［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

「ねえ」

　相も変わらず昼休みのことである。屋上に向かおうとしたところを食後のコーヒーを片手に雑誌を眺める上司に呼び止められ、彼こと偽黒初は二つ返事で振り返った。

「はいはい。偽黒初ですよ」
「貴方って割とその……物知りよね。こう、良く分からない知識とかに対しては特に」
「まあ……良く分からないかどうかはともかくとして、僕を動かす知識の総量は1400㏄ではありますが」
「これ、ちょっと見て貰える？」

　上司がスッと差し出してきたのは、今さっき眺めていた雑誌だった。気候も穏やかなイバラシティでは、アウトドアに適した陽気が続いている。初夏の過ごし方なる特集ページには、今の季節にぴったりな情報が並んでいた。去年のハイキングで散々な目に遭ったことを忘れているわけでもないだろうに、また何かやるつもりなのだろうか。ハイキング、旅行、釣り、川遊び、そして──

「グランピング？」
「最近耳にするんだけれど、キャンプとの違いが分からないのよ。恥ずかしながら……」

　言葉にした通り、どことなく恥じらいながら問うてくる。立場も含め、無知を晒すのも憚られるのだろう。
　上司に頼られる、それも知識の面でというのは珍しいため、いいところを見せたいわけだが。彼自身もアウトドアに疎いため、グランピングなる言葉に聞き覚えはあるが、詳細は良く分からなかった。

「まずは情報を整理しましょう。素因数分解です……グランピングに対してキャンプはイングがついてない。キャンプとグランプとして比較しましょう」
「比較対象を揃えるのは実験の基本ね」
「えーと……キャンプは知ってますよね？」
「テントとか、タープとか……要するに野宿の豪華版でしょう？」
「随分と乱暴な分類ですね。僕がキャンプを愛するキャンパーだったら今頃笹子さんは怒られてますよ」
「キャンプを愛する人ってキャンパーって呼ぶの？」
「キャンプ愛してない僕が知るわけないじゃないじゃないですか」
「キャンパーに怒られるべきは貴方よ」

　全く正しいことを言ったつもりだったのだが、何故か上司は半眼で眺めてくる。ジャンプする人間はジャンパーなのだから、キャンプする人間はキャンパーだろう。今回の主題はそこではないため、上司の批判は甘んじて受けるが。

「グランプって言葉あるんですか？」
「無い……と思うのだけれど。少なくとも、私の知識にはね」
「今ちょっと僕の知識データベースにアクセスしてみたんですが、グラマラスなキャンプの造語らしいですよ」
「インターネットを知識って呼ぶのはいかがなものかしら」

　手にした携帯端末で調べたところによれば、グラマラスというだけあって確かに魅力的なものだった。水や食材はもちろんのこと、テントではなくコテージに泊まったり、調理も外注出来たり、果ては温泉設備があったりと、むしろ旅行に近いものを指すらしい。ハードコアなキャンプに比べ、いいとこどりのビギナー向けといったところか。

「なんか従来のキャンプより至れり尽くせりって感じですかね。全体的に」
「なるほど……それなら初心者でも気軽に楽しめるということね。最近人気な理由も理解出来るわ」
「もしかして笹子さん、キャンプしたいんですか？」

　今度はこちらが半眼になる番だった。
　流行りものに左右されるというより、未知の分野への興味だろうが。それでも、アウトドア向きとはお世辞にも言えない上司がキャンプに興味を示したことで、何となく今後の展開に感づいてしまったのだ。

「ほら……それこそ最近なんか、そういうのって流行ってるじゃない？　ソロでキャンプとか、グランピングとか……ちょっと、ちょっとだけよ。ちょっとだけ興味がないこともないのよ」
「でも危険ですよ。キャンプ場に女性が一人なんて……」
「テントには鍵もないものね」
「テントなんて布切れ、鍵があってもカマイタチで一発ですよ」
「その警告の汎用性の低さ、なんとかならない？」
「古来より山は神域ですからね。不思議なことも起こるというもの」
「テントで一晩過ごす気はないわよ。寝袋で眠るなんて考えたくもない」
「なるほど。つまりこういうわけですね。バーベキューがしたい、と」
「……つまりそういうわけになっちゃうのかしら？」
「ええ、まあ。グランピングはキャンプのいいとこどり、そのグランピングのいいとこを取れば……外で肉とか焼いて食うってことになりませんか？」
「……低いハードルから挑戦するのは全く合理的よね」
「そうなると移動も削りたいですね。調理器具と食材積んだら結構馬鹿になりませんし」
「待って待って。貴方も参加するの？」

　面食らったような調子で、上司が手を掲げて制止してくるが。こちらも面食らった調子で話を続ける。

「そういう伏線だったのかと……笹子さんが一人でアウトドアを楽しめるというのであれば話は別ですが」
「最近随分と強引になってきたわよね。グイグイくるタイプって、正直あんまり好ましくないのだけれど」
「そんなあ……でも大丈夫。僕は土産話だけ貰えれば満足ですから」
「……分かった、分かったわよ。確かに言う通りよ。一人でやるなら焼肉屋でも同じだもの……そうね。少し早めの暑気払いってことにしましょうか」
「え、いいんですか！？」
「さっきの冷静な反応はどこ行ったのよ」
「アレはブラフです。では次の日曜、待ち合わせはここにしましょう。買い出しは当日で、場所に関しては任せてください。僕に心当たりがあります」
「そう自信満々にされるのも、ちょっと不安を感じるところではあるのよね……」




「それで、買い物も済んだわけだけれど」
「ふう。いい風、いい天気ですね。ほら、リュウジン湖が綺麗ですよ」

　次の日曜日、バーベキュー当日の事である。時刻は昼前、天気は快晴。肉を焼いて食べるにはもってこいだった。

「本当に大丈夫なの？　こんなところで火を焚いても」
「大丈夫、任せてといてください。実は僕、ここの大家さんに顔が利くんです。快く屋上も貸してくれましたよ」
「やっぱり……」
「どうするの……器具とか、テントとか。準備してないわよ」
「それも大家さんに頼んだら貸してくれました。ジーダブリューにビービーキューに行った話を聞いて、ピンと来たんですが」
「そういえばGWにお孫さんたちとBBQしたって言ってたわね……」

　屋上である。彼らにとって屋上と言えば、それは職場の入った雑居ビルたる第三湖東ビルの屋上の事である。かつて経済が高度に成長していた時代のビルということもあり、冷却塔などの設備がないため、それなりに広く、屋上の設備も充実している。当時はここで入居者同士の交流などもあったらしいが、今となっては大家が趣味の家庭菜園に足を運ぶくらいが精々だった。

「なんか……既視感があるわね」
「今日日珍しいちゃんとした屋上ですからね。菜園があって、水道があって、おまけに丈夫で立地もいい。便利なもんです」
「立地の悪い屋上ってのも無いとは思うけれど……そういえば、去年はここでプールやってたわね、貴方」
「ええ。大家さんには助けて貰ってばかりですよ……見てください、これ。この一画は僕の菜園なんです。貸してもらいました」
「最近ちょくちょく屋上に行くと思ったら、そんなことまでやってたの」
「取れたてのプチトマトが取れたらご馳走しますね」
「……期待しておくわ」

　柵や塔屋に紐を括る。日よけのタープの設営はすぐに終わった。
　周囲に高いビルも無いので眺めも良く、行楽地と違って他の客もいない。喧騒を離れ、日常から隔絶された空間に二人と言えば聞こえは良いが、そんな空気を味わう暇もなくバーベキューコンロの扱いに手を焼いているため、彼としてはそれどころではなかった。うちわをパタパタさせる上司の隣で、火吹き棒代わりの塩ビパイプで一心不乱に風を送り続ける。

「炭、全然燃えないわよ」
「僕の肺活量もいい加減限界が近いです」
「うーん……何か、何か……あれ、これってブロワーじゃない？」
「ブロワーですね……あるじゃん！　いいのが！！」

　炭さえ燃えればあとは肉を焼くだけである。食材の下準備は既に整っていた──というか整った食材を買ってきたので、既に串打ちされた肉と野菜を網の上に並べてゆく。煙を浴びて涙目になりつつ、加減を見ながら上下を返していると、徐々に香りが立ち込めてくる。外で肉を焼く醍醐味の一つ、炭の香りに混じった香ばしい脂の匂いが鼻孔をくすぐる。

「やっぱり外かつ炭で焼いて食べる肉は美味しいですね」
「そうねえ。やっぱりお日様の下で食べると違うわね」
「これでビールをキューっとやれれば最高なんですけどね。今日は車なのでジンジャエールを代わりにいただいております」
「……お酒、飲めないんじゃなかった？」
「ええ。ビールとか死んでも飲みたくないですよ」
「どうしてそう平然とした顔で嘘がつけるのかしら」
「あ、運転手は僕ですから、笹子さんは飲んでもいいですよ。一階で売ってます」
「そう？　じゃあお言葉に甘えて……」

　名案とばかりに頷くと、何やら笑みを浮かべつつ、上司がクーラーボックスを探り出す。
　彼女の酒の弱さは身に染みている。ウーロンハイ一杯で泥酔した彼女を介抱し、タクシーに押し込んだことは記憶に新しい。ほんの軽口のつもりだったが、まさか本当に飲むつもりなのか──

「え、笹子さん？　笹子さん？？」

　取り出したのは缶だった。
　キンキンに冷えた、缶入りの──ただのウーロン茶。慌てふためく彼を横目に、上司は満足気に笑っていた。

「冗談よ。私が飲めないの知ってるでしょ」
「ええ……それでもたまには飲みたい時がだってあるって話を聞いたことがありますからね。てっきりそういう気分だったのかと」
「流石に同じ醜態は晒せないわよ……あ、でも弱いだけで嫌いってわけではないのよ。一応言っておくけれど」
「そうですか。そうですかとしか言えないんですが」
「それにしても……ちょっと楽しいわね。平然とした顔で嘘つくのって」
「勘弁してくださいよ。びっくりしたじゃないですか」
「びっくりさせたくてやってるんだもの。それは仕方のないことよ」

　上司に茶目っ気があることは前々から（プールで冷水を浴びせられた時のように）知っていた。彼女の本物の笑顔が拝めるのなら、普段と立場が逆転するのもそう悪くない。ましてや今日は二人きりだ。
　ジンジャーエールが喉に染みる。雲のない青空が二人を包む。夏はもう、すぐそばだ──




　冷静であることは部外者の特権だ。どんな問題に直面しても、利害関係の及ばない者だけが冷静でいられる。
　ワールドスワップに対して冷静でいられるのはそのせいだ。アダムス──馬鹿げたゲームの胴元の説明が正しいとは限らないと、疑う余裕すらある。勝利の代償に取り戻せる穏やかな日常を持ち合わせていないから、ルールを信じる必要がない。信じざるを得ないイバラシティの住民とはそこが違う。元通りの暮らしを取り戻すという意味では、意志は共通しているが。
　向こうでの生活も悪くない。上司とのバーベキューは最高だった。季節の行事を共に過ごし、仲を深める生活に不満はないが、彼にとってそれは本題ではない。どれほど満ち足りた日々であっても、それは偽りでしかない。部外者には、本物の生活は味わえない。
　当事者なのに冷静に見えるなら、それは裏で何かと繋がっているか、あるいは無理しているかだ。彼は無理もしていない。裏でも繋がっていない──結局のところ、自分たちは部外者なのだ。

ENo.831 Dr.笹子 とのやりとり

ItemNo.29 バラのくんせいにく を使用しました！
　魔香のため、体調は回復しなかった。
　今回の全戦闘において 強撃10 が発揮されます。
　今回の結果でのスキル熟練度が伸びやすくなった！

付加LV を 14 DOWN。（LV83⇒69、+14CP、-14FP）

合成LV を 19 UP！（LV80⇒99、-19CP）

ItemNo.21 すごい羽 に ItemNo.22 永久雪 を合成実験し、滑々なクーポン券 に変化することが判明しました！
　⇒ 滑々なクーポン券／素材：強さ55／［武器］追風50(LV95)［防具］滑々50(LV95)［装飾］幸運50(LV90)

麺屋の龍人(1595) の持つ ItemNo.41 すごい羽 に ItemNo.42 強靭な皮 を合成し、滑々な変な本 に変化させました！
　⇒ Which,Yes or No?！［ 2 2 3 = 7 ］不発！

イデオローグ(474) の持つ ItemNo.21 絶えぬ火光Ⅱ に ItemNo.31 不思議な粉 を付加しました！
　⇒ 気づきアトリエ修練！［ 6 4 5 = 15 ］通常付加
　⇒ 特質強化！効果3のLVが11増加！

士円(1230) とカードを交換しました！

フィンタンメン （フィンタン）


ファイアプレデター を研究しました！（深度0⇒1）
ブラッドサッカー を研究しました！（深度0⇒1）
ステイクオール を研究しました！（深度0⇒1）

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

偽黒初(77) は 天青石 を入手！
Dr.笹子(831) は 天青石 を入手！
麺屋の龍人(1595) は 鱗鉄鉱+1 を入手！
麺屋の龍人(1595) は 欠けた刃 を入手！
Dr.笹子(831) は 立派な皮 を入手！
麺屋の龍人(1595) は 金の光焔 を入手！
Dr.笹子(831) は 金の光焔 を入手！

ツクナミ区 P-13（森林）に移動！（体調16⇒15）
ツクナミ区 Q-13（森林）に移動！（体調15⇒14）
ツクナミ区 R-13（道路）に移動！（体調14⇒13）

MISSION!!
ツクナミ区 R-13：オオトラ が発生！
　　 - 偽黒初(77) が経由した ツクナミ区 R-13：オオトラ
　　 - Dr.笹子(831) が経由した ツクナミ区 R-13：オオトラ
　　 - 麺屋の龍人(1595) が経由した ツクナミ区 R-13：オオトラ

［817 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［442 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［479 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［200 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［408 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［327 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［265 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［192 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［111 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［145 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［145 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［304 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［41 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［208 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［92 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［104 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［96 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［46 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［80 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢
［100 / 100］ ―― 《屋台》更なる加護
［62 / 100］ ―― 《苺畑》不安定性
［9 / 100］ ―― 《荒波》強き壁
［100 / 100］ ―― 《小集落》猛襲
［24 / 100］ ―― 《落書き壁》リアクト
［45 / 100］ ―― 《変な像》揺らぎ
［2 / 100］ ―― 《白い渦》不幸
［88 / 100］ ―― 《黒い渦》不運



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

ザザッ――

　








少女がつぶやく。

　

　

　





雑音で声がかき消える。

　

　

　





　

　

　




　

　

　

チャットが閉じられる――

ホルモン焼きのお店、オオトラ。

明かりの灯るお店、香ばしい良い匂いも漂ってくる。

　





店から男が出てくる。

　

こちらを睨みつける･･･




　






（初発生のイベント戦：異能FP+5！生産FP+5！）