［基本］OK.　［戦闘］OK.　［スキル］OK.　

執務室に夜の帳が近づき、仕事の道具を然るべき場所にしまい始める時刻。
日々のルーチン故に特に言葉を発することなく進む作業の沈黙を破ったのは彼女だった。
「……そうだ、ねえ、何か必要なものってあるかしら」

棚に物をしまっていた助手は中を消耗品を確認すると、

「えっと、水のりと、あとクリップが少なくなってますね。発注しないとと思っていたんですけど……」

ゴソゴソと棚を確認して事務用品の在庫を確認する。
その答えに少しだけ彼女はため息をついて、

「あー、うん。それは頼んでおいて頂戴。……と、そうじゃなくてホラ、近いじゃない貴方の誕生日」

それが耳に届いたのか彼はガバッと振り返り

「待ってください情報量が多すぎる。あ、誕生日に水のりは求めてないです」
「ええ、それはわかってるわ。……情報量の多い話をした覚えはないのだけれども」
「欲しいもの、欲しいもの？なんで急に？」
「急じゃ無いわよ、近いじゃない誕生日」
「え、あ、本当だ。畜生なんでこんな急に来るんだ誕生日ってやつは」
「いや、一年に一日、定日でしょう」
「しかし、それがなんで欲しいものの話に？」

明らかに狼狽ている彼に、彼女は再度ため息をつく。今度は苦笑いのトッピング付きだ。

「祝われっぱなしっていうわけにいかないでしょ。それで、少し考えたんだけど……。ここ、職場の力関係的に何をもらってもNOと言えないでしょ」
「いや、そんなことは……。いいえ、はい、そうですね」
「まぁ貴方なら臆せずダメ出しするかもだけど、でもこうして予め聞いておけば、その無駄な心労も避けられるわけよ」

妙案でしょうと言った様相で彼女は言い切る。

「笹子さん……」
「え？　は？？」
「……ん？　あ、いや、そういうのではなくて、欲しいものの文脈を引き継いだものではなく、今のは感慨深さが溢れ出た言葉であってですね」
「欲しいものか……欲しいものな～～……思いつくのは笹子さんから貰ったものを飾っておく神棚が欲しいかなってところなんですが、これだと構造に無理が生じますよね」
「そうね。その三倍くらい冷静になってもらえるとありがたいのだけれど」
「分かりました。ではここは伝統に則って欲しい物バトルにしましょう」
「その伝統、本当に継承されてる？」
「ええ、まあ。初代の僕は次の世代に伝えていきたいと思っていますが……欲しい物バトルというのは、僕が何を欲しているのかを当てるゲームです」
「バトルじゃないじゃない」
「ゲームバトルです。バトルゲームか。実際問題として欲しい物思いつかないんですよ。だからここは僕のことをよく知る人の意見をダイレクトに反映していただいた方が良いのではないかと思いまして」
「まあ、大いにわかるわ。この歳になるとその時欲しいって思ったものは大体すぐ買っちゃうものね……話がそれたわ。それで、そのバトルの形式だけれども……」
「え、やるんですかバトル？」
「なんでよ、バトルにしようって言ったのはそっちでしょう」
「いやまあ時間稼ぎの方便と言いますか、なんて言いますか……」
「薄々そうじゃないかとは思っていたけれども……。……本当に、何を貰っても恨みっこなしで選んでくるわよ？」
彼女は若干小さな声で不安げに尋ねる。
「ゲームはスポーツマンシップに則ってますからね。恨むことなんてありませんよ。精々僕を楽しませてくださいね……フフフ……ハーッハッハッハ！」


――――


「それで、考えたわけよ」
「はい……なんの話でしたっけ？」
「誕生日の話よ、貴方の」
「えっ、なんで急に」
「いや、ストップストップ。そのやり取り、昨日もやったわ」
「最近ちょっと記憶定着率が低めなんですよね。確か欲しい物バトルの話をしていた記憶が朧気にあるかもしれないことも……」
「それを覚えていれば１００％覚えてるわよ。……名目上バトルというなら私も負けないための工夫をさせてもらうわ」
「……笹子さん、実は結構負けず嫌いなんでしたっけ」
「そうでもないけれども、……なんか負けたくないなって思っただけよ」
「世間一般ではそれをですね……いえ、なるほど。それで一体？」
スッと助手は口をつぐみ、そこに自慢げに彼女が言葉を被せる。

「ふふっ、昨晩そこそこ遅い時間まで考えて微睡ながら思いついたのだけれども……質のいい睡眠、欲しいと思わない？」
「なるほど三大欲求で来ましたか。それに疎かにされがちな物ですからね。僕は一日が３７時間なら１８時間は眠っていたいと常日頃思ってます」
「……一日の半分は寝すぎね」
「寝すぎは置いとくとしても、健康の専門家が推奨している健康睡眠時間の８時間睡眠でも人生の３分の１を、６時間睡眠でも４分の１を寝て過ごしてるわけです。健康な人生において睡眠は重要ですよ」
「含蓄があるわね、己が睡眠を蔑ろにしている気がしてきたわ」
「決して蔑ろにしてはいけない事象ですよ睡眠は」
「そう、なら、ちょうどよかったわ。はいこれ」
そう言って小さな箱をを取り出し助手に差し出す。
眠たくなる色合いの横長の箱に、銀で箔押しを施された店名が光る。

「×眠……ペケミン？なんか睡眠薬の強化版ですか？」
「カイらしいわよそれ、その表記でカイミンって読むみたい」
ほら、ギリシャ文字のと言いながら指でχを描く。

「……こういうのどこから見つけてくるんですか？僕も大概だと言われた覚えありますけど、笹子さんもあんま人の事言えない自覚あります？」
「……ちょっと自覚があるわ。でも、それはさておいて良さそうじゃないかしらそれ、オーダーメイド枕と……なんか快眠グッズを選べるチケットみたいだけど」
「なるほど。これは想定を超えてきましたね……では今週末にでも向かいましょうか。予定は大丈夫ですか？」
「予定？」
「笹子さんも来てくれないと困りますよ。これはバトルなんですから……きちんと立ち会ってジャッジしていただかないことには」
「妙な話になってきたわね。要は貴方の満足度の話じゃないの？」
「はい、なので満足度を測る人が必要かと。そしてその役は笹子さんにしかできません」
「ん？あれ？なんで？……まあ、週末なら空いてるけれども……」
「よっしゃ、そうと決まれば善は急げです。決戦の日は今週末、……えーと、『Ｓｕｙａ工房　～χ眠～』現地にて開戦ですよ」

――――

その週末。

枕の各種計測が終わり、詰め物の素材をお持ちしますと店員が席を外す。
空いた時間に、助手である男が口を開く。

「……正直、大概な店名だから大概なお店かと思ったら思ったよりまともでしたね」
「そうね、店員もしっかりしてたわ」
「快眠の怪人に扮した店員とかが出てくる怪奇店だと踏んでいたんですが……」
「もしそうだったら私はもう帰ってるわよ」
何よ、快眠の怪人ってと小声で突っ込みを入れて、

「いやいや、それはおかしいでしょう、この店を斡旋したのは笹子さんなのに」
「そうだけれども、そうだとしても、ね」
普通で何よりよね、と普通のすばらしさを再確認し、

「しかし……、僕の頸椎の情報をこの大概な店に握られてると思うと気が気じゃないですね。悪用されたらどうしよう」
「どう悪用するのよ」
「僕を延髄切りで卒倒させる最適な入射角とか求められてるかもしれないじゃないですか」
「それを知ってどうするのよ」
「もしですよ、快眠の怪人が『真の快眠をお見舞いしてやる』とか言って延髄切りで卒倒させてきたら怖くありません？」
「……もしそんなことが起きたなら、警察を呼んだ方がいいわよ」
「ところがです笹子さん、卒倒しちゃったら警察は呼べませんよ。これは困った」
「……快眠の怪人って何よ。安眠の妨害をしてくる怪人ならわかるけれども」
「それはですね……。……あ、店員さん。……はい、柔らかめの……、羽？……あー、低反発のって……なるほど」
と、彼が何かを言いかけたタイミングで席に戻り素材を提示する店員と話し込む。

「決め……ました。はい、これで大丈夫です。隙のない枕に仕上げて下さい」
オーダーが完了した。すると、店員が彼女の方に向き直り。枕の作成を勧める。

「私も？……私はいいわ、今日は彼のお祝いで来てるし」
「いや、せっかくだし作りましょうよ。結構楽しいですよ」
素材も選び放題ですし、と素材見本のクッションを手遊びしながら彼も店側に立つ。

「そうは言ってもねぇ？そこそこするものだし」
「でも二個目の割引あるみたいですよ。……家族割ですけど」
その言葉に店員が、一緒に来店してくださってる方なら割り引けますよ。と二の矢を放つ。
断りにくい空気が醸成されていく。なんとか断る方法は無いものか。苦し紛れに口を開く

「えーと、……いや、やっぱり遠慮しとくわ、頚椎の情報とか悪用されたら怖いし」
言ってからやってしまったと思う。聞き逃さなかった助手が笑顔で口を開き、

「……笹子さん、大丈夫です。およそ一般社会には頚椎を狙って延髄切りをしてくる怪人はいません」
優しい目で諭してくる。やめて。

「それに、もし笹子さんの頸椎を狙う輩がいたとしても僕が立ちはだかるので最適な入射角で叩かせたりしませんよ」
「そういう話じゃ……ねえ、そういえば何か忘れてない？」
「ん？欲しい物バトルの話ですか」
「……そうそれ、……私審判頼まれてなかったっけ？」
「そうですね。でも……逆に考えましょう。睡眠は普遍的なものですから、ここで笹子さん自身に合う枕を手に入れることで贈った枕の価値も知ることができるのでは？」
と、いうわけで助手と店員にまんまとしてやられ、自身も計測室へと通されることとなった。

――――

その後あれこれ手続きを進め、枕の完成まで２時間程度を要するとのことで店を離れ近くの喫茶店で話し合う。

「……笹子さん、店員も言ってましたがストレートネックは健康の天敵だから気を付けた方が良いですよ。本当に」
「……肩こりひどいなとは思っていたけれども、私の首、そんなことになってたのね」
首をゆっくりと回しながらそう言って、

「あと話を聞いてる限りだと今の枕致命的にあってないですよね。首が良くないのに固い枕は……」
「気にしたことのないアイテムだったのよね枕」
「この前も言いましたが、睡眠は決して蔑ろにしてはいけませんよ。睡眠不足は美容の大敵と言いますが、実際はあらゆるものの宿敵ですから」
彼の眠りに対する熱い思いを受け取り、さっき店員から聞いた首にいいストレッチを寝る前に試してみるかなと思ったところで、

「あれっ、そういえば欲しい物バトルの勝敗はどうすればいいのかしら」
「えっ、あー、えーと、どうしましょう」
「……勝敗はどう決めるのが正しいかしらね、一応贈り物としての枕は今日出来上がるけれども」
「……わかりました、こうしましょう」
「どうするの？」
「今日、出来上がった枕を早速使うんです……それで、無事笹子さんが快眠できればバトルの勝者です」
「……なんでよ」
「いや、僕は枕結構欲しかったですからそれはいいとして、今日枕を作る筈じゃなかった笹子さんも枕の出来に満足できたということなら、どこからも否の出ない完全勝利ということになるんじゃないですか」
「うーん？貴方はそれでいいの？」
「良いも何も、楽しかったですし、上司の健康状態もわかった有意義な一日でしたよ」
「……せっかくの誕生日のお祝いなのに気を遣わせたわね」
「まあ、枕が結構ほしかった時点で負けてるのに笹子さんに来てもらってますからね」
「じゃあ、明日の枕の感想楽しみにしても良いかしら」
「勿論、起きてすぐ原稿用紙5枚分くらい書いてきますよ」
「……寝すぎて遅刻しないようにね」
「…………心得ました」

再び店舗を訪れ出来上がった枕を受け取り帰路に就く。
その夜、出来上がった枕を使用してみると
何かが劇的に変わったというわけではないが、
ある循環に良いものが加えられ、淀んでいたものが流れ綺麗になっていく。
そんな夢が眠る彼女に訪れた。
『日々の営みの欠かせない一時に、幸せを』
大概を連呼された店舗のキャッチコピーは、叶えられたのかもしれない。

ENo.77 偽黒初 とのやりとり

ItemNo.27 何か固い物体 を破棄しました。
ItemNo.28 何か固い物体 を破棄しました。
ItemNo.29 何か固い物体 を破棄しました。
ItemNo.30 何か固い物体 を破棄しました。
ItemNo.31 何か固い物体 を破棄しました。

狒々は大人しくなり、低姿勢で温泉をこちらに勧めてきた。

温泉に入るチャンスを得たようだ。

　

　

　

探索を進めると、聞こえてくる電子音･･･

　

どういうわけか、ゲームセンターが稼働している。

　






チャットが開き、ソージロウが現れる。

チャット越しに周囲を見渡し･････満足げな表情を浮かべる。

　





突然エディアンがチャットに現れた。




ソージロウと同じく、周囲を見渡す。






筐体をじーっと観察する。

　









ゲームの話に夢中になるふたり。

　

　

　

しばらくして、ソージロウが話しかけてくる。




　

･････身体の奥から、少し力が湧き出る感覚。


各CP･FPが2増加した！



　

　

　

響鳴LV を 7 UP！（LV10⇒17、-7CP）
付加LV を 7 UP！（LV11⇒18、-7CP）

トニック を研究しました！（深度0⇒1）
クリエイト：キャノン を研究しました！（深度0⇒1）
ドラスティックレメディ を研究しました！（深度0⇒1）

ヒーリングソング を習得！
アクアレゾナンス を習得！
フラワーバラッド を習得！
パーガティブ を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

Dr.笹子(831) は 角 を入手！
偽黒初(77) は 角 を入手！
偽黒初(77) は 牙 を入手！
偽黒初(77) は 毛+6 を入手！
偽黒初(77) は 毛 を入手！
偽黒初(77) は 毛 を入手！
Dr.笹子(831) は 毛 を入手！

特に移動せずその場に留まることにしました。
体調が全回復しました！

『ヒノデ区 M-11：チェックポイント《大通り》』へ採集に向かうことにしました！
　　 - 偽黒初(77) の選択は ヒノデ区 M-11：チェックポイント《大通り》

MISSION!!
ヒノデ区 M-2：ヒノデコーポレーション を選択！
　　 - 偽黒初(77) の選択は ヒノデ区 M-2：ヒノデコーポレーション

［861 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［444 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［500 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［193 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［397 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［305 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［216 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［156 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［79 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［134 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［128 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［182 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［28 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［48 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［22 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［49 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［0 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　





　




　

　

　

　

　

　




　






　

　

　

　

　

　







　

　

　

チャットが閉じられる――

数々の巨大施設が立ち並ぶ、ヒノデコーポレーション構内。

その施設のほとんどは朽ち果てているようだ。

　

　　　がさっ･････

　

物陰から、何かが這い出てきた。

　







　

腐敗した者たちが、静かに迫ってくる･･･