［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

叔父が怪我をして帰って来たから、５日後。

彼が仕事で事務所に滞在し、自分が休日という日が巡って来たのだ。

調べに向かうにはもってこいというこの状況、当然逃すという選択肢がある訳は無く。
朝食を食べ終えたタイミング、身支度を整えて彼に出かける事を伝えれば、
叔父は疑う素振りを見せる事無く、あくまでもいつも通りの様子で、笑顔で。
「あんまり遅くならない様にな」と見送ってくれた。

……少なからずの罪悪感が、じわりと胸中に燻る。


それを胸に振り返りたくなる衝動を堪えて、手だけを振って扉を潜ったのだった。



この行為が彼の為になると、信じている。

だって自分は、未だ何も知らない。

未だ何も、教えてもらえていない。


だったら、自分で探しにいくしか無いのだから。





ウシ区とタニモリ区とを直線で繋ぐ路線は存在しない。

故に、外回りか内回りかのどちらかで向かわねばならず、
男はミナト区を通過する方面の電車へ乗り込む事にしたのだった。


「…………」



カタン、カタン。


刻みの良い音、車窓の先を流れていく景色。
通勤の混雑する時間帯ををずらして乗り込んだからか、
席に座る余裕もあれば窓の外の風景を眺める余裕もできていた。


カタン、カタン。


見知った景色がどんどん遠ざかっていく。
まだ足を運んだ事の無い地区が近づいて来る。

(でも、向こう側に海が見えるのはタニモリと変わらないな）

午前中の澄んだ日の光にきらきらと照らされた水平線が、
時折住宅街の向こうから覗いては男の気を引き込んでいた。
こうして見ると、この街は海に囲まれているのだと改めて思い知る。


実家から離れた今でも尚、砂浜や海岸沿いを歩くのは好きだ。
今は近所ばかりだが、いつかここから遠くに見える砂浜にも足を運んでみようか。

そんな予定をぼんやりと立てながら、
車窓の向こう側を見つめる男の横顔は穏やかなもので。


その一時の道のりだけは、平穏な心持ちで過ごす事が叶ったのだった。





目的のウシ区へは、当初の徒弟通り数十分で到着した。

先程まで通って来た景色とは異なり内陸に位置するこの区。
建物に囲まれた周囲に目をやりつつ、比較的緑の多いこの景観の中でも
やはりその目を引くのが少し離れたところに立つあの像だろう。

事務所の近所にはビルなどの背の高い建物は多く混在するが
この手の高い建造物はそう目にしない。この街では珍しい方ではないだろうか。

改めて、自身の探索もまだまだ不十分なのだと思い知る。


（守護像か……）


果たして、この度の探索の味方になってくれるのかどうか。


（……なんて、）

らしくもない思考が過り、微苦笑。
物珍しいそれについ気を取られ、立ち止まってしまっていれば
背後から少し冷えた秋の風が吹き抜けて。


不思議と、背を押されたような気がした。





本日の目的は、叔父の当時の行動を辿っての調査だ。

杞憂ならばそれで良い。
彼の言葉を信じれば調べる必要の無いような日常の一欠片。


けれども、――あの瞬間。


抱いた違和感を、自身の直感を。

信じなければならない様な気がしたのだ。



（……ま、そういう直感を信じろって教えも。
　その件の叔父さんの受け売りによるものなんだけど）

都合よくも責任転嫁先が見つかっては間違っていないと言い聞かせ、
見慣れぬ街中を真っ直ぐな足取りで進んでいく。


事前に叔父から辿った道順は聞いていた。

心配を通り越し過保護の如くどこで怪我しただの他に危ない所に
行っていないかだのの話を進めたおかげである程度把握が叶ったのである。



まず最初に、駅から三本程奥に入った先にある裏路地の喫茶店。
ここで叔父は依頼人の女性からの相談を受けたという。
押し扉に手を伸ばし中に入れば古き良き時代の純喫茶ともとれる
その空間が迎え入れてくれて、カウンターの向こう側にいるマスターに会釈した。

「すみません、ちょっとお尋ねしたいのですが」

言いながら、スマホの画面を見せる。
予め用意した自分と叔父が並んで映る写真を表示して、片方を指差し示す。

『兄弟が落とし物をしてしまったようで、二人で探して回っている』

その体で話を進め、兄がこの店を利用しなかったか、“腕時計”を落とさなかったかと尋ねれば、
初老だが人の顔をよく覚えている店主は親切にも答えてくれた。


話によれば、叔父が女性と話をしていた事自体は本当の様だ。

話の内容こそマスターは知っている様子はなかったが、
相談に乗っているような空気ではあったらしい。
時間帯は叔父が話していた待ち合わせ時間とほぼ同じ。

ついでに言えば腕時計が出て来る事はなかった。
一緒になって改めて店内に目を通してくれたマスターには悪いが、当然の結果である。


男は深々と頭を下げて礼を述べ、今度また足を運ばせてもらう事を約束にその場を後にした。




（さて……）


という事は、叔父の話は半分が正しかった事になる。

不明瞭なのは、この後。この先の情報は持ち合わせてはいない。
叔父がこの後どこへ行き、帰りの電車に乗るまでの間にどう過ごしたか。

虱潰しに探していくしかない訳で。


（何時まで居座るかなぁ）


先程まで歩いていた一本道が突然いくつもの道に枝分かれしたような
途方もない感覚に、何とも言えない長い溜息が溢れでていた。





――――



―――



――





……枢木の家に伝わる異能は、少しばかり特殊な性能を持つ。

言うなれば、同じ血で、同じ力を持つ異能者の異能は
すべて“きょうだい”である様なものなのだ。


同じ血を分け、同じ異能から生まれた異能。

故に、異能を使った痕跡が“きょうだい”には判る。
故に、異能の痕跡の“癖”で誰が使用したのかも分かる。

流石に自分で異能を発動した際と同じ様に、
対象の痕跡を辿る様な事までは出来ないけれど。





「…………」


それでも。




見過ごす事は、決して無い。




「は、……」


男がそれを感じ取り立ち止まったのは、そこから更に歩いて半刻程経った先。

入り組んだ路地の中、狭い雑居ビル同士の隙間で出来たような道の。





――壁の中。





「……なんだ、これ」



鈍い金色を宿していた瞳が元の色を取り戻す。


手を伸ばしやや劣化したコンクリートに触れてみれば、
秋の空気に晒され加えて光の届かぬ場所と言うこともあり、
特有の冷たさが伝わった。


……否、冷たさだけではなく。


異能の使用を解除しても尚、そこから感じられる反応。

術者の、異能そのもののこの癖の具合を知っている。




“叔父は此処に、何かを封じている”




「…………」



胸の奥が騒つく。

微かだった筈の違和感が明確なものとなって込み上げてくる。





　　・・
……何をだ？





タニモリからだいぶ離れたこんな所、こんな狭い路地の裏。

下手したら自分がこの街に居るのだと悟られてしまう様な、
隠したという割に粗雑な、こんな場所に。





叔父は、一体何を隠した？






（いや、……)



或いは、“此処に封じざるを得なくなった”か。



だとしても、結局最初の疑問に戻ってきてしまうのだが。


場所を把握出来たとしても、同じ異能を使えるとしても。
異能達はそれぞれ孤立している為に第三者がその封印を解除する事は出来ない。
逆も然り。封印は封印を施した者にしか解除も管理もできないものだ。

そんなもどかしい感情をはぐらかすべく、
ちらりと足下や周囲を確認するも、特に変わった痕跡は見られない。

きっと身内の異能の判別が出来ない自分でなければ見落としていた程度には、
違和感等ないごくごく普通のありふれた細い裏通り。


「…………」


そう。
争った様な痕跡も無ければ、血の一滴も残っていなかった。


（ここじゃない）


いくら綺麗に痕跡を消し去ったとしても、そう簡単に消せないものだってある。
この場所は真新しそうな傷は無い。視界に映るのは古い劣化の痕ばかり。
壁際に置かれた箱や屑箱も暫く触れられていないのか目に見えて埃が積もっている。

怪我をしたのは――何かが起きたのは、この場所じゃ無いと言う事。


（けど、）


（きっとそう離れてはいない筈だ）



この近くで“何かが起こった”から、
この近くで“人の通りの少ない場所”を選んだ。

そう考えるのが打倒――だけれど。



（……や、目星は下手に付けない方が良いな）


予想をしては、視野が狭くなる。それをよく知っている。

故に男は一度は浮かんだ考えを頭を振っては体の外に追いやって、
改めて、この空間をぐるりと見渡してから。






――狭い通路に吹き抜ける、風。





「―――、」



先程と、同じ。

まずはそちらからだと言われる様な、背を押す様な風。



“それ”が自分に何かを訴えかけている様な。そんな気がしたものだから。

身を任せて。男は再び、歩み始めただろう。









……時刻は丁度、真上に位置する太陽が首を傾げ始めた頃だった。

変化LV を 5 DOWN。（LV10⇒5、+5CP、-5FP）
解析LV を 2 DOWN。（LV2⇒0、+2CP、-2FP）

幻術LV を 5 UP！（LV20⇒25、-5CP）
百薬LV を 9 UP！（LV20⇒29、-9CP）
防具LV を 2 UP！（LV97⇒99、-2CP）
料理LV を 5 UP！（LV0⇒5、-5CP）

兎角杏子(381) とカードを交換しました！

【リトルライアー】 （ルミネセンス）


トニック を研究しました！（深度0⇒1）
トニック を研究しました！（深度1⇒2）
クリエイト：バトルフラッグ を研究しました！（深度1⇒2）

アルシナシオン を習得！
コンテイジョン を習得！
オラシオン を習得！
アナスタシス を習得！
セダティブ を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

十九号(153) は 露草 を入手！
枢木(296) は 土筆 を入手！
枢木(296) は 良いお肉+1 を入手！
十九号(153) は 良いお肉 を入手！
十九号(153) は ビーフ を入手！

十九号(153) に移動を委ねました。

リュウジン区 C-3（草原）に移動！（体調25⇒24）
リュウジン区 D-3（道路）に移動！（体調24⇒23）
リュウジン区 D-4（沼地）に移動！（体調23⇒22）
リュウジン区 D-5（沼地）に移動！（体調22⇒21）
リュウジン区 E-5（森林）に移動！（体調21⇒20）

採集はできませんでした。
　　 - 十九号(153) の選択は ウシ区 R-4：チェックポイント《古寺》（ベースキャンプ外のため無効）

MISSION!!
リュウジン区 D-3：昇竜レジデンス が発生！
　　 - 十九号(153) が経由した リュウジン区 D-3：昇竜レジデンス
　　 - 枢木(296) が経由した リュウジン区 D-3：昇竜レジデンス

［871 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［441 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［500 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［177 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［377 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［286 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［199 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［137 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［56 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［122 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［92 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［90 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［83 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［0 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［8 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

　　　ザザッ――

　

　

　






チャットにノウレットが現れる。

･･･が、どうも雰囲気が異なっている。

　





　




　





　





　

　

　

チャットが閉じられる――

聳え立つ巨大マンション、昇竜レジデンス。

　

その姿はハザマでも健在で、それを見上げると――

　




上空からふたつの巨体が迫り来る！