［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

【Side：枢木 ■■】




迎えた週末は、ひんやりとしつつもからっとした快晴だった。

事務所の通り沿いの窓から外へと視線を向けてみれば、平日と比べて車の通りも多い。
時折眼下から届くはしゃぐ声音は子供のものだろうか。
この天気で、週末。天気があまり良くなかったここ数日があったからこそ、
今日という日はと狙って出かけるものもきっと少なくないのだろう。

それだけ、お出かけ日和な今日という日。


自分はと言えば、外出自粛を告げられ休息をとる様に言い渡されていたのだった。

心配性な、甥の言葉によって。





「はぁ、暇……」


歓喜の為開け放った窓から入ってくる冷えた空気を受け止めながら、溜息を零す。

休日なのに事務所の方へ足を運んだのは、単なる気まぐれだ。
最初は居住区のリビングで椅子に腰掛けテレビを眺めていたのだが、
然程興味も生じない、流れてくる声は男の耳に入らないままに通過していくばかり。
いつもならば適当にでも情報を仕入れるものだが、
半ば強制的な休日だからどうにもその気が起きてくれないもので。
このままこうしていると意味も無くただただ電力と時間だけが消費されて無駄だと
ある種の危惧が働いて、男が腰を浮かす事になったのがつい先程。


回転式の事務椅子。
背凭れに身を預ければぎぃと音が鳴り、男の背を受け止めてくれる。
今となってはすっかりと身に馴染んだ椅子となってくれていた。

暫し深く身を沈めたり浮かせたりと、ゆらゆらと揺れながら空を見上げていたところ。


「お、壱緒」


奥の部屋からやってきたのだろう、事務机にひょいと飛び上がってきた猫の姿。

甥の異能により特殊な身体になってしまった猫の顔には、瞳も口も無くなってしまったが。
それでも、長い付き合いからか彼女の思考は自分に取って分かり易い方であろう。
そして、それがまるで心配してやってきてくれたかの様なしぐさにも映り、男の口元も和らいだ。


「遊びにきてくれたのか？
　それとも……俺の見張りでも任された？」

上向いた尾がゆらゆらと左右に揺れる様を視界に映しつつ、
掌を差し出してやれば、猫はそこに頭を押し付ける様にぐりと擦り寄ってくれる。

触れた部分から伝わるほんのりとした温もりが心地よかった。


「…………」


不思議なあたたかさだ。


彼女は一度、相方の任務に連れ添った先で命を落としてしまっている。
けれど、こうして異能の力を用いて現世に留められている彼女の身体からは、
不思議と生きている頃と似たぬくもりが宿っていたのだった。



――もふり。



そんな考え事をしながら――否、その実頭の中は空っぽだったのかもしれない。
一つ、二つその頭を撫でた次の瞬間には、


眼下に丸く収まる猫の背に己の顔を埋めていた。


瞬間、猫は身体がびくっと震わせ身を強張らせる。

1ミリたりとも予想していなかっただろうに違いない。
視界は真っ暗で見えないが、先程機嫌良さげに揺れていた尾は緊張から固まってる事だろう。


とはいえ、男も無意識のうちにそうしてしまったのだから仕方ない。

考え事とは全くもって関係のない行為。
疲れた身体を休める様に背凭れに体重をかける時の様な、
液晶画面の見すぎで疲れた目を休ませる為に瞳をそっと閉じる様な。
きっと、そんな深い意味の無いそれらの行動を起こす時の心境と、同じ様なもの。


……とはいえ、
する側は兎も角、突然された側は堪ったものではないだろう。

まるでそれを表すかの様に、一つ大きくぶるりと震えた猫の背。
無言の声が聞こえた様な気がして男が顔を上げて見れば、
その隙を見計らったかの様に猫はするりと隙間を抜けて机から飛び降りてしまった。


『…………』

「……ごめんって」


床へと降り立った壱緒が、じっと男を見上げる。
無言の抗議。彼女が言わんとしている事を察した男は、
流石に自分勝手な行動だったろうと自覚して、一つ謝罪を述べたのだった。


「温かかったから、つい」

『…………』


たし、たし。
幾度か訴える様に尾を床に打っていた猫だったけれど、
男が申し訳無さそうに両手を合わせて頭を下げれば、仕方無いと許してくれた様だった。

くるりと目の前で踵を返し、尾を揺らしてはもと来た扉の方へ戻って言ってしまう。
流石に、謝罪してすぐに無かった事にして甘え直す事は叶わなくて当然だろう。
それよりも……立ち去る直前に向けられた視線が、何とも言えない呆れた色を宿していた様に映ったのだが
それは男の気のせいであろうか。どちらかと言えばその事の方が妙に気になって映ってしまっていた。


（段々とあいつに似てきたな……）

こんな事を言うと、“顔が無い猫相手に何を言ってるんだ”と重ねて呆れられてしまいそうだが、
ささやかな仕草や訴えんとしている事から、不思議とそう感じ取れてしまうのだから仕方が無い。



「ふぅ……」


そうして、再び。一人。
吐き出した溜息が一人きりの室内に木霊し、嫌でもそう認識せざるを得ない空間を作り上げる。


手の平には、先程触れていた温もりが残っている。


生きているもののあたたかさだ。



あの日触れたものとは、違う――













人通りの少ない、路地裏の更に裏の、狭く入り組んだその先に。

隙間からのぞく青空とはあまりにかけ離れた噎せ返る様な赤。

コンクリートを鈍く染めた池の中。



人のかたちをした“それ”が、転がっていた。




鮮明に思い出せる程にまだ然程遠くない時期の話。

あたたかさを失った肌の感触を思い起こす度、治りかけの傷が疼く錯覚を起こす。





彼に全てを告白して――なんて言い方をしておいて何なのだが。





――甥には、最後まで話せなかった事があった。













居住区画から数駅も離れたウシ区での一仕事を終えた、帰り道。


タニモリよりかは落ち着いた区画であるウシ区でも、昼が近づいてくるともなれば昼食に向かったり
一仕事区切りを付けた社会人等が見受けられる様になり、人通りが次第に増え始める頃合い。

それは自身も例外ではなく、
雑談二割相談三割といった商談を思い返し頭の中で内容を整理しながら歩を進めていたのだが。


そんな中。


ごくごく、自然に。けれども、明らかに。

人通りに紛れ、溶け込み。けれども確かな眼差しに射抜かれる心地。



自分の後をつけてきている人物がいる事に、男は直ぐさま気がついた。



「…………」


一つ、吐息。
気付いたところで、歩く速度を急に変えたりはしない。
けれども、何もしないつもりは無い。自分の立場は男は一番よく自覚しているのだ。

さり気なく腕時計の時間を確認する振りをして、磨いた鏡面で一瞬後方を映し込み確認する。
きらりと一度太陽の光を己の方に向け逃がしてやる事で、悟られない様にした後に。

一瞬、映った人物の影を男は脳裏に刻み込んだ。



当然の事ながら、分かり易く不審者といった風貌ではない。

己よりも少しばかり背の低い、おそらく男性。
一見カジュアルな服装、偶々今日が休暇であるかの様な様子に映らなくはない。

しかし、不自然に感じられない程度にはキャップを眼前に傾け被っている。
仮に振り返ったところでその風貌を把握する事は難しいだろう。
両の手は薄手のジャケットのポケットに突っ込まれてしまっている為に素手かどうかも分からない。
が、ささやかながらに片方のポケットが膨らんでいる様にも映る。
おそらく何かを持っているか仕掛けていると見て間違いはなさそうだ。


（――黒、）


そう、あっさりと結論付ける。

数年のブランクがあるとは言え、伊達に二十数年そちらの世界に生きていた訳ではない。


そんな自分にそうも思わせるとなれば、下っ端か。単なる偵察担当の末端か。
これがもし自分よりも実力が上の者ならば、こんな風に悟らせる間もなく
今頃あっという間に距離を詰められていたに違いないだろう。


（……まだ“あいつ”の方が上手い事尾行するな）


全く、甘く見られたものである。




（大きな手柄を持って帰る事ができるっつー夢でも見ちまったってところか……）







身の程を弁えて、目撃した事実を、

“死んだと思われていた人間の生存情報”だけでも持ち帰りさえすりゃあ、


――それだけでも十分な手柄だったろうに。







片手でスマホを持ち上げて、慣れた手つきで地図アプリを起動する。
周囲の地理を一瞥し、わざとらしく周囲をきょろきょろと見渡して。

さも、この辺りの地形には不慣れと言った様子を見せながら、目に入った左手の路地に体を滑らせた。


（便利な世の中になったモンだ）

そんな事を考えられる程度には、まだまだ男には余裕がある。



とはいえ、大通りから一つ曲がっただけ故、まだ通行人や人の目がちらほらと見受けられるこの通り。
背後の人物も、予想通りについて来こそしているが、
歩いていても、一度曲がる方向が同じだったと言うだけでは、まだ問い詰めるに至るには足りていない。

適当にはぐらかされてしまってはそこまでだ。
やるからには好機は一度、失敗は許されないものとする。


再びスマホへと視線を落とす。


画面には依然この周辺の地図が映し出されているが、男の意識は一欠片もそちらに注がれてはいなかった。
地形は、先の一度目で頭に刻み込んだ。本来ならばもう映す必要だって無い。



相手の油断を誘う為だけの、演技。




――少しばかり、歩く速度を速めてみた。




（……ふむ、）



流石に慌てて追ってきている様な様子は無い。


ここで自分に合わせて速度を上げている様な分かり易い動きをする様な輩が
今の枢木のレベルだったらどうしようかとも思ったが、どうやらそんな事は無い様子。


……“終わらせたい”という感情を抱いておきながら、
何故こんな風に思ったのかは自分でもよく分からないが。

兎も角、こちらも下っ端だからと舐めてかからない方が賢明だと判断出来ただけ良しとしよう。



そう結論を下した丁度そのタイミングで、直線だった通路は緩やかなカーブへとさしかかる。
この先を道沿いに進んだ先、更に入り組んだ路地が並んでいるのだ。


男は、そこを目的地としていた。






カーブの内側に沿う様に歩を進めていき、建物と建物の間に流れていく様に、
なるべく速い段階で後ろの人物との距離を開けようと試みれば――



（きたきた、）


長らく垂らしていた釣り糸の先に、漸く魚がかかった様な感触。男の口端にも薄く笑みが乗る。


足早に歩いた事に寄り先程よりも距離が空いていたと言う油断もあったのだろう。

姿が完全に見えなくなる、その直前。
これまでの歩幅よりも大きく一歩を踏み込んだ姿を確と捉えたのだ。




これできっと、ほぼほぼ間違いは無いだろう。

徐にスマホを後ろのポケットに仕舞い込み、
背後の影の視界に自分が映るよりも先、一番手前の右、雑居ビルの間の更に細い路地へと潜り込む。



いよいよ、明らかな裏路地。

人の気は無い。



今度は失速せず、加速する。




風を切る音を耳に、大きく一歩を踏み込んで、駆け出して。



今度は三つ程先の曲がり角に進路を変更した。





コンクリートの間に、忙しない足音が木霊し近づいてくる。

きっと今頃見失ったと焦っているに違いない。
目深い帽子の先の表情を思い浮かべ、薄くせせら笑えば男もスピードを上げた。


（感情とか色々もうちっと抑えた方が良いと思うぞ、と）


慌ただしい足音に追われる側だというのに、どこか他人事の様にすら感じられてしまう。
こんな事、彼に話せばきっとまた怒られてしまう事だろう。



先を行く男は、吐息も、靴音も。


何の音も纏う事無く、路地裏の奥の奥へと駆けていった。

ENo.153 十九号 とのやりとり


ENo.947 もも とのやりとり

ItemNo.13 毛 を破棄しました。
ItemNo.18 不思議な雫 を破棄しました。
ItemNo.16 藍玉の小刀 を破棄しました。
ItemNo.17 残月の棒手裏剣 を破棄しました。

十九号(153) に ItemNo.7 禊萩 を手渡ししました。

ItemNo.40 白檀の塗香 を使用しました！
　魔香のため、体調は回復しなかった。
　今回の全戦闘において 回復40 が発揮されます。
　今回の結果でのスキル熟練度が伸びやすくなった！

幻術LV を 4 DOWN。（LV40⇒36、+4CP、-4FP）
解析LV を 6 DOWN。（LV6⇒0、+6CP、-6FP）

自然LV を 15 UP！（LV0⇒15、-15CP）
料理LV を 5 UP！（LV57⇒62、-5CP）

十九号(153) の持つ ItemNo.31 ホイール から聖衣『仮』を作製しました！
ItemNo.3 水仙 から防具『夕染めのミサンガ』を作製しました！
　⇒ 夕染めのミサンガ／防具：強さ436／［効果1］耐疫40 ［効果2］－ ［効果3］－


偽黒初(77) とカードを交換しました！

ヘカヘカヘカトンケイルケイル （ヘカトンケイル）


パナケア を研究しました！（深度0⇒1）
パナケア を研究しました！（深度1⇒2）
パナケア を研究しました！（深度2⇒3）

ストーンブラスト を習得！
リフレッシュ を習得！
アマゾナイト を習得！
ヒールハーブ を習得！
ノーマライズ を習得！
ブルーム を習得！
オートヒール を習得！
リリーフ を習得！
レジスト を習得！
ディスターバンス を習得！
地の祝福 を習得！
パワフルヒール を習得！
神威 を習得！
ハーバルメディスン を習得！
沙羅双樹 を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

十九号(153) は 歪んだ指輪 を入手！
枢木(296) は 鉄骨 を入手！
枢木(296) は 書類 を入手！
枢木(296) は ビーフ を入手！
十九号(153) は 書類 を入手！

十九号(153) に移動を委ねました。

アライ区 D-13（道路）に移動！（体調5⇒4）
アライ区 D-12（道路）に移動！（体調4⇒3）
アライ区 E-12（草原）に移動！（体調3⇒2）
アライ区 F-12（チェックポイント）に移動！（体調2⇒1）
チナミ区 D-2（ベースキャンプ）に戻りました！
体調が全回復しました！

『ミナト区 I-12：チェックポイント《図書館》』へ採集に向かうことにしました！
　　 - 十九号(153) の選択は ミナト区 I-12：チェックポイント《図書館》

MISSION!!
アライ区 F-12：チェックポイント《赤い灯火》 が発生！
　　 - 十九号(153) が経由した アライ区 F-12：チェックポイント《赤い灯火》
　　 - 枢木(296) が経由した アライ区 F-12：チェックポイント《赤い灯火》

［821 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［444 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［481 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［200 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［410 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［328 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［263 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［189 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［111 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［146 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［146 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［299 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［41 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［203 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［89 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［99 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［90 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［46 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［76 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢
［100 / 100］ ―― 《屋台》更なる加護
［56 / 100］ ―― 《苺畑》不安定性
［5 / 100］ ―― 《荒波》強き壁
［100 / 100］ ―― 《小集落》猛襲
［21 / 100］ ―― 《落書き壁》リアクト
［43 / 100］ ―― 《変な像》揺らぎ
［0 / 100］ ―― 《白い渦》不幸
［11 / 100］ ―― 《黒い渦》不運



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

Cross+Rose越しにどこかの様子を見ているエディアン。




　

　

　











いくつかの映像が映し出される。

　







　

不思議そうにするエディアンを見て、軽くため息をつく白南海。






　






　

　

　

チャットが閉じられる――

チェックポイント。

仄かな光に包まれた六角形の柱が立っている。

　

･･･柱から滲み出るように、何かが生み出される。



　




それは言葉を発すると共に襲いかかる！