［基本］OK.　［戦闘］OK.　［戦闘:エイド1］OK.　［戦闘:エイド2］OK.　［戦闘:エイド3］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

待っていてくれと男に伝え、私は実験室に向かった。


実験室には外部からの魔術的な影響を遮断する結界が貼られている。様々な計測の結果に影響を与えないためだ。

男から渡されたケースはあたかも指輪かなにかを収めているようだった。年齢イコール彼女いない歴に加え装飾品を身につけることもない自分には、初めて手に取る種類の高級そうなケース。そのビロードの感触に満足すると、かちりと蓋を開けて中身を改める。指輪の代わりにクッションに差し込まれているのは、なめらかな形をした部品だ。

等間隔に並ぶそれを一つ取り出し、対となる器具に合わせる。
感触だけで軸が合わさったことがわかる。
そのまま回転させると滑らかにはめ込まれてゆく。
続けて機器を作動させる。


「接続、固定、完了。誤差……検出できず」

あまりの抵抗感の無さに一瞬疑いを持つが計測機器は嘘をつかない。
続けて加圧し、テストを続行する。

「圧力……変化なし。漏れもなし」

微細な魔力を捉えるセンサーを作動させる。私自身の魔力波長は予め登録され、可能な限り雑音を除去するものだ。最も詳細なモードで機材を走査する。

「残留魔力……検出可能範囲には、なし」


データを繰り返し確認していると、ようやく結果に現実感が伴なってきた。


「驚いたな。予想、以上か。まさかこれほどとは」


パーツを手に取り指先で撫でる。
密度の高い合金の持つ重量感が心地よい。

こうした器具は特殊な形状や高い精度を求められ、加工が難しい素材を用いることも少なくない。そのため、職人を探すのに難儀するものだ。大量生産をするほどには需要がなく、かと言って小規模な工房でこの加工を行うのは難しいだろう。

例外はある。
魔術的な加工技術を用いれば…… 恐らく可能だろう。
それこそ、非現実的な話だ。我々のような弱小チームが出せる予算では。


「私は、とんでもない拾い物をしたのかもしれない」


検査結果をまとめ、その ”拾い物” に報酬の残りの半金を渡すために実験室を出る。
刺激の少ない研究所勤め。心の奥底から湧き出た興味が、枯れた男の歩みを早めた。


♦︎


「主任、何かあったんです？」


研究室を出た先の通路で、メンバーに声をかけられる。


「ん？ 特に何もないが？」
「えぇ〜、今すっごいニヤけてましたよぉ。でも、主任のニヤける理由なんて、ロクでもないことなのでー。追及しないでおきますぅ」


酷い言われようだ。だが、それも仕方ない。私はよくしょうもないアイデアを思いついてはろくでもない結果を出しているのだった。全てが全てそうというわけではないし、仕事は堅実にしている。せめてもの暇つぶしのようなものだ。


「あっ、あのお客さんならラウンジにいらっしゃいますぅ。それを伝えにきたんでした。それにしてもすっごいキレイな人ですよねー。この国では珍しい感じの。異国の方なんでしょうか。主任のお知り合いなんです？」


まるで紹介して欲しいと言い出しかねない勢いだ。


「ああ、知り合いというわけでは……いや、知り合いにはこれからなろうというところだ」
「これから？」
「そうだ。私も彼にはとても興味が湧いてきたところでね」


彼女は怪訝な表情を浮かべ、ハッとしたように


「主任、まさか、そういう……趣味。
意外です。はぁ。あっ、でも、同性でも異性でもなんもなしでも、性愛の形は個人の自由ですので！」
「何を言っているんだ。君の偏見の無さは素晴らしいが、私への偏見はやめたまえ」


♦︎


余程その客が気になるのだろう。絡んでくる彼女を適当にあしらいながら、ラウンジへと向かう。話題の人物の明るい声が聞こえてくる。


「そうそう、ここから？ 歩いて十分くらいのところにあるっすよ。ちょーっと入り組んでて分かりにくいんだけど、その隠れ家的な〜？ カンジがたまんねっていうか？」
「わかります、わかりますー」
「おー、いいね。店の中はなんか不思議なカンジ？ 赤いっていうか……説明できねぇ。一言でいえば不思議空間だな。ま、清潔だし女の子も結構来てる。行ってみればわかる」
「辛さはどれがお勧めなんです？」
「一番辛くないやつは味が薄いからな。余程苦手じゃない限りこの真ん中の……」


何を話しているのか。数人の研究所メンバーと盛り上がっている。

長い脚は優雅に組まれ、絹のような髪はこの国ではまず見ない色をしている。不思議と染めているのだろうとは思えなかった。青い髪といえば英雄の血族が有名だが、彼のそれはずっと淡く、この港街で初夏に見られる霧の向こうの水平線の如く複雑な色彩をはらんでいる。どこか肉食獣を思わせる薄い黄色の瞳は柔らかな透明感を湛えながらも野性味に溢れ、ほのかに褐色を帯びた肌は南の地方の血を想像させる。

全体として高度に調和され一種の才とも言うべき美しさだが、一方で知識から紐解くと噛み合わないもののあるその色彩は、彼の持つ技術に加えてひどく私の興味を掻き立てるのだった。

気づけば私は彼を頭の先から足の先まで観察していた。これでは、先ほどの茶化しも仕方ないというものだ。不審に思われて良いことはない。なんでもない風を装いテーブルに近く。客と話があるのだからと軽く人払いをする。


「ずいぶん打ち解けていたようだね」
「あー…… 雰囲気のいい職場だったもんで。どうでした？ 結構自信はあったんすけど」


向かいの椅子に腰を下ろし若干の興奮を胸に、真っ直ぐに彼を見据えて答える。


「素晴らしい。素晴らしい、出来だった。色々尋ねたいはことはあるが……まずは残りの報酬と、これからの話だ」
「そりゃ良かった。ああ……」


言いながら彼は何かを行使した。わざと私にはわかるように。恐らく、小さな風の術だ。状況から判断して周囲に声を届きにくくするものか。魔術的な素養があることは今回の仕事を見ればいずれわかることだと理解の上での行動だろう。こうした術を使える者は地方や人種にもよるが決してそこまで少なくはない。問題は、規模はともかくその練度、なのだが。

彼はごく自然に、いかにも内緒の話をする風にこちらへ顔を近づけて囁く。


「堂々と話してるのに声が漏れねーつうのも不自然だろ。これだけは確認しておくぜ？ 俺は求められたモノを作る。その代わり、こっちが答えたくねーことには詮索はしない、何か気付いても墓まで持っていくという約束だ」
「ああ、わかっている。ただ、互いにより良い仕事のために、君に問題がない範囲で学術的な質問や相談はさせて欲しい」


私の言葉に、彼は悪そうな微笑みを浮かべて目を細める。長い睫毛が影を落とした。


「それは当然だな。そのへんはおいおい。適当にいい感じでうまくやろうぜ？ win-win ってやつよ」


軽く適当な口調に、どうしてかプレッシャーを感じてしまう。
考えるべきことが脳裏を渦巻く。
私の逡巡を知ってか知らずか、彼は続けた。


「たかがちょっと器具や部品を作るだけでと思うかもしれねーが、俺らみてぇな不法移民が取引をするにはこのくらいはしねぇと安心できねーんだ。この見た目だ。薄々わかってたろ？」


上質な紙に記された書面を長い指がなぞる。私に確かめさせるように。そこには、契約書にはごくありきたりな真っ当な内容しか書かれていない。実際に素晴らしい仕事をしてきた以上、彼が詐欺師などではないことは明らかだ。

自身の秘密を守るだけに過剰とも思える行動ではあったが、あの技術を思えば疑問はあれど納得はゆく。おそらく彼は不法移民として追われることを避けたいのと同時に、希少な技術を持つ者として監視下に置かれたり飼い殺しにされるのことを危惧しているのだろう。

この飄々とした雰囲気の通り、彼が自由を旨としているなら、それは想像に容易いことだった。


「これは “契約” だ。サインももらった。死ぬほど条件は読んだはずだ」
「ああ、ああ。相違ない」


彼が契約と口にするとき、不思議な圧力が私を襲った。気のせいかもしれない。それは僅かな違和感だったのだ。同時に風の術が解かれ、周囲の雑音が聞こえてくる。思いの外、私は緊張していたのだろう。異質な空間から現実に戻ってきたかのような心地に安堵し、その時の私はあの違和感について深く考えることはなかった。遠巻きにこちらを見ていた研究所メンバーが何を勘違いしたのかきゃーきゃーと騒いでいる。


「とまぁ、アレだ。いい仕事ができて俺も嬉しいからな。これは互いに得な取引なんだ」


立ち上がり差し出された右手に友好の意で答え、私は決意を絞り出した。


「もちろんだ。こちらも、願ってもないことだ。これからも宜しく頼む」


♦︎


それが、イツと名乗る彼との出会いだった。


いずれ友となることも。
長い付き合いになることも。
その時の流れの中で彼だけが姿を変えなかったことも。
私と彼の最後があのような結末を迎えることも。

私が “契約” を最後まで破ることはなかったことも。


何もこの時は、知ることがなかったのである。

ENo.69 くるい とのやりとり

イタズ(20) から 柿 を手渡しされました。

イタズ(20) に ItemNo.8 桃 を手渡ししました。

ItemNo.17 チーズおつまみ を食べました！
　体調が 1 回復！（10⇒11）
　今回の全戦闘において 活力5 体力5 防御5 が発揮されます。
　今回の結果でのスキル熟練度が伸びやすくなった！

百薬LV を 5 UP！（LV20⇒25、-5CP）
装飾LV を 2 UP！（LV97⇒99、-2CP）
料理LV を 3 UP！（LV0⇒3、-3CP）

イタズ(20) により ItemNo.29 柿 から射程1の武器『黒柿の木刀』を作製してもらいました！
　⇒ 黒柿の木刀／武器：強さ381／［効果1］体力30 ［効果2］－ ［効果3］－【射程1】

現実(1152) の持つ ItemNo.4 呉藍 から装飾『翡翠の玉環』を作製しました！

サイタマ(884) により ItemNo.21 ビーフ から料理『ビーフヘッドカレー』をつくってもらいました！
　⇒ ビーフヘッドカレー／料理：強さ54／［効果1］活力5 ［効果2］体力5 ［効果3］防御5

くるい(69) により ItemNo.29 黒柿の木刀 に ItemNo.4 駄物 を付加してもらいました！
　⇒ 博打付加！［ 2 3 3 = 8 ］通常付加
　⇒ 黒柿の木刀／武器：強さ381／［効果1］体力30 ［効果2］攻撃10 ［効果3］－【射程1】

B.A.D-0(436) とカードを交換しました！

ランドグラスプ （ランドグラスプ）


ムスケルクラフト を研究しました！（深度0⇒1）
ムスケルクラフト を研究しました！（深度1⇒2）
イディオータ を研究しました！（深度1⇒2）

コンテイジョン を習得！
ドリンカー を習得！
トニック を習得！
百孔千瘡 を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

イタズ(20) は 何かの歯 を入手！
イツ(990) は 苔石 を入手！
イツ(990) は 不思議な布 を入手！
イタズ(20) は ビーフ を入手！
イツ(990) は 不思議な布 を入手！
イツ(990) は ビーフ を入手！

カスミ区 M-5（沼地）に移動！（体調11⇒10）
カスミ区 M-6（沼地）に移動！（体調10⇒9）
カスミ区 N-6（沼地）に移動！（体調9⇒8）
カスミ区 O-6（沼地）に移動！（体調8⇒7）
カスミ区 P-6（沼地）に移動！（体調7⇒6）

［871 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［441 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［500 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［177 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［377 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［286 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［199 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［137 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［56 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［122 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［92 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［90 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［83 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［0 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［8 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

　　　ザザッ――

　

　

　






チャットにノウレットが現れる。

･･･が、どうも雰囲気が異なっている。

　





　




　





　





　

　

　

チャットが閉じられる――