【注意】前回の焼き直し回です。半メタな内容となっておりますので予めご注意ください。
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「『遭遇戦』は発生しないぞ」 |
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「えっ」 |
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クスクス |
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「…………」 |
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コホン |
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…TAKE:2! |
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雫 「……そう」 |
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雫 ・・・・・・・・・・・・ 「そいつがハザマの住人かどうかなんて、見た目だけじゃ分からない」 |
自分達のCross+Roseには、今現在もはっきりと「イバラシティ」という文字が表示されている。
自分達の陣営だ。…だが。
これこそが思考実験だ。
今ここに表示されている文字は、本当に「イバラシティ」という文字なのだろうか。
今ここで誰かに表示を読んで貰い、そこで「イバラシティ」という言葉を得ることが出来たとして、
はたして彼等が見た文字は、口から出た音は、自分が耳にした単語は等しく「イバラシティ」なのだろうか。
当然だが、ハザマの住人には記憶の上書きなんてものは無いだろう。
ナレハテもかつては陣営側の存在だったそうだが、
あの状態を見る限り、上書きなど既に途絶え、元となったオリジナルももはや存在しているかどうか。
だとしたらそれはもう、
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雫 「まるっきりあたし等そのものじゃない…」 |
見た目こそ陣営側と大差は無いが、
存在そのものはナレハテやハザマの住人にこそ近い。
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雫 (……いいや違う!んなわけあるか! あたし達は間違いなく人間、イバラシティの陣営よ!) |
Cross+Roseがそれを証明してくれている。
このハザマ、この戦争においてこの機能こそが絶対的に中立かつ公平な存在である筈だ。
それでもそれをいまいち信じ切れないのは、ここの所ずっと抱き続けている不信感が原因だ。
己の目が、耳が、思考が、記憶が、感情が。
誰よりもまず自分自身が信用ならない。
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雫 「………仮に」 |
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雫 「仮に陣営側が本当に『コピー』のようなものだったとして」 |
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雫 「そしてあたし等もまた、例に漏れず『コピー』のようなものだったとして」 |
記憶が上書きされない状況というのは、
オリジナル、もしくはそこへ繋がる導線に障害が起きているとも考えられるが。
だが、もう一つ。
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雫 「……『"オリジナルだから"こそ、上書きが必要ない』可能性もある」 |
それは『コピー』でありながら、同時に『オリジナル』でなくてはならない。
だがその2つは決して矛盾するわけではないのだ。
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雫 「……複製元を消せば、コピーこそが唯一のオリジナルになる」 |
だが。
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雫 「……でもそんなの、現実的じゃあないわね 何故わざわざ消す必要があるの?そのままでいいじゃない、消す理由なんて」 |
コピーこそが必要で、オリジナルが不要になるという理由がない。
何処へでも行けるわ 私が生きるその場所
何処でだって生きて行けるわ 私が望むその場所
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雫 (……『望む』…) |
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雫 「いいえ…望む理由がないわ」 |
暇を持て余した挙句におかしな事を言い出したものだと、当時は軽く流しもしたが、
今にして思えば、あの言葉こそが伊予島自身を表した言葉のようにも思える。
人は、
伊予島は、一人では生きて行けないのだ。
常に誰かの庇護を必要とする。
思考を放棄し、労働を知らない伊予島が生きて行くには、
特定の対象と何らかの関係を保ち、そこから物理的な援助を受けなければならない。
それは両親であり、夫であり、時には従者という形を持つ。
雛がそうであるように、伊予島の隣には常に保護者という名の存在があった。
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雫 「八重子…あんた…」 |
そうだった。
銃に限らずとも、伊予島にはそういった類の発言や行動が多かった。
どうにかして自分の価値を雫に示そうとする。
そうして何かしらの恩恵を雫から得ようとする。
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雫 「……銃を撃たなきゃ、あたしに捨てられるとでも思ったの…?」 |
そういう事なのかもしれない。
銃を撃たなければならなかった。
他に己の価値を証明する術を知らない伊予島には、
ハザマという独立した場所、戦争という状況、戦闘という必要不可欠な形で銃を撃ち、
それを雫に見せることで、保護者を自分の傍に繋ぎとめる必要があった。
だから望んだ。ハザマを。
だから消した。オリジナルを。
そういう意味でなら、確かに理由はある。
自分が望む場所で生きる為。
その為ならば、自分自身ですらも不要と認識し、その存在を消してしまう。
ハザマでなら胸を張って生きて行けるとでも思ったか。
自分にも価値があるのだと。
此処でなら、それを他者に認めさせることができる存在でいられるのだと。
実際には、雫は伊予島の銃の腕などさほど注目していなかった訳だが。
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雫 「…承認要求のバケモノが…」 |
自分も同類だという自覚があるからこそ思い至ってしまった。
愚かな、と。
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(そんなもの、) |
…そんなものがなくても
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雫 「……冗談じゃないわ、ハザマなんて!」 |
そんな理由で、こんな世界に一生縛り付けられるなんて。
だがもしそうなら、同時に希望も見えてくる。
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雫 (もし望む場所に行くことが出来るというなら! そのために、自分達ですらも消せるというのなら!) |
逆に言えば、望めば『戻れる』し『作る』ことも出来るのではないか。
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雫 「八重 」 |
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雫 「 」 |
呆然と立ち竦む。
何を言えばいい?何を訴えればいい?
情に訴えるか?涙でも流して。
感情を揺さぶればいいのか?「考え直して」と。
一体何を言おうとしているのか
今更。
ここまで壊しておいて。
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雫 「 」 |
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雫 「…いけない、ぼんやりしてた」 |
そもそも、全ては仮定なのだ。現実的ではない空想の話。
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雫 「あたし…何を考えていたんだっけ……」 |
そうだ、伊予島の異能だ。
確か『どこへでも行ける異能』といった可能性までは出ていたのだったか。
もう少し深く考えてみよう。
語り部
『棘の頂』の物語を紡いでいる。
色々やらかしてしまい、今一番メンタルがヤバい。
実は語り部としてはまだまだ新米。
おばあさんを探している。
影の声
語り部の傍でなりゆきを見守っている。
出来ることはもう何もなく、ただまだ存在するだけ。
魔女の存在による影響を警戒している。
おじいさんを想っている。
魔女
『棘の頂』の物語を聞いている。
語り部がやらかしたので、当然彼女には弄って頂く。
実は物凄くありがたい立ち位置にいらっしゃる。
ワンちゃんを飼っている。
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「以上 09:錐 [スイ] Section-B(改) 終わり」 |
魔女はまだクスクス笑っている。
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「設定が変わったのね? クソチョンボからのネタばれアンド改訂で、物語のオチが変わってしまったのね?」 |
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「変わってない(食い気味) 描写は変えたが、物語の進行自体は断じて変えてはいないぞ」 |
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「あそこで俺…じゃない、私が紡ぎたかったのは『ハザマ側かも?じゃあ狩られる側なの?という恐怖心から一時的に精神ストレスが発生してAAが発動した』という描写であって決して2人をハザマ陣営設定にしたかったとかそういう訳ではなくて何ならこの部分って元々最後まであやふやなままで終わる部分にもなっていたわけで」 |
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「見苦しい」 |
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「はい」 |
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「いや」 |
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「人は誰だって間違いを犯すものだ 許されなければならない 許して」 |
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「ついでに言えば、白南"海"よね?」 |
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「やめて」 |
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「戦闘相手の名を間違えるな」 |
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「すみませんでした」 |
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カァ |
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「じゃあ2人は、イバラシティ陣営と考えて良いのね?」 |
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「良いです……ていうかそこそんな重要じゃないんで… 因みにもう言っちゃうと、本家本編の流れ次第では、あらゆる部分が改訂になるからねこれ」 |
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「……」 |
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「……」 |
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「……」 |
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「……あの、そういう訳で…いいですか?続きやって…」 |
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「酷過ぎる」 |
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「嫌な事件だったわね…」 |
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ギャア |
語り部の周囲にはうんこの雨が振っている。

[860 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[431 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[492 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[171 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[369 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
[274 / 500] ―― 《商店街》より安定な戦型
[193 / 500] ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
[134 / 500] ―― 《古寺》戦型不利の緩和
[47 / 500] ―― 《堤防》顕著な変化
[116 / 400] ―― 《駅舎》追尾撃破
[5 / 5] ―― 《美術館》異能増幅
[1 / 1000] ―― 《沼沢》いいものみっけ
[24 / 100] ―― 《道の駅》新商品入荷
[72 / 400] ―― 《果物屋》敢闘
―― Cross+Roseに映し出される。
ザザッ――
暗い部屋のなか、不気味な仮面が浮かび出る。
マッドスマイル
乱れた長い黒緑色の髪。
両手に紅いナイフを持ち、
猟奇的な笑顔の仮面をつけている。
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マッドスマイル 「――世界の境界を破り歩いてはその世界の胎児1人を自らの分身と化し、 世界をマーキングしてゆく造られしもの、アダムス。」 |
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マッドスマイル 「アダムスのワールドスワップが発動すると分身のうち1人に能力の一部が与えられる。 同時にその世界がスワップ元として選ばれる。スワップ先はランダム――」 |
女性の声で、何かが語られる。
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マッドスマイル 「・・・・・妨害できないようね、分身。」 |
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マッドスマイル 「私のような欠陥品でも、君の役に立てるようだ。アダムス。」 |
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マッドスマイル 「・・・此処にいるんでしょ、迎えに行く。 私の力は覚えてる?だから安心してね、命の源晶も十分集めてある。」 |
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マッドスマイル 「これが聞こえていたらいいけれど・・・・・可能性は低そうね。」 |
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マッドスマイル 「絶対に、見つけてみせる。」 |
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マッドスマイル 「そして聞こえているだろう、貴方たちへ。 わけのわからないことを聞かせてごめんなさい。」 |
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マッドスマイル 「私はロストだけど、私という性質から、他のロストより多くの行動を選ぶことができる。」 |
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マッドスマイル 「私の願いは、アダムスの発見と・・・・・破壊。 願いが叶ったら、ワールドスワップが無かったことになる・・・はず。」 |
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マッドスマイル 「・・・これってほとんどイバラシティへの加勢よね。 勝負ならズルいけど、あいにく私には関係ないから。」 |
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マッドスマイル 「アダムスは深緑色の髪で、赤い瞳の小さな女の子。 赤い服が好きだけど、今はどうかな・・・・・名前を呼べばきっと反応するわ。」 |
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マッドスマイル 「それじゃ・・・・・よろしく。」 |
チャットが閉じられる――