［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

【Side：楪葉】





2021年、6月。

世話になっていた枢木のおじさんが行方不明となったあの日から、
早いもので既に6年が経とうとしていた。




トキとはあの件、あの日以降会っていない。



風の便りで、あの後の預かり屋は彼が経営しているのだと聞いた。

彼が叔父の手伝いを何年も続けていた事を実際に目にしたこともあるからこそ、分かる。
要領のいい彼の事だ、きっと上手い事経営を続けているに違いない。

それでも、叔父の頃と同じ様に大々的に営業をするつもりが無いのはきっと、
枢木の家に気付かれる事を依然警戒しての事なのだろう。
あの家の、あの二人にとっての実家に対する確執は、一言で言い表せるようなものではない。

何よりも今回の叔父の失踪の件、おそらく彼は実家の仕業だと疑っている所もある筈だ。
より警戒心を強めていてもおかしくないのである。
下手したら枢木家本家とコンタクトの取れる立場の自分も、
以前のように敷居を潜らせてもらえるとも限らないのだ。



それでも、


叔父が居なくなっても、この街の時は流れていく。


叔父が見つからずとも、彼の時間は流れていく。




だから、彼もきっと。
預かり屋店主として生活する一方で、

止まってしまった時間の中、停滞していると。

取り残されていると、



そう、思っていたのだが――









「…………」



別件でタニモリ区へ向かう機会が出来た。


あれから6年。


調べ物をする中でも意識して近づこうとしなかった地区だけれど。
一つ用件を終えて駅に向かう前に、久々に。折角だからと。
あの事務所の様子を見ていこうと思い立ったのだ。


駅に面したこの大通りは平日の夕方となると仕事帰りや学校帰りの人々で人通りが多く、
駅へと向かう波に抵抗する様な形で雑居ビルの方角へと向かう。

6年ちょっとでは然程大きな変化は見られないように窺えるが、
それでも、あの頃にはなかった店舗がちらほらと見受けられれば新鮮にも思えるもの。
不思議な心持ちの中、整備された歩道を進んでいく。


大通りから一本、裏の道へと移動して。

角を幾度か曲がれば、あっという間。
目的の雑居ビルの裏手が見える所へと到達した。


……見慣れた光景。
思わず深く息を吸い込む。

当初は事務所側から邪魔する予定だったのだけれど、
もし仕事中だったらと思うと妙な空気にしてしまいかねないので、
あえての裏側の、居住区側の扉を選んだというわけだ。
我ながら気を利かせたのである。


（留守だったり仕事中なら、まあ。それはそれで）


今は会うべき時ではないと言われているのだろうと、そう思うことにすればいいのだ。

そして万一と言う時は、事務所側の明かりを確認するだけでもいいのだ。



そう言い聞かせる事で、
いつの間にか強張っていた肩の力をゆっくりと抜いていき、

階段の登り口へと向かおうとしたところで――




「…………」





先客が、いた。





咄嗟に引き返しては気配を殺し、物陰からそちらを窺うよう見やる。
珍しい光景につい体が動いてしまっていた。


仕方ないのだ、警戒心に似たものを抱きながらやってきたのだから。
そしてこの己の反応は長年の積み重ねの、言わば癖のようなものなのだ。

そう内心で言い聞かせつつも尚、物陰から窺うのを止める事は無い。


そこまでする必要はないと、我ながらに思う。
もしかしたらただの宅配だったり、
回覧板を手にしたご近所さんの可能性だってあるのだから。



でも、

もしも、だ。



もし、枢木の家の人間が“ここ”に到達したらと思うと。




また“あの様な事があったら”と思うと――







しかし、





（あれ……？）


扉の前に立っていたのは、枢木の家の人間とはまた異なる雰囲気の、
郵便配達の制服を着ているわけでも、回覧板を手にしている訳でもない。

見たこともない男性だったのだ。




……誰だろうか。


遠くからそっと様子を窺ってみる。



がっしりとした体躯に、ぱっと遠目から見ても190cm近くはありそうな高身長。
その人は扉と対面しこちらに背を向けている為、その顔立ちまでは分からないが、
後ろ姿だけでも、随分と鍛えられた体つきをしている事は把握できた。

髪は、短い茶髪。


（枢木の人間じゃない……）


そう、判断する。


あの家は古くから続く家柄であり、
その血筋と異能を重んじてきた故にその地を色濃く受け継いでいる。

その為、一族の者は皆決まって黒髪もしくは灰鼠の髪。
青と緑混じりの瞳と決まっていた。


……最も、髪に関しては染めてしまうこともできるし
瞳も今はカラコンというものまである為に、
それらだけで断言することは難しいのだけれど。



それでも不思議と、“あの人は違う”とわかった。


長年の勘と、感覚。
ついでに長い事枢木家と関わりがあるからと言う自負が、
己の中で決定の印を押してくれていた。




（というか、両手にスーパーの袋持ってるし）


まるで買い出しにでも行ってきたかの様ではないか。

一体何なんだろう、
彼の事務所に何の用があるのだろうとまじまじ見つめようとして――





「……っ、」




――鋭い、金色。





不意に、ぐるりとその男が振り向いたのだ。






彼の視線がこちらに向けられるのとほぼ同時に、
咄嗟に曲がり角の方へと向かって歩みを進めてみるフリをする。






……気づかれた？


いや、まさか。


でも偶然にしては迷うことなくこちらを振り返っていた。





「…………」


どきどきと耳のすぐ側で脈打つ音が聞こえる。
ぴり、と痺れる錯覚を覚える程に意識を集中させる。

こちらだって、気配を上手い事消していた筈なのに。


こんな感覚、随分と久し振り。



辿り着いた角を曲がって、その男から死角になったところで待機して。
その視線がこちらから外れるまで動けずにいて、




……そこで、静かに扉の開く音。





（あ……）



その音を境に男の視線はこちらから外れてくれたようだった。


（今、）



その隙に、覗き見る。


だって、あの男がこちらを向いている時に扉は開かれたのだ。

そもそもあの男は買い物袋を手にしていた為に両手が塞がっていたのだ。



それは、つまり。



内側から誰かが開けたということで、





その誰かというのは、勿論――






「―――、」





遠目から、


大きな背中越し、



見知った筈のその顔を、見て――



























「…………」







――気付いた時には大通り。


足早に、その場から立ち去ってしまっていた。





先程よりも幾分か落ち着いた人通りの中で、見慣れた雑居ビルを見上げる。


そこに明かりはついていた。


それだけでも、ほぅと溜息が溢れる。
変に緊張してしまっていた肩の力が抜けていくようだった。




（……さっきのあれ）



先程、遠目から目にした彼の表情を思い出す。



（あれ、本当にトキだったよね……？）



……そう思ってしまう程に、

これまで何年も一緒に居た中でも、見た事の無い顔をしていた。






（…………）




（……そう、）





（そっか……）





生きていた。

無事だった。

取りあえずは、それだけで十分の筈だった。



きっと彼は、ここであれから変わりなく生活をしていたのだろう。

叔父がいつ帰ってきても良い様に、この場所を守っているのだろう。



その中で、


普通の人としての生活を送る中で。




彼があんな顔をする様な変化が、あって。


彼はその変化を受け入れて過ごしているのだろう。




それはきっと、ううん。絶対。

喜ばしい事の筈だ。





（でも、）



（次は）





そう。


今回は先客がいた故に話をする事を諦めてしまったけれど、
彼が無事ならば、まだそこに居るのならば。


叔父の帰りを待ち望んでいるのなら。


また近い内に、話をしに来なければならない。




もし、

もし、この街の一住人として穏やかな日々を過ごしているのなら。
枢木という家の柵から離れて、普通の生活を送れているのなら。


こんなこと、しない方がいいのかもしれない。




けれど、







“でも、何かあれば直ぐに伝える。”







そう、約束をしたのは私で。

それを承諾したのは他ならぬ彼だから。




それが“今の彼”に、どんな影響を及ぼそうとも。











「私は、約束を守る性分だから」










・・・・・
彼との約束も。


・・・・・・・・
叔父さんとの約束も。













「あんたも昔からそうだったよね、――トキ」












守る、と。


6年前のあの日に、決めていた。

ItemNo.40 白檀の塗香 を使用しました！
　魔香のため、体調は回復しなかった。
　今回の全戦闘において 回復40 が発揮されます。
　今回の結果でのスキル熟練度が伸びやすくなった！

自然LV を 21 DOWN。（LV21⇒0、+21CP、-21FP）

命術LV を 6 UP！（LV40⇒46、-6CP）
幻術LV を 20 UP！（LV40⇒60、-20CP）
装飾LV を 5 UP！（LV82⇒87、-5CP）

六花(153) により ItemNo.2 梨 から射程2の武器『燐灰飾りの苦無』を作製してもらいました！
　⇒ 燐灰飾りの苦無／武器：強さ638／［効果1］回復50 ［効果2］－ ［効果3］－【射程2】

六花(153) により ItemNo.2 燐灰飾りの苦無 に ItemNo.44 生命の宝石 を付加してもらいました！
　⇒ 博打付加！［ 3 6 1 = 10 ］通常付加
　⇒ 燐灰飾りの苦無／武器：強さ638／［効果1］回復50 ［効果2］快癒30 ［効果3］－【射程2】

キキメ(374) とカードを交換しました！

四季の叫び （ブリザード）


マルバス を研究しました！（深度1⇒2）
マルバス を研究しました！（深度2⇒3）
リザレクポーション を研究しました！（深度0⇒1）

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

六花(153) は 花水木 を入手！
枢木(296) は 楪 を入手！
六花(153) は ものすごいお野菜 を入手！
六花(153) は 強い牙 を入手！

六花(153) に移動を委ねました。

マシカ区 D-6（森林）に移動！（体調15⇒14）
マシカ区 D-7（道路）に移動！（体調14⇒13）
マシカ区 D-8（道路）に移動！（体調13⇒12）
マシカ区 D-9（草原）に移動！（体調12⇒11）
マシカ区 E-9（道路）に移動！（体調11⇒10）

採集はできませんでした。
　　 - 六花(153) の選択は タニモリ区 C-11：チェックポイント《屋台》（ベースキャンプ外のため無効）

MISSION - 未発生：
　　 - 六花(153) の選択は マシカ区 J-8：チェックポイント《黒い渦》（ベースキャンプ外のため無効）

［805 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［432 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［476 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［204 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［400 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［330 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［267 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［194 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［118 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［143 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［151 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［306 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［48 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［222 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［102 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［108 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［107 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［56 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［86 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢
［100 / 100］ ―― 《屋台》更なる加護
［75 / 100］ ―― 《苺畑》不安定性
［14 / 100］ ―― 《荒波》強き壁
［100 / 100］ ―― 《小集落》猛襲
［38 / 100］ ―― 《落書き壁》リアクト
［84 / 100］ ―― 《変な像》揺らぎ
［100 / 100］ ―― 《白い渦》不幸
［100 / 100］ ―― 《黒い渦》不運
［18 / 100］ ―― 《線路》駆逐



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

時計台が映る。

　

　

　

秒針が静かに進む。