［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

「……考えたんですけど」
「特にやることもないし、聞かせて貰いましょうか」

　いつにもまして気だるげな様子の上司だが、珍しいことに、今回は本当に無気力そうな表情をしていた。言葉こそ投げやりでも、言葉に向き合う姿勢そのものは崩さない上司がこうなっている理由は、何となく察しがついていた。
　特にやることが無いのである。彼女の言葉通り、手持無沙汰ここに極まれりといったところか。ただただ時間を潰す際、沈黙は何よりのパートナーであり宿敵だった。黙って秒針の音を聞き続けるよりは、どんなに益体のないものだろうと、誰かと会話をする方が良い。大方そんな気分だったのだろう。

「急な本社からの指示のせいで僕らが所属している『いいひと』イバラ支所は開店休業になるってことですよね？」
「あくまで待機よ。次の指示があるまで待機」
「僕ら二人、何か指示があれば即座に行動できるよう、指示を待てればよいんですよね？」
「あくまで待機命令だから、待機さえしていれば大丈夫ね」
「それであれば大手を振るって出かけてもいいわけですよね？　その、僕と笹子さんが二人揃ってさえいれば」
「……それ、さっき言わなかったかしら」
「一応確認をと思いまして。どうせやることもないし、特に意味のない会話をしても何のデメリットもないじゃないですか」
「私の精神的なリソースについての見解を聞かせていただきたいものね」
「社会通念上許容されるべきジョークと言うことにしていただけませんか？」
「こう見えて私、結構参ってるのよ。本社から先の見えない無期限待機って言われて……」

　気だるげな理由はそこにもあった。
　『いいひと』イバラ支所は『いいひと』本部の傘下であり、当然ながら基本的な業務の指示は本社から割り当てられてくる。一つの業務が終われば次、そして次、と、本来ならば業務が終われば次の指令が下るわけだが、今回送られてきた指示は待機の二文字だけだった。泳ぎ続けなければ生命活動を維持できないマグロのようとまではいかずとも、これまでのリズムが崩されてしまえば、それなりのダメージを受ける。ましてや次の指示については全くの不透明であり、支所の長の抱える重圧は平の職員の比ではない。雇用者としての責任もあるし、もし仮に支所が解散ともなれば、雇用統計の悪化が経済に与えるダメージは計り知れない。

「まあ、大丈夫ですよ。悩んでても仕方ないですし、いざとなったら僕が何とかします」
「……どうやって？」
「会社なんか辞めても食っていけますよ」
「家業でも継ぐのかしら？」
「手始めに失業保険を貰って、家賃の安い田舎で小料理屋でも……いやそういう話ではなくて、もっと具体性のないエールを送りたかったんですけども」
「そう、そうね。考えても仕方のないことを考えていても、何も良いことはないものね……」
「その通りです。だから僕はこの無尽蔵な暇について、もっと有意義な情報……そう、プランを練ってきたんです」

　鞄から旅行計画書を取り出す。自宅で作成したもので、自宅にプリンターはなく、大学ノートに手書きで十枚の大作である。彼は社会人であり、私用で社用のプリンターやら用紙やらを使ことはなく、公私混同はしない男だった。

「言い方を変えると、プランを立ててきたんです。練ったり立てたりプランって一体どういう形してるんですかね」
「生クリームだって練ったり立てたりするでしょ」
「おお……」
「いいのよ。そういうのは」

　手書きメモを一枚めくる。一番上は表紙だった。

「では本題に入りましょう。海に行くことまでは決まったわけですよ。それで、次に決めなければならないことというものが自ずと決まってくるわけですが」
「自ずってとこが怖いのよね」
「僕が一人で勝手に考えるわけないじゃないですか。ちゃんとアンケート結果を参考にしてますよ」
「……どんな？」
「イバラシティの男女百人に聞きました。大の大人の男女が海でやることといえば？　ですが」
「……なんで？」
「僕が一人で勝手に考えてしまうと、『やっぱ夏の日差しの海ってあんまり行きたくねえな……』になっちゃうからですよ」
「……まあいいわ。続けて」

　ひどく疲れた表情をしたようにも見えたが、気のせいだろう。ここ数日は待機が続いており、疲れるような仕事は無い。精神的な疲れには、特にアウトドアでのリフレッシュが推奨されている。

「第一位！　投げ込み釣りでクロダイを狙う。今回の選択肢は四つでしたが、これは全体の五割近い得票数を誇ります。投げ込み釣りというのは重めの重りをつけて底の方の魚を狙う釣りのことで、チヌ、これはクロダイのことですが、奴らは底を狙った方がひっかけやすいらしいというところまでは調べました」
「待って」
「チヌの乗っ込みは春先にかけて、その時期は入れ食いも狙えるそうですが、夏の時期のチヌは夜が釣りやすいらしく、マズメを狙うのが手堅いようです。マズメというのは魚の食事時のことでして、これを狙うには夕暮れ時または夜明け前に海に向かう必要がありますね。夏と言っても涼しい時間帯なので、炎天下と向き合う必要はありませんが、万一に備えてちゃんと備えはしていくべきでしょう。ただロッドもリールも糸も針も何も持ってないものですから、準備が必要……」
「待ってってば。貴方そんなに釣り好きだった？」
「いいええ。僕は生きてる魚ってちょっと怖いなと思うくらいには苦手ですよ。でもアンケートの結果一位だったので」
「そんなところで純真な面を見せなくてもいいのよ。お願いだから。下調べまでして申し訳ないけれど」
「そうですか。じゃあ今度から純真な面は笹子さんだけに見せますね。では二位ですが……第二位！」
「溜めなくていいのよ」
「イバラシティ在住百人に聞きました。夏のイバラシティの海でいい年の大人が男女二人でやることといえば？　第二位！　花火！　得票率は二割ほどです」
「花火」
「ええ。夏の定番ですね。持ち込み花火か見物花火かは意見の分かれるところですが、笹子さんはどちらがお好みですか？」
「大きな花火は嫌いではないわね。線香花火なんかも嫌いではないけれど……」
「分かりました。全部やりましょう。見物した後で手持ちの花火セット買えばクリアできます」
「大の大人が二人で夜中に花火やってる姿ってどうかしら」
「じゃあ昼やりますか？」
「それもどうかしら……」

　あまり乗り気ではないらしい。所詮は得票率二割の選択肢である。世間的な関心の低さから来る訴求力の低さは仕方のないことだ。ひとまず諦め、またもや企画書のページをめくる。

「第三位！　炎天下で海水浴！　十五パーセントを獲得しています」
「こういうのって普通発表順序逆じゃないかしら。今更だけれども」
「炎天下でとわざわざ注釈をつけたのにこの選択肢を選ぶ人間が百人の村に十五人も居るということですよ。この村は後で滅ぼしましょう。ユーヴィー対策のため、日焼け止めとパラソルは必須。そもそもプールもロクに楽しめないような我々が突然海で泳いで楽しいのかという問題も内包しています」
「日焼けが楽しいって感じでもなくなってきたのは確かね。元々あまり好きではないし」
「僕も肌は弱めなのであまり日焼けしたくないですね。塩水も多分駄目です」
「じゃあ駄目じゃないこれ」
「でも、アンケート結果ですから。そこは曲げてはいけません。真実を捻じ曲げることになってしまいます。どうですか？　僕の純真な面」
「次行って、次」

　どうやらこの案もお気に召さなかったようで、上司は追い払うような手つきで話題の転換を要求してくる。次の案で最後だが、果たして気に入ってもらえるだろうか──

「第四位！　スイカ割り！　十一パーセント！」
「単体でやるイベントではないわよね。付属っていうか、何かの折に行われるっていうか……それこそ海水浴とかのお供に」
「一応粉砕バットは持っていくつもりですし、荷物が増えることはないです。スイカ一玉を二人で食うのは辛いですが……」
「二人でやって面白いかというのも問題よね。何でバットは決定事項なの？」
「有事の際にはバットが一番ですから。固いし強いし」
「無いのよ、あんまり。有事って世間一般的には」
「でも夏の海は危険ですよ。クラゲとかいますし」
「バットで殴るの？」

　はあ、と大きなため息をして見せる。彼女は強引な手合いは嫌いだと言っていた。海への提案を続ける彼にしても、強引であることは十分理解している。

「なんでそこまでこだわるの？　塩水も日差しも苦手で、わざわざ海に行く必要なんて無いでしょう？」
「最後のチャンスかもじゃないですか。無期限待機と言ったって、明日には異動命令が出るかもしれない──いや、直感は出ないって言ってますけど」

　この日常が続けば良いと思っている。仕事があって、退屈があって、時折上司と毒にも薬にもならないやり取りを繰り広げる。たまにどこかに出かけては、ささやかな思い出を手に入れる。
　偶然か必然か、手に入れた日常はすっかり手放せないものとなっていた。進むべきか進まざるべきか、永遠に悩み続ける猶予があると錯覚していた。
　期限の切られない待機命令は、日常が終わる可能性を告げていた。運命が変えられないように、本社の辞令には抗えない。有無を言わさぬ無期限待機という、まともではない指令が下ったのだから、まともではないことを考えていることは明白だった。従うにせよ逆らうにせよ、今の日常の延長線上に、同じ未来は存在しない。

「この夏が、イバラシティで過ごせる最後の夏かもしれない」

　直感は囁かないが、この選択に直感は必要ない。
　大事なところをごまかさないで、今だ、と勝負をかける時だ。

「多分もう、こんな機会は無いんです。だから……」
「貴方、嘘つきな癖に嘘がつけない性格よね。嘘をついている目には見えないし、ふざけているようでもない」
「まあ、嘘を憎む真実人間ですから」
「……分かったわ。どの道、海に行くことは決めていたもの。でもちょっと考えさせて頂戴。貴方に任せるだけじゃなく、何がしたいのか、私も自分で考えてみるから」
「じゃあ……！」
「ええ。『急な本社からの指示のせいで私達らが所属している『いいひと』イバラ支所は開店休業になる』のだから、いつまでも落ち込んでるのは損ってものよね」

ENo.474 イデオローグ とのやりとり

ItemNo.29 バラのくんせいにく を使用しました！
　魔香のため、体調は回復しなかった。
　今回の全戦闘において 強撃10 が発揮されます。
　今回の結果でのスキル熟練度が伸びやすくなった！

フィーコちゃん(132) から 500 PS 受け取りました。

フィーコちゃん(132) に ItemNo.8 ビー玉 を送付しました。

フィーコちゃん(132) から 強い牙 を受け取りました。

フィーコちゃん(132) から ホイール を受け取りました。

『開く蕾』リリィ(494) から 海藻 を受け取りました。

命術LV を 3 DOWN。（LV3⇒0、+3CP、-3FP）
領域LV を 5 DOWN。（LV5⇒0、+5CP、-5FP）

武術LV を 3 UP！（LV40⇒43、-3CP）
百薬LV を 10 UP！（LV10⇒20、-10CP）
付加LV を 5 UP！（LV84⇒89、-5CP）

Dr.笹子(831) の持つ ItemNo.6 強い牙 に ItemNo.15 立派な象牙 を合成し、滑々な変な本 に変化させました！
　⇒ Which,Yes or No?！［ 3 4 5 = 12 ］不発！
麺屋の龍人(1595) の持つ ItemNo.17 金の光焔 に ItemNo.20 立派な羽 を合成し、滑々な変な本 に変化させました！
　⇒ Which,Yes or No?！［ 2 4 3 = 9 ］不発！
巳羽(473) の持つ ItemNo.4 すごい羽 に ItemNo.6 立派な象牙 を合成し、滑々な煙玉 に変化させました！
　⇒ Which,Yes or No?！［ 4 6 4 = 14 ］不発！

さき(911) により ItemNo.25 活力漲る千輪菊 から装飾『リキッドの切れたVAPE』を作製してもらいました！
　⇒ リキッドの切れたVAPE／装飾：強さ698／［効果1］熾火50 ［効果2］－ ［効果3］活力33

麺屋の龍人(1595) により ItemNo.25 リキッドの切れたVAPE に ItemNo.32 立派な皮 を付加してもらいました！
　⇒ 博打付加！［ 2 5 1 = 8 ］通常付加
　⇒ 特質強化！効果3のLVが11増加！
　⇒ リキッドの切れたVAPE／装飾：強さ698／［効果1］熾火50 ［効果2］護持50 ［効果3］活力44

クロス(10) とカードを交換しました！

切り札 （ユグドラシル）


絶対領域 を研究しました！（深度0⇒1）
パルティシオン を研究しました！（深度0⇒1）
トランプダウン を研究しました！（深度0⇒1）

薬師 を習得！
医食同源 を習得！
ローレジスタンス を習得！
パーガティブ を習得！
リザレクション を習得！
インフェクシャスキュア を習得！
ドラスティックレメディ を習得！
ディビジョン を習得！
アディクティブチューン を習得！
猛毒耐性 を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

偽黒初(77) は アンデシン を入手！
Dr.笹子(831) は オパール を入手！
麺屋の龍人(1595) は タンザナイト を入手！
偽黒初(77) は 銀の光焔 を入手！
Dr.笹子(831) は 金の光焔 を入手！
偽黒初(77) は すごい羽 を入手！

マシカ区 M-2（山岳）に移動！（体調25⇒24）
マシカ区 L-2（沼地）に移動！（体調24⇒23）
マシカ区 L-3（沼地）に移動！（体調23⇒22）
マシカ区 L-4（沼地）に移動！（体調22⇒21）
マシカ区 K-4（山岳）に移動！（体調21⇒20）

MISSION!!
マシカ区 K-4：マシカ駅 が発生！
　　 - 偽黒初(77) が経由した マシカ区 K-4：マシカ駅
　　 - Dr.笹子(831) が経由した マシカ区 K-4：マシカ駅
　　 - 麺屋の龍人(1595) が経由した マシカ区 K-4：マシカ駅

［805 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［432 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［476 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［204 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［400 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［330 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［267 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［194 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［118 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［143 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［151 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［306 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［48 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［222 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［102 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［108 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［107 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［56 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［86 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢
［100 / 100］ ―― 《屋台》更なる加護
［75 / 100］ ―― 《苺畑》不安定性
［14 / 100］ ―― 《荒波》強き壁
［100 / 100］ ―― 《小集落》猛襲
［38 / 100］ ―― 《落書き壁》リアクト
［84 / 100］ ―― 《変な像》揺らぎ
［100 / 100］ ―― 《白い渦》不幸
［100 / 100］ ―― 《黒い渦》不運
［18 / 100］ ―― 《線路》駆逐



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

時計台が映る。

　

　

　

秒針が静かに進む。

　

　

　

マシカ駅。

広々とした駅前に、神々しい光――

　



　

ゆっくりと近づいてくる。