［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

――目の前に広がる光景の。
――余りの現実感のなさに。

悲鳴も、叫び声も、うめき声すら何一つ出てこなかった。
ただ、耳障りな蝉の音がいつまでも頭痛のように耳の中で反響している。


倒れ伏す、動かない風凪。
そのわき腹から流れ出す鮮血。
血に塗れた地面。

顔から、体から、血の気が引いていく。


視界の外側で何かが動く。
指先一つ動かせないまま、視線だけをそちらに向ける。

血に染まったナイフを片手に下げたまま、
虚ろな表情の男が、茫洋と目線を彷徨わせる。
緩慢な動作で腰に凶刃を仕舞うと、一度だけ太ももを掻き、
そのままこちらに背を向け、歩き出した。

疑問が波濤のように湧き。
それらは混乱の中で言葉にならず霧散する。
その男が風凪マナカを刺したことはまず間違いなかったし、
後から考えてもそこでその男を見逃す理由は一つもなかった。
冷静に考えれば追うべきか追わざるべきかの二択が出てしかるべきだと思うが。

そんなことすら考えられないほどに、目の前の風凪の腹部の赤が。
俺の視界にこびりついて離れなくなっていた。
まるで膝をつくように、気付けば風凪マナカの身体のそばに跪いていて。
膝が風凪の血だまりに濡れて他人顔の水音を跳ねさせた。


「………」

血溜まりに。
風凪マナカが倒れている。
助け起こそうとした手が、風凪自身の血に塗れ、その量に愕然とする。


さっき俺が告白し。
互いの関係をそういう関係じゃないと返し。
俺とは違う人生の道に向かって歩き始めた少女が。











――残酷で理不尽な刃で以って、その人生を終えようとしていた。


呼吸が、上手くできない。
余りの絶望とショックで、現実感が全くない。
頭の中にはただ二文字の『何故』という言葉が渦巻いている。
そしてそれは、その裏側で、認めたくない明確な原因を、俺の背中に押し付けてきていた。


何度も。
何度も何度も何度も見てきた。
こうやって、凶刃に倒れる者。
果物のように割られる頭。
血にまみれて助けを乞う姿。

残酷で、あっけなく、無慈悲で、何の感慨も物語も必要のない。
人の死。

何度も。何度も何度も。
それが齎される瞬間を見てきたから理解できていた。

これは。
この非現実的な状況は。
この絶望は。

俺が。
俺たちが。
俺たちの世界が。

風凪マナカがに齎した。
少女が踏み込む必要なんかない、薄暗い世界が齎したものだと。

認めれば。
絶望で、今すぐここで死んでしまいたい衝動に襲われた。
一瞬だけ視界がブラックアウトして、地面に額を擦りつける。
楽観的な性格だと思っていた自分が人生で初めて、
心の底から「産まれてこなければよかった」と思った。

産まれてこなければよかった。
俺なんかいなければよかった。
若宮線引なんて人間がいなければ。


風凪マナカは。
風凪マナカの人生には。
何の問題も起きずに、平穏なままだったのに。


絶望を、喉の痛みを無視して、強引に飲み込む。
まだ。まだ折れるわけにはいかない。

地面を指先で抉りながら上体を起こし、
震える指先で風凪の口に手をやると、呼吸をしていなかった。
胸に目をやると心臓の上下がない。
反射的に脈をとると、ほんの僅かだけの鼓動が存在した。
心臓の鼓動が微弱になっていて、体温が徐々に下がり始めている。
逃れられない死の予兆がそこにあり、俺は自分の歯の根が鳴るのを感じた。

振動と冷や汗で、俺の右目から。
眼帯が、外れ、滑り落ちた。


死。
死。
死。

死ぬ。
風凪マナカが、死ぬ。
命が失われる。
俺の目の前で、俺の腕の中で。
当たり前に幸せを享受するべき、普通の女の子が。
全てを拒絶した俺を現実に繋ぎとめてくれた恩人が。


そんなもの。
そんな未来。






























「認め、られるかよ……！！」



両目が見開かれ。

両手の指から繋がる全ての線が、視覚化される。
秒単位で失われていく命の灯に、他人を頼る選択肢は消え失せていた。
目の前の人間が、あとどれくらいで死を迎えるのか『経験則』によって正確に分かっていたから。
今から他の何かに縋り、頼っていたら、圧倒的に遅いことが理解できていたから。

逆に。
覚悟が決まった。


大きく息を吸い。
止める。

間違ってはいけない。
誤ってもいけない。
今までのすべてを、無駄にしてはいけない。
だから俺は、こういうときのために俺は。

本当に失いたくないものを、一つでも多く救うために俺は。

――見たくもない他人の死に向き合って、その死体を辱めて来たんだから。

一瞬が、粘度を帯びて扁平に広がる。
過度の集中によって、視界が真っ赤に染まり、頭痛が始まった。
両目の奥が針で刺すような痛みに襲われて、額を押さえる。
『切断線』にて風凪の血にまみれたシャツを切り裂き、傷口を露にした。
傷口は深く、まだ出血を続けており、俺は顔を歪めた。

それでも。
俺の指先から出る『線』は、一つの間違いもなく紡がれ始める。

血管を繋げ、神経を結び、骨を接ぐ。
傷口を塞ぎ、不必要なものをどけ、生命のバイパスを繋ぐ。
何度だって練習をした。
自分の腕や太ももを抉って試したこともある。
実践と学習の反復は、傷跡のように俺の脳裏に刻み込まれている。

間に合え。
間に合え。
間に合わせろ。

ここで力及ばなかったら。
俺は何のために産まれてきたのか分からなくなる。
何のためにここに存在して、
何のために死にかけの風凪を前にいたのかが、わからなくなる。

道理を超え、倫理を跪かせ、論理を駆逐しろ。
死者を冒涜し、常識を凌辱し、奇跡を模倣しろ。

息をすることも、瞬きすることも、心臓の鼓動をすら忘れて、
一つずつ、丁寧に、迅速に、風凪マナカを『繋いでいく』。
これ以上の出血をせぬように、これ以上鼓動を失わぬように。
生命を風凪マナカに結び付けるような祈りを込めて。


きっと、時間にしては数瞬のことだ。

圧縮された時間が元に戻り、色を取り戻す感覚を得たとき、
大量の汗が頬を、胸元を伝わる感触がして、風凪マナカの手術は終了していた。
『縫合線』にて理外に繋がれた風凪の臓器や皮膚は
血の汚れを残して繋ぎなおされ、正常に戻されている。
震える指先と背後から殴られ続けているような頭痛だけを残して、
俺は俺のできる全ての治療を終えていた。

ふらつく頭を片手で押さえて、
吐き気を堪えながら、風凪の脈を取る。


――脈拍は。
さらに、弱まっていた。


これも。
何度も、経験してきたことだ。
何度も経験してきてしまったことだった。

「……っっっ！」

記憶が。
どす黒い感情と共にフラッシュバックする。
死と一番近く寄り添っていた時期に、何度も見てきた光景だ。
どんなに正しく繋ぎなおしても。
どんなに正確に施術を終えたとしても。
人の死は失われたものによって簡単に訪れる。

俺は知っている。
最善の手を尽くしても。
人の命は指先の隙間から零れ落ちることが――『当たり前』でもあることを。
何一つ、間違ってはいない。
失った血の量があまりに多すぎたのか、或いは刺突傷のショックへの対処が遅れたのか。

風凪の呼吸は、もはやしてないも同然の弱さになっていて。
心臓の鼓動も、緩やかにその仕事を放棄し始めている。

「風凪……ッ」

耳元で、呼びかけるように叫ぶ。
手を握り、肩に手をやり、ぐったりと青白い顔の風凪の顔を見る。

死ぬな。
こんな詰まらないことで。
こんな最悪な形で。
こんな最低の場所で。

お前は。
俺なんかとは違って。
幸せになるべき人間なんだから。

「死ぬな……！
　風凪ッ……！！」

もはや。
それは縋る言葉以外の何物でもない。

どんなに正しい技術を以ってしても。
どんなに破格の異能を以ってしても。
どうしようもならないものが、どうしようもないことは。
この世界の自明だ。
出自が変えられないように、己の心が変えられないように、
若宮線引が若宮線引であることが変えられないように。


風凪マナカは。
若宮線引に出会ったから、ここで死ぬことは。
若宮線引には、変えられないことだった。


何が『縫合線』だ。何が『切断線』だ。
何が――『指線引き』だ。
名前にすら傷跡を残す、大層な異能を以ってしても、
傷ついた後輩一人助けられないで、何が異能だ。

目の前で失われていく、大切なものを繋ぎとめても置けないで、
何がヤクザの鉄火場を潜ってきただ。
今までの人生の全てを賭けても、
今までの人生の何もかもを捧げても、
何一つことを成せないで、何が人生だ。


風凪の身体が、小さく跳ねた。

時間は、再び粘性を帯びる。

俺は、見てしまう。
――風凪マナカの死の瞬間を。


僅かに目を開き。
最後の呼吸を吸うのが。
虚空を見上げ、何かを手放すようなその瞳が。
心臓の、最後の一鼓動が鳴るその瞬間が。



大音響の、蝉の声と共に。

永遠に。
永遠にも近い長さで俺に。

俺に。

風凪マナカの、死を伝えてきた。


慟哭すら、出なかった。
ただ、その永遠の責め苦の中で。

俺は。





――『空に繋がる赤い線』を見た。

風凪の右手の薬指から、
空に向けて、緩く、弱く繋がっている線が。

まるで和紙が水に溶けるような儚さを以って、
目の前ですぅ、と切れ離れるのを、見た。





俺は。

ズクズクと痛む左目で、
割れそうな程に脈打つ右目で、
その『赤い線』を見ながら。


一秒の迷いすらなく。


震える手を、勢いよく伸ばしていた。


















































その線を掌で握りこんだ瞬間。















確かに、右耳の裏の辺りで。



――ハツ、と。


・・・・・・・・・
ゴムの切れるような、あっけない音がする。




俺はその瞬間。
　　　・・・・・・・　
――『やってしまった』と、そう、思った。

MISSIONによる獲得影響力の誤り分を現在の影響力に反映しました。
［第7回］チェックポイント《森の学舎》 ／ 誤：26 正：29

ゾンビを一掃すると、物陰から再び何かが現れる。

　



ロストのフレディオ･･･のようだ。

　




周囲に散乱したゾンビを眺め、




　

こちらの姿をじーっと確認する。






真剣な眼差しで訴える。

　




考え込むフレディオ。

　

　

　





フレディオは芋焼酎を欲しているようだ。

エロ本と間違えないよう注意しなければならない。

ラフィ(423) から 100 PS 受け取りました。

煉(661) に ItemNo.12 牙 を送付しました。

響鳴LV を 3 UP！（LV27⇒30、-3CP）
付加LV を 5 UP！（LV40⇒45、-5CP）

ItemNo.33 攻撃線 に ItemNo.35 すごい木材 を付加しました！
　⇒ 博打付加！［ 6 4 5 = 15 ］通常付加
　⇒ 攻撃線／呪器：強さ505／［効果1］攻撃20 ［効果2］攻撃20 ［効果3］自滅17【射程1】


ニノマエ(46) とカードを交換しました！

No Date... （インファイト）


五月雨 を研究しました！（深度0⇒1）
五月雨 を研究しました！（深度1⇒2）
五月雨 を研究しました！（深度2⇒3）

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

線引(506) は 毛皮 を入手！
線引(506) は 何かの骨 を入手！
線引(506) は 腐肉 を入手！
マナカ(507) は 腐肉 を入手！
線引(506) は 腐肉 を入手！
線引(506) は 腐肉 を入手！
マナカ(507) は 腐肉 を入手！
線引(506) は 腐肉 を入手！
線引(506) は 腐肉 を入手！

特に移動せずその場に留まることにしました。
体調が全回復しました！

『ヒノデ区 M-11：チェックポイント《大通り》』へ採集に向かうことにしました！
　　 - マナカ(507) の選択は ヒノデ区 M-11：チェックポイント《大通り》

MISSION!!
カミセイ区 F-11：チェックポイント《商店街》 を選択！
　　 - マナカ(507) の選択は カミセイ区 F-11：チェックポイント《商店街》

［852 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［422 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［483 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［161 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［354 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［251 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［182 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［118 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［44 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［111 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　



　




Cross+Rose越しにどこかの様子を見ているエディアン。

　

　

　








元気よくチャットに入り込むノウレットと、少し機嫌の悪そうな白南海。

　

　






見ていた何かをサッと消す。

　

　

　






　








ノウレットにゲンコツする白南海。




　






検索方法をエディアンに教わり、若を検索してみる。

　

　

　






ノウレットにゲンコツ。





ノウレットの頭を優しく撫でるエディアン。






　







　

　

　

こっそりと、Cross+Rose越しに再びどこかの様子を見るエディアン。




　

チャットが閉じられる――

チェックポイント。

仄かな光に包まれた六角形の柱が立っている。

　

･･･柱から滲み出るように、何かが生み出される。



　




それは言葉を発すると共に襲いかかる！