［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

　ひとつの死体を見下ろしていた。
　生死を直に確認したわけではないけれども、放っておけば同じことだった。
　若い男が血溜まりに倒れ伏したまま、半開きの眼で虚を見据えている。首筋についた、まだ新しい傷が瑞々しく光っていた。
　きっと何が起きたのかもわからぬ内に屠られたのだろう。この世界に来て早々、戸惑う猶予も与えられずに。
　そんな男を。自分はただ、目を離すことなく、見下ろしていた。
　
　嗚呼、なんて哀れだろう。と──

---

　相も変わらずひとつの死体を見下ろしていた。

　この男は詐欺師だった。善良な人をだまくらかして他者の人生を狂わせる悪人だった。彼は自身の行いを悪と知っていて、抱えた罪の重さを自覚してもいた。
　だから、これが天命と言われれば彼自身、納得していたかもしれない。
　彼にはイバラシティの住民が持つ能力に心当たりがなく、きっと侵略者が来たところで早々にくたばるのだ、それがお似合いだと自ら卑屈にぼやいていた。
　やはりと言うべきか、皮肉にもと言うべきか。まったく予想通りになったのだ。

　だらしなく開いたままの瞼を、せめて閉じてやろうと歩み寄る。屈んだ姿勢で手を伸ばした。

「……嗚呼」

　そうだ。忘れていた。
　自分にそれをすることは、できない。

---

　ひとつの死体に手を伸ばしていた。

　瞼を閉じてやろうと思って。けれど、その顔がなにかに覆われることはない。
　──ここにあるのは、手のような形をした影だけだ。
　ついぞ伸ばしてしまったが、自分には触れる手など無い。この影は何者でもない。
　だのに、習慣はイバラシティで与えられたまやかしの日々に引きずられたままだ。

　ここで思い出した全部、《否定》したら。自分はこの人間になれるのだろうか──

---

「哀れな奴」
　
　男は愚かだった。一人の女が幸せにならなければならないと信じて、そのためなら自ら地獄へ堕ちることも厭わなかった。
　その結果が。

「ひっそり独りでお亡くなりになる、か」

　覚悟あっての自業自得ならもはや救うこともあるまい。
　けれども、俺は女の方がそれを望まぬことを知ってしまっていた。いや。それ以上に。

「莉稲は、悲しむだろうな」

　俺はこの男と同じように、彼女を不幸にすることを嫌っていた。

「全部、全部思い出しちまった。俺ァ、“お前”じゃなかったんだな」

　ずっと一番近くで彼を、彼と彼女を見てきた。つもりだった。
　それはまやかしの日々であったらしい。自分は、彼の内側に発生した人格だと思い込まされていた。ワールドスワップによる都合のいい改変が、そう思わせただけ。実際のところは見守った月日など存在しない赤の他人だ。
　自分は、何者でもない。
　強いて言うなら、誰かの皮を被り何者かを装って生きる存在だ。何者でもないが故に、世界に存在することを許されずアンジニティへ追放された。事はそれに留まらず、是非も都合も問わずワールドスワップの能力が自分をあの街へ飛ばしたのだ。

　そして、自分はこの男の一部となった。
　彼が無意識的に自我を切り離した際、代わりに作り出された人格──それが、何者でもない自分に与えられたあの街での役割だった。
　ワールドスワップの辻褄合わせというものだろうか、彼の一部となった自分は彼の記憶と感情をある程度共有した。何者にもなれぬ自分が持つ「何者かになる力」は、あの男の一部となったことで「主人格に理想を着せる力」として昇華されたと推察する。
　因幡うさ子という姿は、彼の描く「強い者」のイメージが誇張されたものだ。

「鰐淵さん、か。半端なお前が嫌いで、好きな女のためなら加減せず走り抜けるナイスガイ。……鰐淵さんは、お前の理想か？　それとも、抑圧されてたお前自身か？」

　問うた相手の口は動かない。
　この男の一部として、過去も都度注ぎ込まれた。彼の得た感情にも、苦悩にも、半分かそれ以上は浸かっていた。

「なあ、卯島渉。俺は、誰でもない。自分を《否定》して誰かになることでしか存在を証明できない。けれども。けれどもだ。偽りの個性とはいえ、あの街で俺はもう一人のお前だった」

　よくできたまがい物の感情だが、俺は確かにこの男と共有していた。
　まやかしの記憶だからと言って、ここまで重なってどうしてこの男と無関係と割り切れるだろう。誰でもない自分と、自分を心底嫌った彼。異なる否定の形でありながら、俺たちはあまりに濃い繋がりを作られてしまった。
　けれども、その繋がりが途切れたことを目の前の死体は物語る。

「腹立つよなァ。勝手にくたばりやがって。莉稲は、クソみてェなお前をずっと見てたのによ」

　『鰐淵さん』は卯島渉と同じように、汐見莉稲に幸せを願っていた。汐見莉稲を悲しませてはならないと共感していた。だから俺は──『卯島渉』は消えるべきでないと思った。

「なァ、渉。俺が代わってやるよつったら、どうする？」

　いらえはない。
　クッ、と虚ろな喉が鳴った。形の無い口角が上がる。
　
「……ハッハァー！！　譲りそうだから腹立つンだよなテメー！　それならそれで〜とか温いこと抜かすだろ絶ッ対！！」

　ゲラゲラと笑う。自分は、彼を“下僕”として嗤う。

「よォし良いだろう、決めたゼェ。だァれがテメーの思い通り動いてやるかッつーの！！　……俺は自分の正体忘れたトコでなァ、なれるのは精々敏腕サポーター鰐淵さん止まりなんだよ。お前になンかなりたくもねェなァ！」

　何者でもなく誰かに成り代わるだけの自分の、試したことのない使い方を思いつく。今世一大の悪巧みだ。
　自分がこの男の面倒を見てやろう！

「なァ、渉。何が足りない？　お前の血肉になるなら、良いと思ってやるさァ」

　すっかり白くなった青年の手に、影の手を重ねる。

「半分くらい俺で構成された身体ッてのも、気持ち悪ィだろうが我慢しろよ」

　自分は何者でもない。しかしきっと、今ここにある自分を否定すれば、何者にだってなれるだろう。
　彼と、本当の意味でひとつになることだって。
　何物でもない自分を忘れ去ってしまえば、きっと。きっとうまくやれるはずだ。

---

「ハーーーッ良かったァー！！　マジで侵略とか冗談だったらどうしようかと思ったーーー！！」

　派手に声を上げる。起きたばかりで瞠目しながら周囲をぐるりと見回してた男が、こちらを見た。
　卯島渉。彼は自分を生んだ主人格だ。
　冴えなくて梲の上がらない碌でなし。
　正直、こんな男がこんな予想よりも遥かに壮大な現場で誰かを守るなんてできるのかと我ながら不安になったが、そんな考えは振り切る。
　だって、理想を着せるのが俺達の力だ。とうとう侵略から街を守る時が来た。こいつは自分自身を信じてない。俺が信じないで誰が信じる？
　ここなら、セーブせず俺達の力を使わせてやれる。ようやくガキの時から夢に描いたヒーローになる力を与えてやれる。
　生み出された時から長年連れ添って抑圧してきた期待も鬱憤も全部託す。

「よっしゃ渉、ぼけっとしてる場合じゃねェジョー！　話聞いてたか！？　変身だジョー！　やらなきゃ死ぬだけだがなァー！！」

　こいつが莉稲に良い格好を見せるのは気に食わないが、まあ莉稲はこいつが頑張る方が嬉しいだろうし譲ってやるとする。気に食わないが。
　それに、どうしてか今は──とにかくこいつに胸を張って生き抜いてほしいと思うのだ。

ENo.153 六花 とのやりとり


ENo.490 雛 とのやりとり


ENo.880 つむじ とのやりとり

ナキドリ(516) に ItemNo.14 潮風ノ羽衣 を送付しました。
サキ(768) に ItemNo.36 雪兎 を送付しました。

ナキドリ(516) から すごい羽 を受け取りました。

ナキドリ(516) から 強靭な皮 を受け取りました。

ケムルス(719) から 匂いだけで効きそうなスープ を受け取りました。

ケムルス(719) から 立派な皮+1 を受け取りました。

魔術LV を 5 DOWN。（LV5⇒0、+5CP、-5FP）
命術LV を 2 DOWN。（LV16⇒14、+2CP、-2FP）
制約LV を 5 DOWN。（LV5⇒0、+5CP、-5FP）
使役LV を 1 DOWN。（LV1⇒0、+1CP、-1FP）
領域LV を 10 DOWN。（LV40⇒30、+10CP、-10FP）
解析LV を 10 DOWN。（LV40⇒30、+10CP、-10FP）

自然LV を 5 UP！（LV20⇒25、-5CP）
呪術LV を 20 UP！（LV0⇒20、-20CP）
具現LV を 15 UP！（LV10⇒25、-15CP）
防具LV を 5 UP！（LV80⇒85、-5CP）

ItemNo.14 すごい羽 に ItemNo.36 強靭な皮 を合成し、活力漲る魔力溢れる変な本 に変化させました！
　⇒ 活力漲る魔力溢れる変な本／素材：強さ50／［武器］強撃50(LV95)［防具］護持45(LV90)［装飾］舞撃50(LV90)

サキ(768) の持つ ItemNo.7 永久雪 に ItemNo.17 雪兎 を合成し、活力漲る魔力溢れる星屑 に変化させました！

ItemNo.34 魔力溢れる滑々な煙玉 から隔壁『神風狡兎ノ帯』を作製しました！
　⇒ 神風狡兎ノ帯／隔壁：強さ315／［効果1］－ ［効果2］－ ［効果3］滑々28


サキ(768) により ItemNo.14 活力漲る魔力溢れる変な本 から魔鏡『揃いのペンダント』を作製してもらいました！
　⇒ 揃いのペンダント／魔鏡：強さ318／［効果1］舞撃50 ［効果2］－ ［効果3］活力33

ケムルス(719) により ItemNo.35 緑色の果実 から料理『ヘテロダイヤモンド』をつくってもらいました！
　⇒ 美酒佳肴！［ 1 5 6 = 12 ］成功！料理の付加効果のLVが増加！
　⇒ ヘテロダイヤモンド／料理：強さ360／［効果1］敏捷42 ［効果2］快癒49 ［効果3］風柳56

星を背負う影(890) とカードを交換しました！

虎の威を借る （ラバーキン）


スクリーム を研究しました！（深度0⇒1）
コンテイジョン を研究しました！（深度0⇒1）
ジャイアントラップル を研究しました！（深度0⇒1）

カース を習得！
ボロウライフ を習得！
フラワーバド を習得！
クリエイト：スパイク を習得！
ラトゥンブロウ を習得！
デッドライン を習得！
シャドウラーカー を習得！
ダークネス を習得！
ディープフリーズ を習得！
コロージョン を習得！
ディバウア を習得！
敗柳残花 を習得！
タクシックゾーン を習得！
アバンダン を習得！
闇の祝福 を習得！
サモン：サーヴァント を習得！
ブロッサムグレイブ を習得！
サモン：ノーム を習得！
サモン：シャドウ を習得！
ウィザー を習得！
悪夢 を習得！
デスグラスプ を習得！
サモン：ビーフ を習得！
再利用 を習得！
サモン：スプーキーアイ を習得！
ダウンフォール を習得！
リビルド を習得！
瑠璃樹 を習得！
クリエイト：ジャイアントフィスト を習得！
贖罪山羊 を習得！
腐食耐性 を習得！
盲目耐性 を習得！
ブラックヴェール を習得！
サモン：エンチャンター を習得！
クリエイト：フォートレス を習得！
クリエイト：マシンガン を習得！
駄物発生 を習得！
クリエイト：モンスター を習得！
フォレストオファリング を習得！
堅牢堅固 を習得！
サモン：エンペラー を習得！
クリエイト：キャノン を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

うさ子(266) は フォーク を入手！
ナキドリ(516) は アタッシュケース を入手！
ケムルス(719) は バターナイフ を入手！
サキ(768) は アタッシュケース を入手！
サキ(768) は 奇妙な骨 を入手！
ケムルス(719) は げそ を入手！
ナキドリ(516) は 金の光焔 を入手！
ナキドリ(516) は 羽 を入手！

マシカ区 G-11（山岳）に移動！（体調21⇒20）
マシカ区 G-10（山岳）に移動！（体調20⇒19）

［805 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［432 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［476 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［204 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［400 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［330 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［267 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［194 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［118 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［143 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［151 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［306 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［48 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［222 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［102 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［108 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［107 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［56 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［86 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢
［100 / 100］ ―― 《屋台》更なる加護
［75 / 100］ ―― 《苺畑》不安定性
［14 / 100］ ―― 《荒波》強き壁
［100 / 100］ ―― 《小集落》猛襲
［38 / 100］ ―― 《落書き壁》リアクト
［84 / 100］ ―― 《変な像》揺らぎ
［100 / 100］ ―― 《白い渦》不幸
［100 / 100］ ―― 《黒い渦》不運
［18 / 100］ ―― 《線路》駆逐



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

時計台が映る。

　

　

　

秒針が静かに進む。