［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

　クリスマスと言えば、十二月を締めくくるイベントだ。暦が二十日を過ぎる頃、街には年末年始の独特な、ある種の高揚感が漂い始めだす。それはクリスマスとして結実し、一週間後には年越しとして人々の心を鷲掴みにする。ついでに仕事も休ませてくれる。
　だが。
　結局のところ、それは甘い希望に過ぎなかった。
　直感は告げていた──待て。しかして希望せよと。


────


「……本当にいいんですか？　僕もいっちゃっても」
「何言ってるのよ。私だけいったんじゃ不公平でしょ……遠慮はいらないから大丈夫よ」
「まあ、確かに僕もいきたいですけど。僕がいっちゃったら笹子さんが大変じゃないですか？」
「あのねえ。私をなんだと思ってるのよ。それくらい平気だって言ってるでしょ。もう互いに良い大人なんだから」
「良い大人なんですかね、僕たち。クリスマスにこんな……真っ暗なのに……」
「しょうがないでしょ。真っ暗なのもクリスマスなのも私達のせいじゃないし……私の方はとっくに覚悟も済ませてるのに」
「そんな覚悟しなきゃいけないならやめときますよ僕」
「いいのよ。こういう時は素直に従っておきなさい。私の好意と自分の気持ちにね」
「う……確かに出たいですが……」
「ほら、ちゃっちゃといきなさいよ。待ってるのだって結構辛いんだから」
「うう……笹子さん……」
「すいませーん！　ちょっと見て貰っていいですか？」
「あ、はーい！　今行きまーす！　とにかく、大丈夫だから。でも早めに頼むわよ。私だってこんな状態でいつまでも待ってられるってわけじゃないんだから」
「うう……笹子さん……」
「いいから早くしなさい！　ほら、ちゃっちゃと行った行った！」


　話は数分から数時間遡る。時計の針は既に九時を回り、ドラッグストアも歯医者もリラクゼーションサロンも既に店じまいして帰ってしまった。唯一営業時間のない探偵事務所は朝から外出している（クリスマスといえば書き入れ時だろう）らしく、第三湖東ビルに残っていたのは茅芽研究室の二人だけだ。幸か不幸か、他に誰も居なかったのである。
　誰も居ないビルに二人だけ残ったのには理由があった──誰も居ないからである。

「いや～。しかしこんなことってあるんですね。普段やらない残業やってたら停電食らっちゃった挙句、他のテナント誰も残ってない上に大家さんも居なくて僕らが代わりに業者対応の立会いさせられるなんてことが……しかもこんな日に」
「ええ、ええ。そうね。その回りくどい説明口調のおかげで改めて現状認識出来たわ。当面帰れないってことと、今日がクリスマスイブだってこともね」
「復旧するまで真っ暗で寒いってことも重要ですよ」
「コンロが無事でよかったわ。下手すると命に関わってたもの」
「そうですね。不幸中の幸いです」
「貴方も寒いでしょ。もうちょっと寄らないと」
「ああいや、これ以上寄ると間違いを犯してはいけないですし」
「犯すの？　間違い」
「僕は間違ったことはあっても間違いを犯したことはないですが……」
「馬鹿な事言ってると本当に危ないわよ」
「でも笹子さんと一緒で良かったですね。一人だったら帰って後で大家さんに怒られてました」
「そっちの方が良かったかもしれないわね。まだ業者の人も来てないし、いつまでかかるんだか」

　暖が取れたのは幸いだった。台所はそう広くないが、笹子さんと二人で過ごすこと自体は悪くない。明かりがなくて薄暗いことと、本当に狭いことを除けば。
　窓の外では雪がちらついている。トラブルでもなければ、理想的なホワイトクリスマスだっただろう。

「向かいも周りも明るいのイライラしてきましたね。不公平ですよ」
「そうかしら。天災って結構公平だと思うけれど」
「停電になればよかったのに。折角雪も降ってるんだし、チャンスですよ」
「私は徒歩でも帰れるけど、信号止まったら帰れなくならない？」
「実は寝袋を積んでるんです。雪国では雪のトラブルで身動きが取れなくなることも少なくないというリスクヘッジですね」
「そういう備えは良いのよね」
「普通免許三十段ともなれば当然の心構えです」
「ああ、そんな話だったっけ」
「大体、大家さんも大家さんですよ。店子の危機に海外なんて」
「毎年年末年始は南国だって、去年お土産貰ったじゃない」
「そんなリスクヘッジで不動産賃貸業なんですか？」
「美味しいやつだーって貴方喜んでたでしょ」
「マカダミアナッツとチョコが嫌いな人間って存在しないと思うんですよね」
「大家さんが帰ってくるまでこのままってわけにはいかないんだし、そこは覆せないわよ」
「でもまだ電気管理の人も来ないじゃないですか。結構経ちましたよ、異常を検知した業者さんから海外の大家さんを経由して僕らのところに業者対応の立会いを依頼する電話が来てから」
「この雪で道が混んでるのかしらね」
「いつまでもこうしてるってわけにもいかないですよ」
「それ、さっき同じこと言ったのだけれど」
「待つにしたってそろそろきつくないですか？　部屋も冷えてきたし」
「ええとね。別にここに二人して残ってる必要もないのよ。立会いといっても、本当に作業を確認するだけみたいだし」
「そんな……僕にこんな薄暗くて寒いビルに笹子さんを一人残して帰れって言うんですか！？」
「だから言いたくなかったのよね。貴方に帰れとも、私だけ帰るとも」
「治安の悪い街に一人笹子さんを残して！？」
「治安悪くないわよ。街に謝りなさいよ。毎日一人でその街帰ってるわよ」
「そういう誠実さと気遣いって理想の上司に求められる資質そのものですよね。この間テレビでやってました」
「うーん。ヨイショが急で喜べないわね」
「ところで笹子さん、最近ちょっと雰囲気変わりましたね。髪でも切りました？」
「それもテレビでやってたの？」
「ええ、まあ。もしかして同じ番組──」
「見てません」
「あ、来ましたよ。来ます」
「急なのよ、貴方。本当に」
「早くしなきゃと思いまして。誰か来たっぽいですよ。これは直感なんですが多分業者の人です。いやあ助かりました」
「そうね。本当にね。一歩前進かしら」
「え、違うんですか。なんか異能が違うって、助かってないっぽいです」
「え？」
「まあ、じきに分かりますよ」

　状況について少しやり取りをした後、業者はどこかへ散っていった。設備を確認しに行ったのだろう。普段利用することもないので、どこかは分からないが。
　思ったよりも早く業者が戻ってきたことで、悪い直感の的中を理解した。申し訳なさそうな小声だった。

「それでですね。機械の方なんですが、結構よろしくないようでして、うちの管理室も警報が鳴りっぱなしなんですね。それで、本格的な作業は後日行うのですが、今日中に少ーしお時間取っていただいて、何とか応急処置という形でですね。大家様にはうちの方から詳しくご説明して段取りいたしますし、工事自体は許可いただいてますので、今日の処置が終わるまで、もう少々お待ちいただけないかと……」
「ええと……仕方のないことですし、私達としてもご協力するつもりですが……少々というと、具体的には？」
「こんな日に大変申し訳ないのですが、何分あの、今日やらないと本当にまずい状態なものですから。その、機材など足りない部分もありまして、最低でも一時間は……」
「……最高だと？」
「……三、四時間くらいでしょうか」
「今が十時過ぎということは」
「日付は変わってしまうかもしれませんね……」
「分かりました。とにかく、そちらはお任せします。私達はここに居ますので、何かあれば声をかけてください」

　業者は長々と話していたが、重要な情報は一つだけだ──この状況が続くこと。
　希望的な観測は往々にして打ち消される。時間がかかると分かった今、対応策を考えなければならない。

「う～～～ん、どうします？　ありゃ多分かなりかかりますよ」
「全く、とんだ貧乏くじを引かされたものだわ」
「こんな時に言うのもアレというか、こんな時だから言うんですが、お腹減ってきません？」
「やめてよ。あんまり考えないようにしてたのに」
「僕って早めに夕飯食べるんですよ。そしたら夜中腹減っちゃって」
「一瞬で方向性を見失わないで」
「話を逸らしてみたんですが」
「お腹が減ってるのは事実だし、確かに何とかしなきゃいけないわね」
「この辺って飯屋ってあんまりないんですよね」
「食べに行くのは無理よ。業者の人が困るでしょ」
「僕だって困ってますよ」
「私だって困ってるわよ」
「なるほど。五分ですね」
「あんまり認めたくはないけれど、まあいいわ。どの道、留守にはできない」
「交代で出ますか？」
「そうねえ。でも飲食店がないとなると、結構かかっちゃうわよ」
「ビニーコンはあるじゃないですか。とりあえず適当に買って来ればいいですよ」
「なるほどね……順番はどうする？」
「笹子さんからでいいですよ。僕の献身を感じて下さい」
「逆効果よ」
「そうですか？　でも僕は後で良いです。暗所に一人なのは慣れてますし。寝る時は大体そうしてますんで」
「そりゃ私だってそうよ」
「お、気が合いますね」
「……私もう行っていい？」

　時計の針は十一時に迫っていた。買い置きのチョコで空腹を誤魔化していると、ようやく笹子さんが戻ってきた。暗闇で一人待つストレスについて懸念を表明するも、「ほら、ちゃっちゃと行った行った！」と急かされたので研究室を後にした。
　十数分後。

「冷静に考えると、別にバラバラに出かける必要って無かったわね」
「といいますと？」
「片方が希望聞いて買い出し行けば済んだじゃない。手間と時間だけ倍かかっちゃったわよ」
「なるほど……もっと早く気づいていれば暗闇の中で一人孤独に耐えることもなかったですね」
「たまに聞こえる作業の音、確かに結構怖かったわね……」
「だから言ったんですよ……それで、何買っていや見たらわかりました」
「そう？　美味しいわよ、ゼリー」
「よく選びましたねこの状況で」
「そういう貴方も何よそれ。鍋？」
「コンロで出来るやつです。温かいですよ。それと明かり」
「あー、明かりね。気が利く部下を持って鼻が高いわ」
「そんなだから暗闇でゼリー食べる羽目になるんですよ……ほら、使ってください」

　懐中電灯は人の生活を彩る。雪明りでは到底太刀打ちできない光量こそ、文明の力だ。
　鍋を食い上げ、雑談のネタも尽きかけた頃、ようやく業者から作業終了の報告が届いた。詳しい話はまた後日と業者を見送って、戸締りを済ませ、ビルを出る頃には既に翌日になっていた。クリスマスとあってか、こんな時間でも街は少し賑やかだった。

「全く……今日はとんだ一日だったわね」
「明日が休みで良かったですよ。じゃなきゃ僕は泣いてました」
「私もよ……でも、そうね。一人じゃなかったのは幸いだったわ」
「ええと、それは僕が居てくれてよかった感じですか？」
「ええ。一人だったら、多分退屈で仕方なかったもの」
「それは嬉しいですね。あ、献身アピールです」
「もう……ところで。こんな時間だけれど、何か食べて帰らない？」
「いいですね。ご相伴にあずかりますよ。まだ少し余裕があります」
「ディナーってほど洒落た店はやってないだろうけど……このまま昼まで寝るとなると、腹ごしらえが要るわよね」
「となれば相場はラーメンかうどんですね」
「この時間にラーメンは重くないかしら……さっき鍋まで食べてたのに」
「うどんにしましょう。鍋の締めはうどんですよ」
「悪くないわ。一件落着、付き合ってもらったお礼に奢るわよ」
「そういう誠実さと気遣いって」
「理想の上司でしょう？　私って」
「ええ。どこまでもついていきますよ……今日のところは食べたら帰って寝ちゃいますけどね」


────


　直感が囁く。
　直感は己のものだ。望まぬ強化により、複数人分の出力を得た異能が生み出した、辻褄合わせの別の自我。
　存在しない己の自我が、囁き声を大きくする。それは違うと言い続ける。まるで別の自分が、他の自分を止めるかのように。

ENo.831 Dr.笹子 とのやりとり

Dr.笹子(831) に ItemNo.13 毛+6 を手渡ししました。

ゾンビを一掃すると、物陰から再び何かが現れる。

　



ロストのフレディオ･･･のようだ。

　




周囲に散乱したゾンビを眺め、




　

こちらの姿をじーっと確認する。






真剣な眼差しで訴える。

　




考え込むフレディオ。

　

　

　





フレディオは芋焼酎を欲しているようだ。

エロ本と間違えないよう注意しなければならない。

武術LV を 2 UP！（LV32⇒34、-2CP）
変化LV を 5 UP！（LV25⇒30、-5CP）
付加LV を 7 UP！（LV77⇒84、-7CP）

Dr.笹子(831) の持つ ItemNo.29 メスフラスコ に ItemNo.23 不思議な粉 を付加しました！
　⇒ 気づきアトリエ修練！［ 2 5 2 = 9 ］通常付加
Dr.笹子(831) の持つ ItemNo.38 ものすごい石材 に ItemNo.39 すごい石材 を付加しようとしましたが、指定アイテムが装備品と素材ではありませんでした。

えびぴらふ(1506) とカードを交換しました！

まっするぽーず （ボンバルディエ）


フォレストオファリング を研究しました！（深度0⇒1）
アスティオン を研究しました！（深度0⇒1）
空間掌握 を研究しました！（深度0⇒1）

タイダルウェイブ を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

Dr.笹子(831) は 不思議な布 を入手！
偽黒初(77) は 羽 を入手！
偽黒初(77) は 腐肉 を入手！
偽黒初(77) は 腐肉 を入手！
偽黒初(77) は 腐肉 を入手！
偽黒初(77) は 腐肉 を入手！
Dr.笹子(831) は 腐肉 を入手！
Dr.笹子(831) は 腐肉 を入手！
Dr.笹子(831) は 腐肉+1 を入手！

特に移動せずその場に留まることにしました。
体調が全回復しました！

『ヒノデ区 M-11：チェックポイント《大通り》』へ採集に向かうことにしました！
　　 - 偽黒初(77) の選択は ヒノデ区 M-11：チェックポイント《大通り》

MISSION!!
マガサ区 S-16：ヨシバラ を選択！
　　 - 偽黒初(77) の選択は マガサ区 S-16：ヨシバラ

［866 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［445 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［500 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［194 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［397 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［310 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［221 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［160 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［90 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［137 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［128 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［196 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［28 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［58 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［32 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［58 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［39 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［8 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

「うぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ！！！！」

　

　

　

「ひぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ！！！！」

　

　

　

　

　

　

突然の絶叫と共に、チャットが閉じられる――

ネオン輝く歓楽街、ヨシバラ。

　

何故だかネオンの代わりに

たくさんの提灯が街を照らしている。

　

どんちゃん、どんちゃん･･･

どこからか、太鼓や三味線の音色も聴こえる。

　

　

　

そんな街を多くの男女が歩いている。

みな黒い着物に身を包み、顔には黒い狐面――

　

　




　

　



瓦屋根の上、声の主と思われるひょっとこがこちらを見ている。

　

　




　

その声に反応するかのように、道行く狐面が襲い掛かる！