［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

「自分でも馬鹿げているとは思うのよ。でも、確認しておきたいのだけれど」

「ええ。どうしました？」

「……なんでこんなことをしているのかしら。私達」

　気づきとは、常に遅れてくるものだ。
　我に返った上司を前に、彼はただ苦笑するほかなかった。




「情報を整理しましょう。実は僕、先週映画を見てきたんですよ」
「聞いてない情報をありがとう。それで、どんな映画を？」

　上司も流石に手慣れたもので、流れる様に会話を流す。理由も聞いても話は広がらないと踏んだのだろう。きっかけを作るのは大体彼の仕事だったが、話を広げて有意義な時間を作るのは上司の役目だった。人が二人以上いれば、いつの間にかシステムが出来上がる。そのシステムを社会と呼ぶのだと、何かの本で読んだことがあった。

「サイエンスフィクションです。時間を戻して過去をやり直した後の未来に戻った自分は果たして歴史を変える前の自分と同一の存在かどうかという深い問いの」
「タイムパラドックスもの？」
「ああいえ、パラドックスは生じないんです。時間軸は一つだけ、とどのつまりは主人公が観測しているその瞬間の主観の時間こそが常に唯一正しい歴史という話で」

　作中に登場する時間軸は、世界が一つという前提だった。昨今隆盛の多元宇宙や並行世界を用いてパラドックスの解決を図るものではなく、常に書き換えられた後の世界だけが残るというもので、今時珍しいほど古典的な、悪く言えば時代遅れなアプローチだ。

「……熱量がちょっと怖いわね」
「人はみんな熱量がちょっと怖くなる話題の一つや二つあるもんですよ。ところで笹子さんは歴史を変えたいと思ったことってありますか？」

　機会があれば、そして彼女がそれを許せば、何時か尋ねてみたいと思っていた。
　彼は彼女の過去を知っているが、それを打ち明けてくれたのは、彼女の元で働いてしばらく経ってからのことだった。過去にどんな致命的な何があって、どうして今の自分があるのか。記憶を持たない彼にとって、それを語る彼女は羨ましくもあった──それを、変えられるとしたらどうか。

「無いわね」

　ほとんど間を置かず、即答に近い形で断言する。芯の強さが秘められた、力強い否定。

「それは何故かと聞いても？」
「簡単な話よ。人並に後悔もあるけれど、それも含めて今の自分でしょう？　なら、過去を変える必要なんてない……今の暮らしも、そこそこ気に入っているもの」

　後悔を乗り越え、過去を受け入れた者の言葉だ。
　過去を変えた未来が今と同じになるとは限らない。より良い現在を手に入れるために不満のない現在を手放すリスクを冒すのは、それこそ本末転倒である。

「なるほど。じゃあ僕も同じですね。ここに至れなくなる可能性があるんなら、過去なんか変えない方がいい」
「記憶喪失でしょ、貴方」
「忘れたままでも困りませんよ。僕も案外、今を気に入ってますしね……」




　梅雨明けの空には夏の日差しと夏の雲が広がっている。衣替えから一月が経ち、イバラシティはすっかり夏模様だ。蝉の声はまだ聞こえてはこないが、時間の問題だろう。どんなに願おうとも、時間の経過は止められない。
　そんな中で、執務室には上司と彼は二人きり。大人の男女が二人、職場で休憩時間することと言えば、答えは一つしかない。

「そういえば……さっき下で会ったんですけど。探偵事務所の探偵さんが来月は海だって言ってました。張り込みで」
「大家さんも言ってたわよ。夏の海でバカンスだからお土産は何が良いかって」
「……知ってます？　下の階のマッサージ屋も研修旅行で、海の有名な観光地へ三泊」
「一階の薬局の店員さんも、先週は海釣りに行ったそうよ」

　山札をめくるが、得られる札はない。手番を終えて上司に譲る。役はなく、一番近いタンですら揃う兆しは見られない。既に猪と鹿を揃えた上司に、圧倒的な有利を与えてしまった。

「歯医者さんの受付の人も先週は海釣りって言ってましたね」
「え、受付って女性？」
「ええ。なんかキス釣りの有名なところって」

　手札から出した札で蝶を回収し、上司はこいこいを宣言しなかった。点数リードは上司の側だ。下手に博打を打つ必要はない。博打には人間の本性が出ると言うが、手堅く堅実なそれは、まさに上司の印象そのものだった。

「店員さんもキス釣りって……これってまさか」
「ええ。多分。恐らくは……そういうことかもしれません」
「それは……厄介ね」

　図らずしも、他人のプライベートを垣間見てしまったことに、一抹の罪悪感を覚える──いや、別にどこの誰が何をしようが、誰が誰と海へ行こうが、自分が特に興味関心の無い人間であることを、彼は思い出した。とすれば、この罪悪感の出所は他にあるということか。例えば、夏を目前に何の予定もないことへの不安であるとか。一杯で場を切り上げたことによるものでないとすればだが。

「別に厄介なことはないですよ。僕らそこまで親しいわけでもないじゃないですか……ちょっと顔合わせれば挨拶するくらいで」
「それはそうだけれど、やっぱりこう……あるじゃないの。知ってしまったことの重みが」
「そうですか？　それより僕はなんかみんな海行ってるのに僕の予定に全然海が無いことのほうに不安を感じていますけど」
「行きたいの？　海」
「時と場合によります。海に行きたいと思ったこと自体が十年ぶりとかなので、感覚がつかめずにいます」

　海に行った記憶は古い。最後に海で泳いだのは、恐らく小学生の頃だろう。中学に上がると視力が落ちて眼鏡を着用するようになったため、海はもちろんプールも敬遠するようになったというのが正しい歴史認識である。
　暑くて磯臭くてクラゲが出たりして砂も痛くて日焼けして……と、記憶の中にある海は散々なものだが、それでも多くの海を楽しむ声を耳にすれば、考えも変わるというものだ。泳ぐだけが海ではない。
　無論、一人で行くつもりはない。海を堪能するのであれば、絶対に譲れない条件がある。

「そうね。私も……いや、日焼けもね。こう、年々大変になって来てるのよね。でも、ちょっと楽しそうよね、海」
「ええ。ちょっと楽しそうですけど、大変ですよね、海。眼鏡も手放せませんし、日焼けも」
「……」
「……」

　無言ではあるが、惰性で続く雑談よりも多くの意味を秘めた沈黙。自分が上司と同じことを考えているということを、彼は直感的に悟っていた。
　目の前には花札がある。古くから賭博に用いられてきた、言い訳にするにはこの上なく便利な運否天賦の博打ツール。何かの後押しが欲しい時に借りるのは、酒の力ばかりではない。

「私が勝ったら、海に行きましょう」
「僕が勝ったら、海に行きましょうか」

　窓から差し込む日差しがジリジリと音を立てたかと錯覚するほどの静寂を破ったのは、ほぼ同時だった。予測していたこととはいえ、タイミングまで被るのは想定外で、しばし困惑してしまう。それは上司も同じようだった。

「え、じゃあ貴方が勝ったら海、私が勝ったら……ええと」
「山？」
「山は嫌よ」
「奇遇ですね。僕も去年で懲りました」

　リュウジン丘陵へのハイキングは記憶に新しい。昨年の登山は辛いだけの記憶しか残さなかった。下山後、互いに本心では望んでいなかったことも判明したのだ。わざわざ嫌いな季節に、楽しくもない思い出を残したくはない。

「じゃあ……どうしましょうか。私が勝ったら」
「海はもう行きましょうよ。どっちが勝っても海。他に何か付け足しましょう」
「そういえば、去年の七夕の時に言ってたわよね。夏にやりたいことに付き合いますよって」

　門松に短冊を飾るというパワープレイで季節感を味わったのが昨年の七夕である。
　一年も前の話だ。別段何を言ったのか覚えていなかったが、上司が覚えていてくれたとあらば、真偽はどうあれ悪い気はしない。

「ええ、まあ。ええ？　言いましたっけ？　いや、多分言いましたね。覚えてないですけど」
「勝っても負けても海に行く。私が勝ったら──そうね。私が海を楽しめるように、全力でもてなすこと。これでどう？」
「なるほど。ではそのためにまずバット買っておきますね」
「え、スイカ割りなの？」
「ビーチに群がる悪い虫から笹子さんを守るためと考えていましたが……どうやら一石二鳥のようですね」
「……熱量がちょっと怖いわね」
「人はみんな熱量がちょっと怖くなる話題の一つや二つあるもんですよ。ところで僕が勝ったらどうしましょうか。僕は海行けるだけで楽しいので、笹子さんの歓待を必要としませんが」
「そうね……じゃあ、この試合が終わるまでに考えておいて頂戴」
「僕、今のところかなり不利ですけど」


　夏は嫌いだった。
　それでも、今年の夏は──いや、昨年も今年もない。イバラシティで過ごす夏のことは、嫌いにならずに済みそうだ。
　去年の夏に引き続き、エアコンが壊れるようなことが無ければ、の話だが。

ENo.564 PSY.B.峰子 とのやりとり


ENo.831 Dr.笹子 とのやりとり

ItemNo.29 バラのくんせいにく を使用しました！
　魔香のため、体調は回復しなかった。
　今回の全戦闘において 強撃10 が発揮されます。
　今回の結果でのスキル熟練度が伸びやすくなった！

守護者の姿が消え去った――

　

　

六角形の柱から天に向け、赤色の光柱が立つ。

どうやら次元タクシーで行けるようになったようだ。

Dr.笹子(831) に ItemNo.25 不思議な硬貨 を送付しました。

Dr.笹子(831) から すごい羽 を受け取りました。

領域LV を 35 DOWN。（LV40⇒5、+35CP、-35FP）

制約LV を 40 UP！（LV0⇒40、-40CP）
付加LV を 5 UP！（LV79⇒84、-5CP）

ItemNo.36 金の光焔 に ItemNo.37 書類+1 を合成し、滑々な煙玉 に変化させました！
　⇒ Which,Yes or No?！［ 3 1 3 = 7 ］不発！
　⇒ 滑々な煙玉／素材：強さ55／［武器］盲目50(LV90)［防具］煙霞50(LV95)［装飾］撒盲50(LV95)

Dr.笹子(831) の持つ ItemNo.3 衣替え白衣 に ItemNo.8 天青石 を合成し、衣替え白衣 を強化しました！（+50）
　⇒ Which,Yes or No?！［ 1 4 5 = 10 ］不発！

巳羽(473) により ItemNo.25 すごい羽 に ItemNo.38 すごい羽 を合成してもらい、活力漲る千輪菊 に変化させました！
　⇒ 超絶合成！［ 4 6 1 = 11 ］不発！
　⇒ 活力漲る千輪菊／素材：強さ55／［武器］魅域50(LV95)［防具］耐火50(LV90)［装飾］熾火50(LV95)

フタバ(515) により ItemNo.5 滑々な変な本 から射程3の暗器『硬質ワイヤー"FLAME Ⅲ"４』を作製してもらいました！
　⇒ 硬質ワイヤー"FLAME Ⅲ"４／暗器：強さ668／［効果1］強撃50 ［効果2］－ ［効果3］－【射程3】

麺屋の龍人(1595) により ItemNo.30 似合う白衣 に ItemNo.36 滑々な煙玉 を付加してもらいました！
　⇒ 博打付加！［ 2 1 6 = 9 ］通常付加
　⇒ 似合う白衣／聖衣：強さ290／［効果1］体力45 ［効果2］煙霞50 ［効果3］－

麺屋の龍人(1595) により ItemNo.5 硬質ワイヤー"FLAME Ⅲ"４ に ItemNo.39 ものすごい木材 を付加してもらいました！
　⇒ 博打付加！［ 6 3 1 = 10 ］通常付加
　⇒ 硬質ワイヤー"FLAME Ⅲ"４／暗器：強さ668／［効果1］強撃50 ［効果2］攻撃40 ［効果3］－【射程3】

かぎ(170) とカードを交換しました！

識札 （ウェルフェア）


ダインスレイフ を研究しました！（深度1⇒2）
クリエイト：ブラッド を研究しました！（深度1⇒2）
ユートゥルナ を研究しました！（深度0⇒1）
歌舞優楽 を研究しました！（深度0⇒1）
メガトンパンチ を研究しました！（深度0⇒1）
スクライカー を研究しました！（深度0⇒1）

パラライズ を習得！
カプリシャスナイト を習得！
キャプチャートラップ を習得！
インスタントポーション を習得！
ジャックポット を習得！
死線 を習得！
魅了耐性 を習得！
インペイル を習得！
トラップステップ を習得！
猛毒陣 を習得！
リコイルトラップ を習得！
イグナイトトラップ を習得！
フォークス を習得！
ベスチャルファング を習得！
スクリーム を習得！
アサシネイト を習得！
ワロップ を習得！
ダインスレイフ を習得！
ハイパージョーク を習得！
ダンタリオン を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

麺屋の龍人(1595) は 赤色の果実 を入手！
偽黒初(77) は 永久雪 を入手！
Dr.笹子(831) は 永久雪 を入手！
Dr.笹子(831) は 立派な象牙 を入手！
麺屋の龍人(1595) は 立派な象牙 を入手！
麺屋の龍人(1595) は 立派な象牙 を入手！

次元タクシーに乗り マシカ区 Q-2：チェックポイント《白い渦》 に転送されました！


マシカ区 Q-3（森林）に移動！（体調30⇒29）
マシカ区 P-3（道路）に移動！（体調29⇒28）
マシカ区 O-3（道路）に移動！（体調28⇒27）
マシカ区 N-3（山岳）に移動！（体調27⇒26）
マシカ区 M-3（山岳）に移動！（体調26⇒25）

採集はできませんでした。
　　 - 偽黒初(77) の選択は マシカ区 Q-2：チェックポイント《白い渦》（ベースキャンプ外のため無効）

［805 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［436 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［482 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［204 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［402 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［328 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［265 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［194 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［118 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［143 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［149 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［311 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［47 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［224 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［94 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［108 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［104 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［46 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［84 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢
［100 / 100］ ―― 《屋台》更なる加護
［75 / 100］ ―― 《苺畑》不安定性
［13 / 100］ ―― 《荒波》強き壁
［100 / 100］ ―― 《小集落》猛襲
［37 / 100］ ―― 《落書き壁》リアクト
［76 / 100］ ―― 《変な像》揺らぎ
［71 / 100］ ―― 《白い渦》不幸
［100 / 100］ ―― 《黒い渦》不運
［15 / 100］ ―― 《線路》駆逐



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

時計台が映る。

　

　

　

秒針が静かに進む。