
地を這うように縦横無尽に素早く駆けながら、
距離を詰めていく。
それは相手の視界から逃れるかのようで、
何かを警戒するかのようにじわりじわりとした距離の詰め方だ。
対する相手は微動だにせず、
静かに映美莉を見据える。
疾風の如く駆け、
眼で追うのもやっとなほどだというのに焦る事もなく、
ただ静かに前を見据え――
次の瞬間、
視界から映美莉の姿が掻き消える。
映美莉がやったことはそう難しい事ではない。
それは――
素早い跳躍からの上からの奇襲である。
左右に動き目をならさせた上での強襲は、
突然の上下の動きに対応を遅らせ誤らせる効果がある。
そして、
スピードと持ち前の怪力に関して映美莉には自信がある。
自信があるからこそ、
この一撃は対応できない。
対応できないと信じて疑わず、
棒立ち状態の相手の脳天へとかかと落としを決め……
ようとしたところで、
相手の老人の腕が動く。
そのまま振り下ろされる足を掌で流し、
軌道を変え、
重心がブレた所に地面に叩きつけるように、
綺麗な投げを決めようとする老人に対し、
慌てて映美莉は霧となって逃げようとするも、
あまりにも綺麗な流れと動き、
そして己のスピードにそのまま力を加えられる事で、
加速された事により、
その力を発揮する間もなく――
「――ごふっ!」
あっさりと地面にたたきつけられる映美莉。
そのとてつもない衝撃によって、
そのまま映美莉の意識は闇へと落ちていき……
ばしゃーん!
突然、映美莉の顔に冷たい衝撃がはしる。
「わっぷ!」
あまりにも突然の出来事にびっくりして飛び起きる。
上半身がぐっしょりと濡れている。
どうやら頭から水をぶっかけられたらしい。
跳ね起きる映美莉に対し、
「ようやく起きたか。」
落ち着いた男の声が聞こえる。
先ほどまで映美莉と対峙していた老人。
年のころは70を超えているだろうか?
それでもなお、
背筋はピンと伸びており、
かくしゃくとした様子、
そしてすごんでもいないというのに感じられる威圧。
それは、
年をまるで感じさせない。
「……今日こそは一撃与えれると思ったのだが……
何が不味かったかな?」
そして、
老人がまるでダメージを受けたようすがないのをみて、
溜息交じりに問いかける。
「……狙いも動きも悪くはなかった。
ためらいがないのもよくやったといえようが……
読みやすくはあったな。
技量もあがっている。
それであのスピードと力なら、
まず並大抵の相手ならどうにかできたかもしれぬ。
だが、それでもなお、
己の能力に頼り過ぎだ。
咄嗟の判断力も含めてみても悪るくはないが、
その能力を上回る何かをもっている相手に対して脆弱すぎる。
これは最初もいったし、
改善は見込めている。
見込めているが……
まだまだ未熟者という事だ。
精進するといい。
稽古はいつでもつけるし、
相手にもいつでもなろう。
私としても自分が若返ったようでな。
楽しいし稽古になる。」
淡々と告げられるのはいつも通りの言葉である。
正直二桁に届きそうなくらい聞いた覚えのある言葉を聞いて、
映美莉は――
「結局いつも通りか。
まぁ、ちゃんと上達してる証は証なのだろうが……
まだまだ足元にも及ばない感じだなぁ。
せめて一撃、一撃でも与えて、
こう…いい感じに達成感をそろそろ得たい。」
溜息をつきながら正直に話す。
この老人に対して、
下手に言いつくろったりしても無意味というか、
何の益もないのはよく知っている。
そして、
正直に話す事で得られる益もまた。
「何度もいっているが、
一撃でも貰ったらさすがの私もそれでノックアウトしかねないよ。
それほど強靭な体を私はもってないからね。
若い時ならまだしも、
年が年だしね。
早々無茶はできないさ。
そういう意味では本当に危ない所だった。
君のスピードがもう少し速くても遅くても、
こちらが逆にやられていた可能性がある。
トップスピードを見切らせないために、
距離を詰める際のスピードも緩急おりまぜ、
読ませないようにしてたのもまたよかった。」
そう。
正直に言ってくれればきちんと答えてくれるのだ、
この老人は。
いつもなら褒めるべき点と同時に悪い点も教えてくれるのだが……
少し考え込む映美莉。
そんな映美莉の様子をみて、
ニヤニヤと老人は笑みを浮かべ、
その様子を見て気づく。
「なるほど、
力を見誤らせるように仕向けても、
見誤らない相手には通用しないし、
やる事が素直過ぎたと……
確かに……
師匠は格上、
それもよく知る相手だから、
こちらが強くなったと思っても、
それすら見抜かれても仕方ないか。。。
もっと考え……るより、
色々やりながら地力を鍛えるしかないか。」
はぁ、とまた溜息をつきながらいう映美莉に、
老人……映美莉に師匠と呼ばれた男は満足そうに頷き、
「つまりはそういう事だね。
考えて戦うのもいいけれど、
映美莉君、
君は考えながら戦うのは最低限にしたほうが良い。
最初にあった時からというか、
君の異能はあからさまに人にとって過ぎた力を得るものだからね。
考えれば考えるほど慢心を挟んでしまう。
それなら、
戦闘においての最善をたたきだせるようにしたほうがいい。
戦いの慢心、
無駄を省く事になるから。
どうすればいいかは経験と鍛錬。
地力をつけるしかないわけだ。
という訳で頑張ろうか。
今日は時間があるっていってたし、
みっちり鍛えてあげよう。
変な癖もついてるみたいだからね。
大丈夫、
映美莉君なら一日で出来るさ。
出来なくても出来るようにするけど。」
そして、この強制連行である。
いや、予定はしていたが、
目が笑っていない。
「元よりそのつもりではあったが……
その、お手柔らかにという事は……」
何か嫌な予感がしたでそういってみると、
「映美莉君は冗談が上手だなぁ。
君の頑丈さもよーくしってるんだよ?
それでいてお手柔らかになんてことなるわけないじゃないか。
寧ろやりすぎていいくらいだとも。
大丈夫大丈夫、
全力でやっても映美莉君なら無事だって。
という訳で早速始めよう。
さっきは手合わせだったから意識を飛ばさせたけど、
ちゃんと意識とばさせないように気を付けないとね。
時間は有限無駄にしたくない。
それじゃ、いくよ?」
冗談がうまいなーと受け流されながら、
逃がさないとばかりに威圧がとんでくる。
「……覚悟決めるか。」
そんな中、
映美莉が出来る事はたった一つである。
大人しく状況に流されるしかない。
つまり地獄の特訓である。
合掌。
――終わってみれば夜も更け、
ふらふらしながら帰宅する映美莉の姿があった。
本来ならばここからいつもの日課のパトロールなのだが……
「どうするかな……」
正直いって、
この状態で誰かとやりあうのはしんどい、
なんというか精も根も尽きている。
歩いているのがやっとではある、
ならばもうここで家に帰って寝るのが正解なのではないか。
実際それが正解だろうとは思うのだが……
「……」
それでも、
もし女の子が襲われていたらと思うと気が気ではない。
割合遭遇率はあるとはいえ、
実際のところいつもあるわけではないし、
空振りの時もある。
だが、それでも可能性はゼロではないのだ。
もし自分が多少無理をする事で、
女の子の笑顔が守れるそう思えば……
「……今日も頑張ろう。」
ふらふらしながらもパトロールをする事に決定する。
いけるところまでいけばいいかななんて思うが、
まぁ、無理ならその時考えるか、
逃がすくらいはできるだろう。
そんな風に考えるあたり、
楽観的なのかなんなのか……
ふらりと今日も映美莉は夜の街に消え、
パトロールをするのだった。
なお、パトロールの結果、
男を助けて終わりだったそうな。
完全なくたびれもうけである。
不幸中の幸いは荒事に発展しなかった事だろう。
翌日、朝から大学へ行き、
授業の為に出席していた映美莉は、
「ZZZzzzzzz」
授業が始まるその直前までぐっすり寝ていた。
完全なる熟睡である。
精神的にも肉体的にも疲れていたのだ。
「映美莉、起きて。」
隣にいた葵にゆさゆさゆすられておきるも、
ぼんやりとまだ眠い感満載である。
そんな映美莉の事情も関係なく授業は始まって――
「とまぁ、そういう訳で、
疲れてたのか、
ついつい眠ってしまってな……
思ったより疲労がたまっていたらしい。
起こしてくれて助かった。
起こされなかったら多分そのまま夜まで寝てた気がする。
って……
どうした。
変な顔をして。」
授業が終わると、
すまないなとばかりに映美莉は横にいた葵に助けてくれたお礼をする。
その時にどうしてそんな事になったのか、
昨日の出来事を話したのだが、
何かきょとんと変な顔をしていたので首を傾げて、
どうしてそんな顔をしているのか問うと……
「映美莉も修行なんてするんだ……
意外……」
そんな事を言われて、
がっくりと机に突っ伏す映美莉。
「意外といわれたのが意外だよ。
とはいっても、
本格的に習ってるわけじゃないからな。
ちょっとした奇縁というやつだ。
実際本格的にやってる人からすれば、
技術もつたないものだと思うぞ?
とはいえ、こういう経験があるとやはり、
夜のパトロールのいざという時に役にたつからな。
異能は絶対ではない。
自分の能力で対処できない事に遭遇した時の手札は必要だからな。」
当たり前さ、と机に突っ伏した上体を起こし、
肩を竦める映美莉に、
葵は思わず笑って、
「意外だけどよく考えると何気に努力家だよね。
凄いけど、何か可愛らしい、なんて。」
茶目っ気たっぷりにいわれ、
再び机に突っ伏す映美莉。
可愛いじゃなくて、
カッコいいとか、
流石だねと言われたかった……
などと考えながら、
今日も思惑通りはいかない映美莉の一日なのであった。
ちなみにこの日の映美莉の忘れたものは、
筆記用具である。
当然葵に借りる事になったわけで、
ダブルパンチである。
実に平和な日常だったとさ。
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えみりん 「祝!キーボードご臨終寸前!」 |
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えみりん 「いや、いくつかのキーの反応死にかけてるだけだけど!」 |
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えみりん 「まさかのトラブルだよ。いや、だましだましつかってた我にも責任あるけど。」 |
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えみりん 「だましだまし使ってなんとかしてるけど」 |
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えみりん 「チキレのタイミングだよ!え、間に合うの?間に合ったけど。」 |
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えみりん 「という訳で未完成ならごめんねするところでした。はっはー。」 |
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えみりん 「次回までには新しいキーボードにしてるから、パソコン壊れたとかなければ、」 |
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えみりん 「それからもう一つ、懸念があるがあるとすれば、」 |
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えみりん 「そうだね、ネタだ!ネタが完全にきれてない限り大丈夫。」 |
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えみりん 「いや、うん。不慮の事故ばかりはどうしょうもない。」 |
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えみりん 「皆も気を付けような」 |
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えみりん 「予期できる事じゃないだって?そうだね、もっともだね!」 |
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えみりん 「という訳で本日の日記は日常回。」 |
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えみりん 「ぐわーーーーーー!やられたーーーー!」 |
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えみりん 「という訳で別に無敵という訳ではないのである。」 |
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えみりん 「勝ち筋うっすとか、強すぎでは?というのは認めるけどね。」 |
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えみりん 「だが、絶対に勝ってみせる、師匠がいきているうちにな。」 |
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えみりん 「私は登り始めたばかりだからよ、この吸血鬼坂を……」 |
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えみりん 「ただやっぱり思うのは戦闘は難しいね。」 |
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えみりん 「書き方工夫してカッコよく描きたい、いや、綺麗に描写したいけど」 |
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えみりん 「難しいねぇ……」 |
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えみりん 「ま、くよくよしてもしかたない、我なりの書き方があるさ、多分な!」 |
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えみりん 「そしていよいよ、葵ちゃんいないとやっていけない体になってない?」 |
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えみりん 「ほんとに大丈夫か???」 |
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えみりん 「我の将来に不安しかないと同時に、それはそれで幸せという恐ろしい状況!」 |
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えみりん 「これが……孔明の罠か……!」 |
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えみりん 「という訳でまた次回!」 |
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えみりん 「いつもよんでくれてありがとう!」 |

[871 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[441 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[500 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[177 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[377 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
[286 / 500] ―― 《商店街》より安定な戦型
[199 / 500] ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
[137 / 500] ―― 《古寺》戦型不利の緩和
[56 / 500] ―― 《堤防》顕著な変化
[122 / 400] ―― 《駅舎》追尾撃破
[5 / 5] ―― 《美術館》異能増幅
[92 / 1000] ―― 《沼沢》いいものみっけ
[90 / 100] ―― 《道の駅》新商品入荷
[83 / 400] ―― 《果物屋》敢闘
[0 / 400] ―― 《黒い水》影響力奪取
[8 / 400] ―― 《源泉》鋭い眼光
―― Cross+Roseに映し出される。
ザザッ――
ノウレット
ショートの金髪に橙色の瞳の少女。
ボクシンググローブを付け、カンガルー風の仮装をしている。やたらと動き、やたらと騒ぐ。
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ノウレット 「ごきげんよう皆さん。案内人さんには悪いですが、場所を借りますよ。」 |
チャットにノウレットが現れる。
・・・が、どうも雰囲気が異なっている。
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ノウレット 「何やら妙な輩が妙なことを言っておりましたが、全て戯言でございます。 ゲームへの支障はありませんのでご安心ください。」 |
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ノウレット 「混乱を招くような者は、こちらで対処させていただきます。」 |
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ノウレット 「そして・・・・・共に条件を満たしましたので、以前お伝えしました2件・・・18:00より開始いたします。」 |
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ノウレット 「ひとつ。影響力が低い状態が続きますと皆さんの形状に徐々に変化が現れます。」 |
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ノウレット 「最初に皆さんが戦った相手、ナレハテ。 多くは最終的にはあのように、または別の形に変化する者もいるでしょう。」 |
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ノウレット 「ふたつ。決闘を避ける手段が一斉に失われます。 ベースキャンプにいる場合でも避けられませんので、ご注意ください。」 |
 |
ノウレット 「・・・それでは引き続き、ゲームをお楽しみください。」 |
チャットが閉じられる――