［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

【side：枢木 ■■】





路地を駆け抜け、いくつもの角を曲がり駆け抜ける。
枢木家に居た頃にはこんな風に撒いたり追いかけたりしていたなぁなんて妙な懐かしさを抱きつつ、
速度を緩まる事無く、且つ後ろを確認しないままに男は細い道を走り続けていた。

後方からは、忙しない足音が届いてくる。
同じところをぐるりぐるり、似た様な角を一体幾つ曲がった事だろう。
そうして追っ手の体力を徐々に徐々に削っていく。
身体にぶつかる風は冷え込んでいるが、この条件に関してはお互い様だ。



（さて、と……）


とは言ったものの、である。

自分よりも若手だとは言っても、枢木の血筋である事に代わりはない。
己と同じ教えを学び、経験を積んできた事であろう。
同様に、同じ血が流れているのであれば自分と同じ異能の使い手でもある訳で。


そんじょそこらの人間と比べれば、手練である事に代わりはないのだ。

いつまでもこんな鬼ごっこ紛いの事を続けていても、埒があかない。




だから――








「ふぅ……、」





後三つ、曲がり角を曲がったところでこちらからも動く。






一つめ、




二つめ、





……三つめ。


――曲がってみれば、都合良くもそこは入り組んだ奥の奥。





建物と建物の間ですっかり日の光を遮断されてしまっているのを良い事に、
男は勢いを殺さぬままに今度は壁を蹴り上げた。
軽い身のこなしでたん、たんと向かいの壁を蹴っては上がり、上がり、
そうして無機質な屋上へと辿り着く。


そして一つ呼吸を挟むより先、異能を発動して少しばかり“己を軽く”した。


なんて事無い、実家に居た頃には幾度となく行った手段だ。
屋上の返しとなる出っ張りに足がつくのはものの数秒の事。



「…………」



更に呼吸を殺し、じっと下方の様子を窺う事十数秒。


対象の姿が足下に映りこんだから。





音も無く、手を離し、





――躊躇いも無く、飛び降りて。







「ッぐ、――！」





見失った事で戸惑ったその一瞬の隙を狙い、
追っ手の背後に下りたっては一気に背中から押し倒しにかかった。


彼は咄嗟に受け身を取った様だが、体重をかけて押し込まれては動く事も侭ならない様子。
抵抗かもがく為か、持ち上がった腕を捻り上げては背中に押し付ければ
無理矢理無理な方向に曲げているせいかぎりぎりという男が聞こえてきそうだとも思ったが、
ここまで追いかけっこを続けておいてそう易々と楽にしてやるつもりも無く。

膝に更に力を込めて押え付けてから、手を伸ばしフードを引き剥がした。



「――ああ、なんだ。お前」

「…………」


見覚えのある顔だ。

おそらく任務中なのであろう。
自分達と同じ様に彼の名前が記憶の海から浮上する事は無かったが。



「その両目許の泣き黒子……冴さんとこの三男坊。
　驚いた、ちょっと前まで俺の膝くらいの大きさだったのに」

「一体いつの話をしてるんだ」


ムキになったような声音が帰ってくるが、やはり自分の知っている人物のそれとかけ離れている。
身長の話をしたからか、年相応に反応を示す様子はまだまだ甘ちゃんだなぁなんて思いつつ、
決して馬鹿にしている訳ではなく、驚いたのは本当の事だ。



自分が実家から離れてそれだけの時が経ったのか、なんてしみじみしてしまう。


けれど、それもそうだと同時に納得する。

自分の中では子供だと記憶していた甥ですらあれだけ成長をしていたのだから、
他の身内にだって大きな変化が見られても何もおかしくない筈なのだ。




――なんて、思い出に浸るのはこの位にしておこう。


己の下で身動きが取れなくなっている彼がこちらの隙を窺っている事位、分かっている。





「……そんじゃ、本題。
　俺をつけてきた理由は？ 俺を捜し出して仕留める様に命令されたか？」


「…………」



応えない。
当然だろう。

若くとも、枢木の人間が、裏切り者にそう易々と口を割る訳が無いのだ。



けれど――こちらだって、無言ですかそうですかと受け入れられる状況下では決して無い。

故に、拘束する腕にわざと今以上に力を込める。
途端に眼下で苦悶の表情を浮かべる青年を、冷えた浅葱が見下ろした。



「自分の立場を理解しろ。
　お前は俺の問いに応えるだけで良いんだ」

「……っ、裏切り者がどの口を……！」


「教えを尊重するのは大事だけど利口とは言えないぜ。
　もっと柔軟性を身につけろ。俺はお前を手にかけたくない」


「――――」



青年は、口を閉ざしてしまった。

……が、
睨み上げていた視線が外される間際、そこに揺らぎが生じていたのを見過ごさない。


良くも悪くも、若い。

任務の重要さと、状況の打破と、それを天秤に吊るす経験が圧倒的に足りていないのだろう。
迂闊に命を投げ出せない事も知っている。
けれどそれに屈する訳には行かないという意志も持ち合わせている。


男にとってはそれは付け入る隙でもあり、同時に――



「…………」



――今。
一瞬、彼の姿と昔の甥の姿が重なった様な気がして。目を見張る。


　　　　　・・・・
……今のは、良くない。







「――、……俺、は……」



改めて意識を向け直したのと、彼が堅い口を薄く開いてくれたのと。
果たしてどちらが速かっただろうか。


見下ろす先の青年は、依然こちらを見上げようとはしない。
瞳には困惑と後悔と諦観と、複雑な感情がない交ぜになった色を滲ませながら。
それでも、男の要望に応えてくれた。


「貴方を見つけたのは、本当に、偶然で……。
　別の任務の帰りだった。相手方に悟られない様に遠回りのルートを選んで、この街に数泊するだけのつもりで。
　港から適当に歩いて宿を探していたところで、“俺達と同じ髪色”を見つけて……」


「……それが、偶然にも俺だったと」



頷く代わり、青年は一つゆっくり瞬きを挟む。


「貴方は……既に、枢木の家の中では死んだ人間として扱われている。
　けど、ほんの数年前までは、任務で外に赴く度についでとばかりに言い聞かされてきた。

　『“裏切り者”を見つける事があれば、即刻捕縛しろ』――って」




ぽつりぽつり、淡々と。零れる様に語る青年を見下ろしながら、
気付けば深く溜息を零してしまっていた。


おおよその予想はついていたのだ。

ただ、実際に聞かされた“それ”が予想にぴったりと嵌ってしまう
――昔から変わらない枢木家の教えの通りで、
何とも言えない重苦しさが自分の中に蓄積された様で、吐き出したくなってしまっただけの事。


「……そ。変わらないな、枢木は」

「…………」


呆れた様子で呟けば、衣擦れの音と共に青年がそろりと顔を上げていた。
……不思議そうにこちらの様子を窺っている、とも取れる所作。


きっと、男が呆れている意味が分からないのだろう。


それが当然の世界で育っている、彼には。




「いいや、何でもない。……他には？」

「他？」



訝し気に眉を寄せられてしまう。

先程よりも距離の近さの感じられる、素の対応。
裏切り者であると言い聞かされているだろうにその様な振る舞いを見せてしまうのは、
些か不用心にも思えるが。結局は同じ一族だからか、一応は顔見知りだからか。


ともあれ。

……他は無いと見て、良い様にも思えるが如何だろう。




もし、他に何も無いのなら。

対照が自分“だけ”であるのなら。



それに越した事は無いのだが。




「……他は他。あんたが持ち帰ろうとしてる仕事の内容とか」


「貴方には関係ないだろ」


こちらに関しては、話す訳がないと突っぱねられてしまった。

当然と言えば当然の反応だ。今までが彼の“気の緩み”であったに過ぎないのだ。



まあ、それ以上を知らぬ者にそれ以上を求めるつもりは端から無い。

「それもそうだ」と同意を示してやってから、背に回していた腕の拘束を解いてやった。



ずっと同じ位置で、力を込めて押し付けていたのだ。
後ろに回った腕を元に戻すだけでも痛みが走るのだろう。
それを前へ持っていきながら何とか立ち上がろうとする青年の顔には、
苦々しいそれが垣間見えていた。



「…………」




漸く前にやってきた細い腕を、倒れ込んだ体を起こそうとコンクリートにつく。


敢えて痛みを伴う様に固定していたのもあるからだろう。動きは低速で、痛々しく重々しい。



立ち上がるまでに、随分な時間をかけている。










拘束を解いた男が、懐の“それ”を構えるのに十分な時間を、与えてくれている。












「こんな風に言うにも変だけど……

　この街であんたに会えて良かったよ」













その男の声に、青年が振り返るよりも速い。




態勢を整える時間なんて、与えない。









もう、十分。

















枢木家の現状も。


俺に対する考えも。




現在欲しい情報は、手に入れた。













だから、




















「お務め、ご苦労さん」


　
　

十九号(153) から 歪んだ指輪 を手渡しされました。

十九号(153) に ItemNo.7 鉄骨 を手渡ししました。

ItemNo.40 白檀の塗香 を使用しました！
　魔香のため、体調は回復しなかった。
　今回の全戦闘において 回復40 が発揮されます。
　今回の結果でのスキル熟練度が伸びやすくなった！

守護者の姿が消え去った――

　

　

六角形の柱から天に向け、赤色の光柱が立つ。

どうやら次元タクシーで行けるようになったようだ。

ミツ(205) から 200 PS 受け取りました。

赤毛の人狼(90) から 角閃石 を受け取りました。

サナエ(536) に ItemNo.14 ふさふさ を送付しました。

ものすごい木材（1500 PS）を購入しました。
朝凪の宝石（800 PS）を購入しました。

百薬LV を 5 DOWN。（LV35⇒30、+5CP、-5FP）
領域LV を 5 DOWN。（LV35⇒30、+5CP、-5FP）

自然LV を 15 UP！（LV15⇒30、-15CP）
料理LV を 5 UP！（LV62⇒67、-5CP）

ケムルス(719) の持つ ItemNo.13 月夜茸 から聖衣『聖なるコート』を作製しました！

絶望の先触(1058) とカードを交換しました！

未だ死に非ず （ミスティックパウダー）


二刀流 を研究しました！（深度0⇒1）
二刀流 を研究しました！（深度1⇒2）
二刀流 を研究しました！（深度2⇒3）

グランドクラッシャー を習得！
珊瑚樹 を習得！
クリスタルウォール を習得！
草根木皮 を習得！
グランドレイジ を習得！
ディープフォレスト を習得！
クラウト を習得！
ダイアモンド を習得！
地特性回復 を習得！
グランドウォール を習得！
地霊力 を習得！
スティクス を習得！
天香桂花 を習得！
ミリキアレギア を習得！
金剛不壊 を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

枢木(296) は 書類 を入手！
十九号(153) は 生命の宝石 を入手！
枢木(296) は 立派な羽 を入手！
十九号(153) は 立派な羽 を入手！

特に移動せずその場に留まることにしました。
体調が全回復しました！

『ミナト区 I-12：チェックポイント《図書館》』へ採集に向かうことにしました！
　　 - 十九号(153) の選択は ミナト区 I-12：チェックポイント《図書館》

MISSION!!
タニモリ区 C-11：チェックポイント《屋台》 を選択！
　　 - 十九号(153) の選択は タニモリ区 C-11：チェックポイント《屋台》

［817 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［442 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［479 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［200 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［408 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［327 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［265 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［192 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［111 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［145 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［145 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［304 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［41 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［208 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［92 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［104 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［96 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［46 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［80 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢
［100 / 100］ ―― 《屋台》更なる加護
［62 / 100］ ―― 《苺畑》不安定性
［9 / 100］ ―― 《荒波》強き壁
［100 / 100］ ―― 《小集落》猛襲
［24 / 100］ ―― 《落書き壁》リアクト
［45 / 100］ ―― 《変な像》揺らぎ
［2 / 100］ ―― 《白い渦》不幸
［88 / 100］ ―― 《黒い渦》不運



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

ザザッ――

　








少女がつぶやく。

　

　

　





雑音で声がかき消える。

　

　

　





　

　

　




　

　

　

チャットが閉じられる――

チェックポイント。

仄かな光に包まれた六角形の柱が立っている。

　

･･･柱から滲み出るように、何かが生み出される。



　




それは言葉を発すると共に襲いかかる！