［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

　学生の身分から離れて久しい大人にとって四月のメインイベントが花見であることは社会通念上相当であることはあえて言うまでもないだろう。凍てつく大気に閉ざされた大地から生命が芽生え木々たちの喜びを表すかのように咲き誇る色々な花の姿に、面倒な年度末の過酷な地獄を乗り越えた自分らの姿を重ねる。一説によれば、古くは宮仕えする役人たちも同じような心労を花見で晴らすのだ、と記した資料がいくつも発見されているという。まあ、嘘だが。

　とまあ、ここまでは同じだ。昨年もそうだった。
　年度末というシステムにより年末と年度末に分かたれた苦難は、何故か半分ではなく二倍の困難となって襲ってくる。普段は大した仕事もなければ重要な任務を任されることもほとんどない職場だが、この時期ばかりは妙に忙しいというのも皮肉なものである。大体は本社から押し付けられた雑務によるものだ。
　とまれ、慌ただしさと日常の変化の無さは相反しない。確かに業務は多忙でも、そこにある日常は昨年と同じものだった。
　何の変化も起こらない。当たり前の、退屈な日々。

「どうですか？　最近」

　声は上司のものではない。ということは、彼の言葉だ。考えるまでもない。
　職場には二人。いつものように、上司と彼の二人だけ。窓際で春の日差しを堪能するガジュマル君と上司の謎のペットのような緑色の生命体を除けば、執務室には二人だけの時間が流れていた。ロマンチックなものではない。単に二人が同じ空間で仕事をしているだけである。業務時間中であることは言うまでもない。

「……最近？　何が？」

　質問の意図が読み取れなかったのだろう。空耳とでも思ったのかもしれない。怪訝そうな声色で上司が尋ね返してくるまでの静寂は、いれたコーヒーに砂糖とミルクを混ぜ合わせるには十分な時間だった。
　本社の、あるいは取引先の、もしかするとどちらでもなく単に担当者の好みかもしれないが、とにかく二十日締めとの指定の仕事を終えたある日のことである。先日までの病的な仕事量から解放され、ようやく陽気を感じては春を受け入れる余裕が生まれたため、彼はいつもよりゆったりとした午後を過ごしていた。業務時間中であることは言うまでもない。

「あるじゃないですか。無いですか？　何か」
「……何が？？」

　一向に話が進まないことを煩わしく思ったのか、デスク越しに聞こえる声のトーンにほんのわずかな苛立ちが混じった。彼にとってはコーヒーブレイクでも、上司は仕事をしている。業務時間中であることは言うまでもない。

「話題性のある話題とかですよ。ほら、春じゃないですか。そういう感じの」
「迂遠すぎない？」
「人生には回り道も必要って、この間テレビで──」
「貴方はもうちょっと近道をした方がいいかもしれないわね」
「なるほど。手厳しいですね」
「……ふう。私も回り道させてもらおうかしら。大体、こんな仕事するために私はここに来たわけじゃないのよ……」
「笹子さんもコーヒーで良いですか？」
「ええ、いただくわ」

　彼女も休憩のタイミングを伺っていたのだろう。伸びをして深呼吸すると、カップに満ちた琥珀色のコーヒーを前に、頬杖をついて気だるげに座り込んだ。複雑な重心で成立している彼女の姿は、とてもリラックスできるような姿勢には見えなかったが。
　彼はというと、彼は彼なりにリラックスしていた。椅子にもたれかかり、カップをデスクに置いたまま、今は眼鏡を掃除している。レンズだけではなく、細やかな部分まで丁寧に汚れを取り除いていた。業務時間中であることは言うまでもない。

「しかし春と言えば出会いの季節ですね。どうですか、出会いとか」
「どうですか出会いとかと言われても……生憎と歓送迎会とは縁遠いのよね、この職場って」
「そうなんですよ。桜咲くとか別れとか、そういうのから離れて久しい日々。大人の日常には刺激がないんです」
「学生の頃の春って、本当に人生の節目だったわよね。友達とクラスが分かれるなんて大したことじゃないのに」
「僕は大丈夫でした。友達居なかったので」
「離れて久しいってどの口が言ったのよ」
「確かに別に刺激的ではなかったですね。家と学校の往復だけの生活で」
「部活とかやってなかったの？」
「実は演劇部に所属していた過去を持っていると言ったら信じますか？」
「何となく分かってきたわよ、貴方の嘘つくタイミング。これは嘘じゃなく真実」
「すぐ辞めちゃったんですけどね。なんかOBの態度がでかすぎてイライラしちゃって」
「あんまり人間関係とか得意ではない？」
「だから今の職場には満足しているんですよ。人も少ないし、上司の態度も大きくないし」
「それって褒め言葉かしら」
「僕が笹子さんに褒め言葉以外を囁いたことがありますか？」
「思いつくだけでも両手の指くらいはあるわね」
「それってつまり頭の痛い話ってことになりますね」
「そういう慣用句が存在すること自体は私も認めているけれども」
「そう、頭が痛いんですよ。こないだ医者に行ったら、偏頭痛だって言われて」
「話題転換も得意ではない？」
「それとなく、それとなく話題を持ってきたつもりなんですが、よく気づきましたね。いや違うのか。なるほど。正規のプランでは春の話から花粉の話を経て健康の話に持っていくつもりだったんですが手間が省けそうだなと思いまして」
「迂遠すぎる……」

　頬杖をやめ、上司が再び背筋を伸ばす。首を左右に捻る様からは、彼女の疲労が伺えた。ここはひとつ話題を変えて行きつけの鍼灸院の話でもしたものかと悩んでいると、意外にも彼女はそのまま話を広げる方向に決めたようだった。出会いと別れの話に比べ、心なしか楽しそうな様子である。

「偏頭痛の原因は？　職場のストレス？」
「いいええ。大したことでは。まあ季節とか気圧とかストレスとか、薬で解決するってお医者さんも言っていました」
「あー……あの美味しくない奴ね。水なしでも飲める」
「お、分かりますか。グルメですね」
「その相槌が正しいかどうかは後で検証するとして、実は私も最近ね。酷い時は週末家でぐったりしてることもあったのよ」
「笹子さんもですか？　僕も本当に辛い時は家でぐっすりと……今、大人の会話してるって実感が沸いてきました」
「偏頭痛の話で？」
「大人の会話ともなれば、健康の話題は避けては通れませんからね。尿酸値引っかかったとか、飯が急に入らなくなったとか」
「それってもっとご年配の方の……いや、やめておきましょう。歳の話に足を突っ込みかけてしまったわ。良くないことね」
「えーと、それで。出会いの話に戻るんですけども、笹子さん最近出会いとかってありましたか？」
「……いや、無いわよ。仮にあったとしても私の口から出なければ、貴方には関係のない話よね」
「そうですか…………」
「…………」
「難しいですね、鎌をかけるっていうのは」
「もしかして今の、鎌をかけようとしてたの？」
「大人の駆け引きが出来る大人になりてえな、って映画見て思ったんですけども、鎌のかけ方が分からなくて」
「下手すぎない？　いや、あんまり上手くても好ましくはないけれども……下手すぎない？」
「人間関係も話題転換も鎌のかけ方も下手な僕でも働ける職場と上司の存在に、今はとても感謝しています」
「でも、貴方の数少ない良い所よ。嘘はつくけどすぐばれる、基本的には真実を喋る……そして、鎌のかけ方が下手」
「なんか難しいですよ。腹芸みたいなのって根本的に向いてないというか。それやって何になるの、みたいに思えて」
「そうね。でも嫌いじゃないわよ。私としては」
「話題転換が下手でもですか？」
「そこは今後に期待ってところかしら……まあ、一年も同じ職場でやってきたのだから、流石に慣れたものよね。私としても」

　ひとまずはそこで終わりになった。互いのコーヒーが尽きたのをきっかけに、業務時間中であることを二人揃って思い出したためである。山積とまではいかないものの、今日中に片づけなければならない作業はまだ残っている。

　次に時間が出来たのは、帰り際のことだ。業務時間外であることは言うまでもない。几帳面にデスクを整頓する上司の隙をついて、彼は小さな箱を取り出した。冷蔵庫に冷やしておいたものだ。

「ところで、笹子さんには謝らなければならないことがございます」
「改まって言われると身構えちゃうわね。何、書類でもなくした？」
「それもあるんですが、いや嘘ですが、ホワイトデーが遅れてしまったことについてが主な報告となります」
「ああ……まあ、そう、ね。もう三月も終わりだものね……」
「すっかり春の陽気で……いや去年も遅くなりまして本当に申し訳がなく……」
「私の記憶が間違っていなければなんだけれど、去年のホワイトデーって、確か四月にやらなかったかしら？」
「それなんですが、聞いてください」
「聞いてるわよ」
「色々考えたんです。去年はお花見ハシゴしてハーバリウム。僕の中ではとても完成度の高い一日だったと自負しております」
「そうね。見事な伏線回収だったと感心した私の記憶が間違っていなければ、完成度は高かったわね」
「そうなんですよ。それで……ところで笹子さん、ハードル走って知ってます？」
「上げすぎたのね？」
「有体に言えばそうです。が、有体に言わなければ、そうではないとも言えますな」
「それで……今年は一体何をいただけるのかしら？」
「一応、見繕ってみました。今回はカタログギフトに逃げたりしないという、強い意志を持って」
「これは……チョコね。物凄い良い箱に入ってる。ごめんなさい、なんだか思ったよりこう、普通で。驚いてしまったわ。でも、ありがとう」
「前回は攻めたので今回は守りに入ってみました。バランスですね」
「貰い物に聞くはマナー違反だけれど、結構するんじゃないの？　箱に書いてある名前、私でも聞いたことあるくらい有名よ」
「ええ、まあ。月給の十パーセントくらいですか」
「え、そんなにするの、これ」
「え、そんなに貰ってるんですか、僕」
「知らないわよ。そういうところよ。私が今後に期待するのは」
「これに加えて、もう一つプランを考えてきました。こちらについては後日ご説明するとして……」
「後日？　今では駄目なの？」
「もうページが少ないですからね。これ以上はもう……」
「そういう強引な場面転換みたいな手口ってどこで仕入れてくるのか、いつかじっくり聞かせて貰いたいと思ってたのよね」
「ちなみにチョコって偏頭痛的にはあんまりよくないみたいですよ」
「そういうところなのよ」




　彼は記憶喪失だった。かつては確かにそこにあったものの全てを、今は完璧に失っている。偽黒初なる名前ですら、偽名の中からマシなものを選んだだけのものだ。
　新たな名と共に与えられたのは、茅芽研究室での新たな生活だった。失われた記憶は蘇りそうにない。徐々に増えていく新たな思い出が、彼の過去を消していく。その上書きされた記憶の上に、イバラシティでの生活が上積みされている。思い出せるうちは良いが、このまま時間が進み続ければ、自分は再び忘れてしまうだろう。彼はそれを懸念していた。
　記憶喪失後の自分とそれ以前の自分は同じ人格と言えるだろうか。別の記憶を持ってしまった自分とそうでない自分の自意識は連続しているだろうか。暴走する直感を失った時、元の生活に戻った時、全く同じ姿を持つ上司の存在を、己の存在を、かつての様に受け入れられるだろうか。
　肉体の不一致は死ではないが、自意識の不連続は通常、死と呼ばれる。

ENo.564 PSY.B.峰子 とのやりとり


ENo.831 Dr.笹子 とのやりとり

ItemNo.21 毛 を破棄しました。

Dr.笹子(831) から 生命の宝石+1 を手渡しされました。

ItemNo.29 バラのくんせいにく を使用しました！
　魔香のため、体調は回復しなかった。
　今回の全戦闘において 強撃10 が発揮されます。
　今回の結果でのスキル熟練度が伸びやすくなった！

守護者の姿が消え去った――

　

　

六角形の柱から天に向け、赤色の光柱が立つ。

どうやら次元タクシーで行けるようになったようだ。

ものすごい木材（1500 PS）を購入しました。

付加LV を 2 DOWN。（LV90⇒88、+2CP、-2FP）

百薬LV を 5 UP！（LV0⇒5、-5CP）
合成LV を 7 UP！（LV58⇒65、-7CP）

イデオローグ(474) の持つ ItemNo.25 DJコントローラー に ItemNo.21 強靭な皮 を合成し、DJコントローラー を強化しました！（+40）
　⇒ Which,Yes or No?！［ 4 1 4 = 9 ］不発！
イデオローグ(474) の持つ ItemNo.25 DJコントローラー に ItemNo.34 瑪瑙 を合成し、DJコントローラー を強化しました！（+15）
　⇒ Which,Yes or No?！［ 3 3 3 = 9 ］不発！

リリィ(494) により ItemNo.30 黒水晶 から聖衣『似合う白衣』を作製してもらいました！
　⇒ 似合う白衣／聖衣：強さ245／［効果1］体力45 ［効果2］－ ［効果3］－

Dr.笹子(831) により ItemNo.22 鉄くず から謎飯『栄養補助食品-Fe-（塊）』をつくってもらいました！
　⇒ 美酒佳肴！［ 6 3 2 = 11 ］成功！料理の付加効果のLVが増加！
　⇒ 技巧料理！［ 1 4 5 = 10 ］成功！料理の強さが増加！
　⇒ 謎飯チャレンジ！［ 5 6 6 = 17 ］成功！なんかそれっぽい気がする！！
　⇒ 栄養補助食品-Fe-（塊）／謎飯：強さ121／［効果1］強撃13 ［効果2］増勢13 ［効果3］反地13

ItemNo.30 似合う白衣 に ItemNo.21 生命の宝石+1 を付加しました！
　⇒ 気づきアトリエ修練！［ 2 6 5 = 13 ］通常付加
　⇒ 似合う白衣／聖衣：強さ245／［効果1］体力45 ［効果2］活力35 ［効果3］－


ウレイ(419) とカードを交換しました！

ウレイ飯 （デスグラシア）


空間掌握 を研究しました！（深度2⇒3）
エレクトリックパレード を研究しました！（深度0⇒1）
クワシール を研究しました！（深度0⇒1）

アクアリカバー を習得！
ウィークネス を習得！
マナポーション を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

麺屋の龍人(1595) は ふさふさ を入手！
Dr.笹子(831) は ビーフ を入手！
Dr.笹子(831) は 毒液+1 を入手！
麺屋の龍人(1595) は 毒液 を入手！
麺屋の龍人(1595) は すごい羽 を入手！
Dr.笹子(831) は すごい羽 を入手！
麺屋の龍人(1595) は すごい羽 を入手！

次元タクシーに乗り ツクナミ区 K-2：チェックポイント《小集落》 に転送されました！


ツクナミ区 L-2（山岳）に移動！（体調30⇒29）
ツクナミ区 L-3（山岳）に移動！（体調29⇒28）
ツクナミ区 M-3（山岳）に移動！（体調28⇒27）
ツクナミ区 N-3（山岳）に移動！（体調27⇒26）
ツクナミ区 O-3（山岳）に移動！（体調26⇒25）

採集はできませんでした。
　　 - 偽黒初(77) の選択は ヒノデ区 M-11：チェックポイント《大通り》（ベースキャンプ外のため無効）

MISSION - 未発生：
　　 - 偽黒初(77) の選択は オオキタ区 N-9：チェックポイント《源泉》（ベースキャンプ外のため無効）

［821 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［448 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［490 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［196 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［408 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［323 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［249 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［181 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［104 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［146 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［145 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［287 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［40 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［181 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［80 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［97 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［73 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［45 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［66 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢
［100 / 100］ ―― 《屋台》更なる加護
［55 / 100］ ―― 《苺畑》不安定性
［1 / 100］ ―― 《荒波》強き壁
［62 / 100］ ―― 《小集落》猛襲
［0 / 100］ ―― 《落書き壁》リアクト
［20 / 100］ ―― 《変な像》揺らぎ



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

･･･夜空が見える。

　

　

　

どこからともなく無数の光の玉が空へと浮かび上がり、

真っ暗な空間を星々のように彩りはじめる。

　

　

　

少しずつ、少しずつ、

光が寄り添い集まっていくように見える。