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今田 「はぁー、アッツ…。」 |
『荊闘乱祭』
この荊街では恐らく一大イベントだったろう。
所謂運動会、体育祭と言える類の物だが、普通と異なるのは
荊街全校合同による大規模の体育祭であるという事だ。
全校生徒、って言うだけあって人数が凄まじかったな。
……いや、本当に全生徒かはわからない、おおよそ来てただろう。
凄い大人数だったのは覚えてるな、個性が絢爛舞踏していた。
知ってる顔も続々いたのは覚えてる。
死ぬほど吃驚した顔も見かけたけれども。
なんかわからんが矢車店長を出だしで来たな。多分偶然だった。
フードコーナーで見学席で食べるもの買ってたら矢車店長の知り合い?に会った。
誠に彼は知り合いが多い者だと人柄に感心する。
フレシ君、という露出度のある高校生だった。片方目が黒いのが特徴。
お兄さんがいるらしく、一緒に?怪盗と探偵をやってるといっていたっけ。
方舟の名前を持った、凄くカッコいい名前してた…。後とても食欲が凄かった。
その際に見覚えのある女子高生も見えた。端田さんだ。
前に記した、怪異の際に出会った、ダーたんという本を大切にしてた子。
その後買い上げた応援席についてフードを食べようと思った時だった。
ふと視界がいきなり暗くなり、目が覆われてると気づいて凄くビビった。
手の温度を感じて誰なのかがわかった。
はい、とても明るくて元気な降雪夜道さんだった。
あの藝術展以来だったろうか、テンションがおかしいぐらいハイで
とりあえず彼女自身荊闘乱祭を楽しんでいるようで何よりだった。
いや然しなんだ。目隠しなんてシチュに巡り会う事があろうとは。
いやーやっぱり長生きしてれば何が起こるかわからんもんだな。
さて開会式あったけ?あったな。
そんなこんなで始まった闘乱祭の第一種目は借り物競争。
いやもう借り人競争だったなあれもう。
全校生徒と応援席の観客の全てを利用しつくす結集した競技だった。
始まるや否やのあの戦国の世のような雰囲気はやばかったな。
そんなこんなで早速借りに来てくれた人がいた。
知り合ったばかりのフレシ君。折角知り合ってくれた彼が
私を『面白い』人として及びくれたのでもうそれは全力だった。
得意の四足戦車走法が役に立ちました、おかげで体力使い切ってしまって
後々困ってしまわれた、フレシ君もそこはかとなく引き気味だった気がする。
然し彼自身は結構楽しそうで何よりだった。いや、ビール飲むなよ。
その次に借りた、というか借られにいったというのが正しい。
確か【変な人】だから、なんかよし行けるなって勢いだったな。
今一度考えると前の方がまだ変人要素あったな。
確か、四葉朱音、園芸が得意と言っていたっけ。
雰囲気はおっとりしてるゆるやかな人だった。
んで借りられに言って走ったはいいんだけど、最初の全力のせいで
もうすでに体力が無くてヘロヘロだったのは本当やらかしたが。
特に何言うことなく此方のペースに合わせようとしてくれていた。
このままでは立つ瀬がないと感じて、軽くだが跳躍して頑張ってゴール。
最後の最後まで優しい、風に揺れる花草の様な子だったな。
いつか学校の庭園に行ける機会があればいいけども。
まぁそんなこんなで体力使いすぎて疲れた休憩のテント行ったら
なんとまぁ、前に書店に来てくれたあのお姐の男性がおられた。
そういえば学校関係の仕事をされてると聞いてたから不思議ではなかった。
然しまぁ、様相に気づけなかったな。
まさか、彼だったとは。
その後水分を貰ってしっかり休んだ後、玉入れの見学だ。
なんか絵面が飛んでもなかったり怪我でてたりやっぱ一筋じゃなかった。
妨害もあったり大変だったな。
そんなこんなでも見覚えのある子はいた、例の創藍高校で知り合った子。
エルフ耳のリリーさん。凄く元気に玉入れ頑張ってたところを見てたとこを
此方に気づいて、少し話しをさせてもらった。自分の運動会の記憶…うーん。
んでパン喰い競争の際、地獄の様なやばいパンがあって。
其れ喰って死にかけてた子を介抱したんだが、まさかの彼がフレシ君の兄。
オブルス君という名前の、楽園を名前を持っていた、とりあえず彼を救護テントに。
再び行ってみれば晴寺先生という方に彼を任せていると、また見覚えのある人が。
前に書店に来てくれた樒君という糸目の子だ。ボランティアで来ていたそうな。
その後晴寺先生の治癒を受けてよくなったオブルス君からお菓子を頂いた。
果物のスフレとグラッセ、滅茶苦茶美味しかったな…女子力が高すぎたぞ。
それでなんか…飲み物を買った時だっけな。
あの顔を見るとは思わなかった。白バナナが…
……と思ったんだが、なんかよく見ると顔が違うというか。
バナナの数が違った、此方の記憶はなさそうだったし、空似の別人だろうか。
その後は二人三脚、リレーと順調に盛り上がってたな。
リレーは思わず実況が乗ってしまった。此方ぼ妨害があったりと恒例か。
例のジムナスターの子も出ていたが、多分あの子のチームが一番弱かったな、間違いない。
でもよく頑張ったんではなかろうかと思う。
その後は……フォークダンスだったな、応援席の人とも踊れるそうで。
いや本当に自由過ぎるというかなんというか。
踊るつもりは、最初の時は無くって休憩場に行ってたところを彼女、
端田理音ちゃんを見かけた、彼女は其処でなんか、友人の金髪褐色の子に
なんか金の玉を忍ばせてたりと意外と行動的な事をしていた…。どうやらエールのようだ。
そして、フォークダンスは誰かに踊られないのか、そう聞かれて
何気ない事を返していて、彼女にこういわれたのをよく覚えている。
”頑張った子にはご褒美があるべきです。”
それを言われたからだろうか。
鮮明にその子が浮かんだのは覚えてるな。
端田さんに礼を言った後別れ、徐に探してた、気がする。
彼女、降雪夜道さんがいるかどうかを。
そして見つけた。休憩所の奥にいた。
彼女にShall we Danceを申し込んだ。どうしてかは覚えている。
もう一度、あの景色を観たかったのだという事。
そして彼女自身も頑張っていたからこそ、手を差し伸べたかったんだと。
応じてくれた彼女と送ったその一時は。その一時だけは。
あの星降海で最初に見た彼女の景色を思わせてくれた。
静かに眠りについた彼女の顔は、此れからも記憶に残ってくれるだろうか。
もしこれで逢うのが最後だとしても、あの贈り物が、
彼女にあれが『決して夢ではない』という事を教えてくれるから。
本当に、彼女に感謝してもしきれないかもしれない。
そして運動会は、結果紅組が勝利した。
中々ハチャメチャな、しかしこれから先あんな運動会を観れるかどうか。
それぐらい、楽しかった記憶は長くは残らないものだと私は思っている。
そんな長い長い一日だった。
次回は、番外編。
一度もあった事のなかった人への、手向け。