［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

　莉稲の誕生日が思い出せない。
　とても簡単なことなのに、この世界での激しい展開からかど忘れしたように記憶がぽかりと抜け落ちている。

「どうしたうさ子、黙りこくって」
「あァ、いや……」

　大したことではないと言おうとして口ごもった。春なのか、夏なのか、秋なのか、冬なのか。それすらわからないのだ。それ自体は困ることではないが、違和感を覚える。
　それで、俺は一応聞いてみることにした。なんでもないことだろうが、一応。

「……なァ、鰐淵さん。こんな時になんだけど、莉稲の誕生日ってわかるか？」
「あ？　マジで何でこんな時に──」

　怪訝そうに片眉を上げたと思えば鰐淵さんの動きが固まる。目を見開き、凍りついた鰐淵さんの顔からみるみる血の気が引いていった。

「がッ、あ、ぐ、ァアアア…………！！！！」

　目に見えて明らかな急変だった。
　鰐淵さんは頭を押さえてもんどり打ち、苦しげに声を上げる。
　揺れ動く藍色の目が、頼りなく俺を捉えた。

「くそっ、くそォ……！　なンで……」

　うめき声は次第に獣のような咆哮に変わった。明らかな異常事態に狼狽えながら蒲の穂で試みるが、効果は芳しくない。

「鰐淵さん、鰐淵さん！　大丈夫かよ、どこか苦しいのか！？　野上さん呼んでくるか！？」
「来るな！！！」

　異変に気づく。鰐淵さんに伸ばした自分の指先から、煤のような塵が零れ落ちていた。

「あァくそ、いやだ、喰っちまう……！！　“思い出し”ちまう……ッ！！」

　鰐淵さんは落ち着く様子も無く、譫言を口にしている。俺もパニックから戻れそうになかった。

「なンだ、これ！！　どうなってンだよ鰐淵さん！！」
「“忘れ”ンじゃねェぞ渉……！！　何でもいいから“思い出せ”、くそ、クソ、くそがァ……！！！」
「忘れるなって、なにを、なんで、」

　はくはくと荒い呼吸で鰐淵さんの言葉を反芻する。

「“渉”って、俺のこと……か？」

　記憶が混濁する。夥しい量の情報が頭に流れ込んでくる。くらくらと歪んだ視界が、記憶の海の底を見せた。

---

　「侵略者」という単語は、ある日を境にこの街でポピュラーな単語になった。

　俺達の街──イバラシティは“アンジニティ”なる侵略者から狙われている。
　いつもより暗く紅い逢魔が時のことのことだった。胡散臭い男性の映像が大勢の市民の脳内に浮かび一つの警告がされた。この怪現象をきっかけに侵略者の存在は周知された。
　その内容は「この街は異世界“アンジニティ”から侵略を受けている。このままだと互いの世界が入れ替わってしまうから街の住人は備わった能力を用いて侵略を阻止しろ」なんて突飛な話だ。
　街の空は部分的に異様な赤さを見せるようになり、その頃から都市伝説や妙な宗教も流行りだしたように思う。
　アンジニティという輩の実態もまるでわからないまま、謎の侵略者達の情報だけは周知された。
　誰かの異能を用いた大掛かりなイタズラである可能性は十分に有り得る。なにせ、あれから今まで何も起きてはないのだ。

「能力により、アンジニティの住人は既にこの街に紛れ込んでいます。この街の一部を改変し、辻褄を合わせ、ごく自然に、巧妙に、だそうで」

　それが声の主の言い分であるが、辻褄が合っているのならそんなもの気づきようがない。仮に侵略者だとわかったとして普通に日々を過ごしてきた民間人が何とかできるとは思えない。
　俺も例に漏れず映像を見た一人ではあるが、この街を守ってやろうなどと殊勝な考えは浮かばなかった。
　俺──卯島■は詐欺師だ。厳密にはグループの下っ端で稼ぎつつお零れを貰う立場で、ついでにこの街の住民なら何かしら持っている異能力というやつも心当たりが無い。
　能力を持たない悪人が侵略者から街を守るなんて、馬鹿げているにもほどがある。
　悪人になった理由なんてしょうもないものだ。すぐに金が欲しかった。
　本当に戦争が起きるとして、精々無様に逃げ惑って死ぬのがオチだろう。そしてそれが俺にお似合いの天命だ。

　と、思っていたのだが。読めない未来というものはあるもので。

　紅く暗い空の印象的な例の日のことだ。俺は騙し取った金をグループの徴収役である野上へ渡しに行った。野上は札束を数えて、

「■島ちゃん、十万足りないよ。どこにやったの」

　と口角を上げて告げた。足りないはずがない。何度も数えたのだ。

「空が赤いだの侵略者だので有耶無耶になるとでも思った？」

　要は催促だ。もっと寄越せと言っている。
　明日まで待ってやるからなどと言われて、釈然としない思いを飲み込みながらどうにか追加の金を方々で作り差し出した。
　
　こうでもしなければ異能を持たない俺は匿ってもらえない。簡単に警察の足がつくし、何よりまず“お仲間”にボコボコにされる。弱者は強者の使い駒に過ぎず、痛みによる教育と統制が蔓延っている。
　いっそ指定暴力団ぐらい組織的であれば秩序もあったのかもしれないが、俺が行き着いた先はそんなものだ。

　走り回って負債を増やして追加の十万を払い、疲れ果てた俺はおかしな侵略警告などどころではなかった。草臥れきっていた。
　世の中がおかしな騒ぎに満ちていたって、俺にはいつもの一日でしかない。
　小賢しく善意を踏みにじった利益を手にしたところで、結局弱者はいつも通り搾取されるのだと、この時も諦観していたのである。
　その時だった。低い位置から聞きなれない軽快な声がした。

「なァ、オメー卯■渉だろ？　そんな情けねェツラで世界の危機から一人で生き延びる気かい」

　西日の差した電柱の陰から、サメのぬいぐるみがこちらを見ていた。
　奇妙な夢か幻としか思えなかった──そもそもどうでもよかった──俺は卑屈にへらへらと笑って答えた。幻聴なら幻聴で、きっと自己批判の類だろうと思った。

「あんな馬鹿げた話、本当だとして俺にはどうしようもない。生き延びるどころか早々にくたばるだけなんだよ」

　つまるところ、本心且つ適当な回答を転がした。世界の危機と聞いて漸くアンジニティの話を思い出したくらいだ。
　カラカラと笑っていたサメが何者かもわからないまま、それから調子よく口車に乗せられようとも思わず。
　守りたいものを守るだけの力をくれてやるという触れ込みで俺は因幡うさ子になる力を得た。

　結局、この鰐淵さんの正体はというのは俺の生んだ新しい人格で、自我を外に切り離し理想の容姿や人格を作り出すのが“自分を辞める”俺の能力だった。鰐淵さんは生まれてからずっと俺の中に潜んでたから俺に異能を使わせないよう管理してたから、俺が切り離されることも無く、……。

　
　──なにか、おかしくないか？


　いや、辻褄は合っているはずだ。
　鰐淵さんが体外に出ているのは、自我を切り離す俺の力の応用だ。自分ではなく、生まれた人格の方が外に出た。
　鰐淵さんが俺に異能を使わせなかったのは俺が嫌いだから、更に俺が詐欺なんて犯罪に手を染めたから。
　だから中学時代に覚醒して以来、再び力を行使することもなく、侵略の話が出るまで彼が体外に出ることも無かった。


　──どうして？


　辻褄は合っている。
　辻褄は合っていた。
　でもなぜ、彼は、侵略が始まるまでの間、一切俺の外に出てこなかった？


　──辻褄が合わされていたとしたら？


　気がついたら赤い空に覆われた世界──ハザマに立っていた。
　混乱しているうちに化け物が出て、鰐淵さんに変身しろと言われて、

「ちがう」

　その、前。俺がこの世界に来て最初にしたことは？



　劈くような頭痛が走る。直感した。また、あの夢が来る────

ENo.541 マテバ とのやりとり


ENo.545 東堂玄樹 とのやりとり


ENo.719 ケムルス とのやりとり


ENo.1033 斎 とのやりとり

ケムルス(719) に ItemNo.25 べぽらっぷ を手渡ししました。

ItemNo.4 潮のお香 を使用しました！
　魔香のため、体調は回復しなかった。
　今回の全戦闘において 復活30 が発揮されます。
　今回の結果でのスキル熟練度が伸びやすくなった！

ケムルス(719) に ItemNo.38 青色の果実 を送付しました。

ナキドリ(516) から 磁鉄鉱 を受け取りました。

ナキドリ(516) から 書類 を受け取りました。

具現LV を 5 UP！（LV5⇒10、-5CP）
防具LV を 5 UP！（LV75⇒80、-5CP）

ItemNo.1 滑らかな羽衣 に ItemNo.42 小判+1 を合成し、滑らかな羽衣 を強化しました！（+35）
　⇒ 滑らかな羽衣／聖衣：強さ225／［効果1］風柳30 ［効果2］敏捷40 ［効果3］滑々44

ナキドリ(516) の持つ ItemNo.27 純情マフラー に ItemNo.10 木通 を合成し、純情マフラー を強化しました！（+50）
サキ(768) の持つ ItemNo.10 穢れを知らないうさちゃんパーカー に ItemNo.6 奇妙な骨 を合成し、穢れを知らないうさちゃんパーカー を強化しました！（+40）

サキ(768) により ItemNo.34 雪兎 に ItemNo.38 書類 を合成してもらい、魔力溢れる滑々な煙玉 に変化させました！
　⇒ 魔力溢れる滑々な煙玉／素材：強さ55／［武器］盲目50(LV90)［防具］煙霞50(LV95)［装飾］撒盲50(LV95)

ナキドリ(516) により ItemNo.2 アンバサダーフレーム に ItemNo.30 雪花石膏 を付加してもらいました！
　⇒ 博打付加！［ 5 2 5 = 12 ］通常付加
　⇒ 特質強化！効果3のLVが19増加！
　⇒ アンバサダーフレーム／魔晶：強さ272／［効果1］煙霞45 ［効果2］煙霞45 ［効果3］充填38

クゥ(1372) とカードを交換しました！

お昼寝するちいさな兄妹 （スクライカー）


ワイドプロテクション を研究しました！（深度0⇒1）
ワイドプロテクション を研究しました！（深度1⇒2）
ワイドプロテクション を研究しました！（深度2⇒3）

クリエイト：マナクリスタル を習得！
クリエイト：バトルフラッグ を習得！
サモン：ハンター を習得！
修復 を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

うさ子(266) は アンデシン を入手！
ナキドリ(516) は 黄水晶 を入手！
ケムルス(719) は タンザナイト を入手！
サキ(768) は タンザナイト を入手！
ナキドリ(516) は 永久雪 を入手！
ケムルス(719) は すごい羽 を入手！
うさ子(266) は 金の光焔 を入手！
ナキドリ(516) は 立派な皮 を入手！

マシカ区 F-10（山岳）に移動！（体調25⇒24）
マシカ区 F-11（山岳）に移動！（体調24⇒23）
マシカ区 F-12（沼地）に移動！（体調23⇒22）
マシカ区 G-12（沼地）に移動！（体調22⇒21）

［805 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［436 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［482 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［204 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［402 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［328 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［265 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［194 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［118 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［143 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［149 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［311 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［47 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［224 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［94 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［108 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［104 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［46 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［84 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢
［100 / 100］ ―― 《屋台》更なる加護
［75 / 100］ ―― 《苺畑》不安定性
［13 / 100］ ―― 《荒波》強き壁
［100 / 100］ ―― 《小集落》猛襲
［37 / 100］ ―― 《落書き壁》リアクト
［76 / 100］ ―― 《変な像》揺らぎ
［71 / 100］ ―― 《白い渦》不幸
［100 / 100］ ―― 《黒い渦》不運
［15 / 100］ ―― 《線路》駆逐



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

時計台が映る。

　

　

　

秒針が静かに進む。