この日記は続きものなので、ちょっと前ぐらいから読んでね！

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────目が、覚めた。

土や木々の香は感じられぬ、砂埃舞う土地に、気づけば横たえられている。
意識が混濁していたのか、何かしらの異能によって身体が弱っていたのか、
儂には判別は出来ぬが、少なくともこの身はまだ全調子というわけではないようだ。
指先、ひとつ、動かすのに……。

おかしい。
たしかに、千切れたはず、なくしたはずの腕が、そこには確かに儂の身体にあり。









あの森の中より、儂を連れ去った女……鳳念の姿を視界に入れる。

まだ、ろくに狩りも行えぬ身体に鞭打ち、
その身を起こす。

髪を乱し、爪を立て、牙を剥き出しに。

鳳念を喰らいたい、ただの一心で、衝動のままにこの身は動く。
近くにあればあるほど、その衝動は凄まじく、獣のように、
あるがままの欲望を、そのまま鳳念へと、ぶつけ。

けれど、普段の動きには遠く及ばず。

あまりに何の捻りもない動きは、相手にとって押さえ込むのは容易かろう。
鳳念の左腕、異形である歪な骨によって阻まれる。
首から顎を掴まれ、押し付けられるようにして、地面へと再び背をつける羽目に。









こちらを見下ろす瞳は、憎しみか？
心の中を読めるわけもなし、せいぜいが負の感情とわかる程度に過ぎぬ。

とはいえ。
大事なお友だちとやらを、殺された、喰らわれたとなれば、
アンジニティに身を置きながらイバラシティに手を差し伸べるこの愚人ならば、
あの状況に怒るのやもしれん、と予想ならばある程度つく。
何ともお人好しな予想が立てば思わずあざ笑ってしまい、
それを見た相手は一層、眉間の皺を深くして、表情を険しくする。

身体の一部を異形と化しているというのに、余裕のなさは、まるであの世界のまま、あるがままで。

だから一層、笑えてしまい、そこが癪に障ったのか。
こちらへと、伸びる手と、握られたナイフ。
命を奪うには随分と小さな代物ではあるが――。

その刃の振るう先は、首や、胸元ではなく。

頭部に、……人外のパーツである、鬼のツノへと突き立てられるナイフは、そのまま振り切られ。
千切れて、地に落ちたものを。

鳳念は、拾い上げて。
儂に見せつけるようにして、人外のパーツを、飲み込んでみせた。









痛め付けるわけでもない、命を奪うわけでもない。
此奴の行動が理解できぬまま、けれど傷付けられたという屈辱に、顔を歪め。












吐き捨てるような声を、儂にぶつけてくる。
嫌悪を、憤怒の感情をありのままに。






怒りのなかに混ざる、嘲笑の類の言葉に、カッと頭に血が昇る。
鬼の在り方を、生きざまを、今の儂を、……否定など、させぬ。






儂の咆哮に動じず、否、煽られるように鳳念は言葉を重ねる。
最後には、至近距離まで寄って。此奴を喰らおうとする儂の頭を掴み、地面に叩きつけ。

まだ、即座に立ち上がるだけの体力の回復が見込めぬままの儂の、そばで。











すぐそばで聞こえる声の冷たさとは裏腹、
見上げるその顔は、あまりに歪んでおり。

すぐに距離を取れば、話は終わりとばかりに離れて。
宣言通り、離れるつもりなのだろう。床に叩きつけた儂をそのままに歩き出す。

が。




地面に、拳を叩きつける。
立ち上がれなくとも、何度も、何度も、何度も。

もう既にこの場にいない、鳳念への苛立ちを、
どうしても喰いたくて仕方がない獲物を逃した事を、
この儂を、人として評された事を。

この身が動けるようになるまで、
皮が裂けて、肉が潰れ、血が滲んでも、彼奴に癒された手を、……何度も。何度も。

▲	アマネ 「んー……。」

	「今までどおりがあるだなんて思ってないよ？」 「騒乱の世に疲れ、思い出の中の平穏や安寧を求めてやってきた教室に、クラスで目立たなそうな女子がポツンと居たら面白そうだなって思ってるだけ。多分、来た人の凄く驚く表情が見れるよ。面白そうじゃない？」

	「前提が違うよ。世界が変わってもボクだけが変わらないんじゃない 　世界が変わってもボクらは皆変わらない、だ。」 　　　　　　　　ジジジ…耳障りなノイズ音が聞こえる 　　　悪　党　ど　も　 「アンジニティの住人が今更何に変わるっていうのさ。」

	「…ね。ずっと聞かずに いいこ をしてたけれど、今、聞くね。 　なんでクラスメイトをみんな食べようとしているの？ 　みんなを食べればキミは何か変わるの…？」 「争いが終わるまでボクの事は食べないつもりって言ってたけれど、こんな事たずねたら食べられちゃうのかな？ふふっ…。」

▲	ハッチ 「静かに、言葉を紡ぐ。 知っている。この女は鬼だ。脅威だ。文字通りの。 人の姿をした災厄。 形を得た禍。 昔から人が、理解できない障害をひとくくりに例えた”鬼”そのもの。 「理解する必要もない。人が獣を駆除するのにいちいち何を考えているか理解するかい？ 君は獣だよ。古代ならいざ知らず、今では駆除される側だ。 オウムに鋭い爪や牙が生えた程度の、ね。 ああいや、言いすぎたかな？」」

	怖くもない。 恐ろしくもない。 引き裂きたければ引き裂けばいい。 驚くほど、静かな心持ちになったことに驚きながら。 「お前は獣でも鬼でさえもない。たまたま腕力が強いだけの、 哀れで惨めで卑しい目も当てられないほど安っぽいメスガキだよ。 少し考えたら分かるだろう？　ハハ、そんな知能もないのかな？ 過去の偉大な鬼の御方様は！？ 腕力と品格が同義になるはずがないだろうが！ 言い当ててやろうか？　お前、元は人間か何か、少なくとも生まれた時から鬼じゃ、 災厄の擬人化たる鬼ではないだろう？ お前の振る舞いは力の体現じゃない、幼稚な癇癪の延長だ。 これほどの圧倒的な力を見て畏怖も経緯も感じられない。 ずっと、ずっと、そこにだけ敏感な俺が、お前に対して妬みも嫉妬もしないのが不思議でしょうがなかった。 でも、お前がこじれただけの元人間なら合点も行くんだよ」

	ハッチ 「お前なんて俺が貶めるまでもない。 一人殺し、二人殺し、十、百、千、億！ お前が殺す度！　お前が人を圧倒してると思う度！ いずれ誰かが気づく！ お前は同情すべき哀れな鬼なんだってな！ 何が違う？　教えてくれよ？ 何一つ堪えず、呑み込みも、受け止めもせず！ ただあるがままに力を奮うだけのお前がさぁ！」 チャットが途切れ、しばらくして 「お前は俺だ。 周囲を妬み、羨み、手を伸ばして、それでも届かなくて。 代わりに、手にした力で弄ぶことを選んだ。 それしかなかった。 それしかできなかった。 俺にも、お前にも、それしかなかった。 壊さない選択肢なんて存在しない。それはお前が強いからじゃない。 選べないところまで嵌り込んだからってだけだ。 違うというなら、他に何が選べるか、言ってごらんよ。 そしたら君と瀬織ちゃんの間の絶望的な評価の差を少しは縮めてあげるよ。」

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