーゆー奥ゆかしさは要らないのよ」
「でも改装中で客間はここだけなんですって」
「……仕方ない、わね。誰にも悪気も悪意もない事故だものね……」
「すみません。僕もこんなアレでは」
「いいのよ。でも、貴方は廊下側だからね」
「何故ですか」
「トイレは廊下側よね」
「……なるほど。そうですね。あられもない姿を見てしまうのは本意ではないです」
「言わなくていいのよ。言わなくて」

　彼は疲れていた。風呂と食事で得た分も尽き、微睡みが押し寄せる。同じく上司も早々に布団に入った。
　虫の鳴き声と空調の音。

「大分前の話ですけど、一人じゃないって言ってくれたの、覚えてますか？」

　上司は寝入っただろうか。かすかな吐息が聞こえだした頃、彼は独りごちる。返事を期待せずに。

「知り合いも居ない、乗り換えもある、人も多い……それでもやって来れたのは、笹子さんが居てくれたからです」

　ネモフィラの丘で。今この時は一人じゃない。そう言って上司は微笑んだ。

「ありがとうございます。この街で、僕を一人にしないでくれて」
「……」
「だから怖いんです。支所が無くなれば、僕は……」
「……」

　返事はない。やはり寝ているのだろう。再び訪れた静けさに、押し殺していた睡魔がどろりと流れ込んでくる。

「大丈夫よ」

　途中、声が聞こえた気がした。
　それが夢か現か分からぬまま、彼の意識は沈んでいった。

ENo.564 PSY.B.峰子 とのやりとり


ENo.831 Dr.笹子 とのやりとり

Dr.笹子(831) に ItemNo.31 銀の光焔 を手渡ししました。

ItemNo.29 バラのくんせいにく を使用しました！
　魔香のため、体調は回復しなかった。
　今回の全戦闘において 強撃10 が発揮されます。
　今回の結果でのスキル熟練度が伸びやすくなった！

　

神メロンが倒れると

小さな光の玉がふわっと出て、空へと飛び去っていった。

変化LV を 5 DOWN。（LV5⇒0、+5CP、-5FP）

幻術LV を 10 UP！（LV0⇒10、-10CP）
付加LV を 5 UP！（LV89⇒94、-5CP）

『開く蕾』リリィ(494) の持つ ItemNo.16 桜の光焔 に ItemNo.31 書類 を合成し、滑々な煙玉 に変化させました！
　⇒ Which,Yes or No?！［ 2 6 2 = 10 ］不発！
ItemNo.5 硬質ワイヤー"FLAME Ⅲ"４ に ItemNo.24 天青石 を合成し、硬質ワイヤー"FLAME Ⅲ"４ を強化しました！（+50）
　⇒ Which,Yes or No?！［ 5 4 4 = 13 ］不発！
　⇒ 硬質ワイヤー"FLAME Ⅲ"４／暗器：強さ718／［効果1］強撃53 ［効果2］攻撃40 ［効果3］－【射程3】


オニキス(301) により ItemNo.27 海藻 から魔香『尿酸値に効果のないわかめ』をつくってもらいました！
　⇒ 美酒佳肴！［ 2 6 3 = 11 ］成功！料理の付加効果のLVが増加！
　⇒ 尿酸値に効果のないわかめ／魔香：強さ163／［効果1］－ ［効果2］－ ［効果3］攻撃47

雪奈(97) とカードを交換しました！

夜霧地下科学研究所 （ユグドラシル）


エラト を研究しました！（深度0⇒1）
クラウソラス を研究しました！（深度0⇒1）
ハイパージョーク を研究しました！（深度0⇒1）

ライトニング を習得！
サンダーショット を習得！
フラッシュ を習得！
アトラクト を習得！
ホーリーポーション を習得！
レイ を習得！
ディム を習得！
ムーンサルトプレス を習得！
グリッチトラップ を習得！
精神変調特性 を習得！
ホーリーウォーター を習得！
ライトジャベリン を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

偽黒初(77) は アンデシン を入手！
Dr.笹子(831) は 殺生石 を入手！
麺屋の龍人(1595) は 殺生石 を入手！
偽黒初(77) は すごい毒牙 を入手！
麺屋の龍人(1595) は 水の光焔 を入手！
Dr.笹子(831) は 蒼の光焔 を入手！
Dr.笹子(831) は 神舐瓜 を入手！

マシカ区 L-4（沼地）に移動！（体調20⇒19）
マシカ区 M-4（沼地）に移動！（体調19⇒18）
チナミ区 D-2（ベースキャンプ）に戻りました！
チナミ区 D-2（ベースキャンプ）に戻りました！
チナミ区 D-2（ベースキャンプ）に戻りました！
体調が全回復しました！

『ツクナミ区 K-2：チェックポイント《小集落》』へ採集に向かうことにしました！
　　 - 偽黒初(77) の選択は ツクナミ区 K-2：チェックポイント《小集落》

MISSION!!
ウラド区 N-4：沼 を選択！
　　 - 偽黒初(77) の選択は ウラド区 N-4：沼

［803 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［437 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［472 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［202 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［398 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［330 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［271 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［197 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［118 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［142 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［154 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［309 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［48 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［226 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［102 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［110 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［110 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［58 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［88 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢
［100 / 100］ ―― 《屋台》更なる加護
［75 / 100］ ―― 《苺畑》不安定性
［15 / 100］ ―― 《荒波》強き壁
［100 / 100］ ―― 《小集落》猛襲
［41 / 100］ ―― 《落書き壁》リアクト
［90 / 100］ ―― 《変な像》揺らぎ
［100 / 100］ ―― 《白い渦》不幸
［100 / 100］ ―― 《黒い渦》不運
［18 / 100］ ―― 《線路》駆逐



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

どこかの森のなか。

　





　

大きな木に寄り掛かり座る３人。

　













　

　







　

明るい声で話すふたり。




ふたりの手などを一瞥し、上を向き静かに息を吐く白南海。

　

　

　










　








そう言って立ち上がり、その場を去る白南海。

　












　

　

　

チャットが閉じられる――

森の中の小さな沼。

沼の周囲の木々は不自然に枯れている。

　

その沼に誰かが立っている。

　






　

表情もなく、一点をまっすぐ見つめている。

　

　

少女が視線をこちらに向ける。

　




無表情のまま、笑い声のようなものを発する。

ゆっくりとこちらへと歩みを進める。

　

沼の泥水がビチャビチャと激しく跳ねる。

　

　

　

･･･身体中が危険を知らせてくる。