7月16日
その日は俺が生まれた日であいつが死んだ日。
楽しい日にわかりやすいドラマにありふれた悲劇がそこにあって……なんつーか。
引きずるって訳じゃ無いけど、流石にセンチメンタルにならずには居られないんだわこの日は。
どうもー、きゅーやさんっていいますよ。
お名前? そんなのはきにしなくていいの、きゅーやさんはきゅーやさんなんですよ。
九つの夜とかいてきゅーやさんです以後お見知りおきを。
この異能だらけの街で細々と医者とエンバーマーの資格を持って過ごしておりましてね。
表彰状飾って眺めては、いやあ、ここではほとんど使わないなあとかおもってびっくりしてる。
エンバーマーってしらない? 死化粧ってしってるかな。
ご遺体のお顔綺麗にしていってらっしゃい~ってしていい外科の技術のことですね。
外科医だと思うと簡単よ。
母親は俺がエンバーマーの資格を取る前に持病で死んで、
親父は母親が居なくなった跡没頭した海外の戦地のボランティアから帰ってこなかった。
恵まれた家だったし、仕事につくまで支えて貰った気がするんだけどよ。
親孝行した覚え全くないんだわ。どうしてくれるんだろーね。
嫌いじゃねえけど、やるせないぜ。兄弟も居ないしな。
そんな俺にもつきまとってくださった女の子がいたんですよ。
可愛くないし、五月蠅いし、綺麗じゃないし、やきもち焼きで、いっつも俺の世話焼いてきたんです。
俺は突き放したし優しくしなかったし、他の女のことも遊んだわけですが。
離れてくれなくってさ。どうして俺についてくるのって聞いたの。
気付いたら俺の事好きなんだって。
そんなのってさあ、どうやって拒めばいいんですか。
その子の親父さんも乗り気で家族もろとも俺の事好きになってくれちゃって。
お医者さんだからっていっても収入良くないし、忙しいし、お家帰らないよ。
でも、帰る場所になってあげるって言われちゃあ俺も落ちたんですよ。若いよね。
若いよねって言うけど、たった数年前。
日本でやっと医院を構えたんですよ、俺。
それでやっとこれからでー……プロポーズしようとしたんですね?
俺の誕生日だったんですけど。
いや自分の誕生日しかさ、……お休み貰えなかったんで。誕生日に君を頂戴みたいな甘い話じゃ無いんです。
楽しみにしてたし、贈り物も用意してくれてたし、俺の大好きなスイーツもたくさんあったんだけど……
見たかった彼女の笑顔がその日俺の前に現れることはなかったんだよな。
時間になっても現れないのおかしいと思って、連絡もして必死に探しまくるじゃん。
一つ一つ全部が不安でさ、一つの人だかり見て、世界が真っ暗になった。
死の匂いっていのが、俺の嗅覚じゃ無い何処かで感じたの。
ネガティブなんですよ、俺。
近づくとね、多分俺の知り合いAさんが。叫んでーみるなって言ったか、早く来いって言ったか記憶が曖昧。
ごめんね、きゅーやさん人の名前覚えるの苦手なんだ、ごめんね。名前で覚えるの怖いんだ。
「 」
ほら、思い出せない。
大事なあいつの名前が俺の中から、消えていくのが分かった。
人混みかき分けて、見えた見慣れた服に鞄に、大好きだった長い髪に、可愛くない顔。
みんな、無くなってて。正しくは、分からなくなっててさ。
そのとき何考えてたと思う? 俺、仕事できるのかなあって、考えてたの。
何処を治せば元のあいつになるかな……? って。
記憶の中に全部あるあいつが重なれば重なるほどおかしくなりそうで、分かるんだよ
ああ、この顔は、この肌も、骨も、小さな癖が、人それぞれ違う、その一部一部が俺には分かって
それが、崩れている今が、分からなくなった。
どうしてあいつが居ないのに俺は生きている?
……俺の帰る場所は何処に行ったんだ、大切な物は。どうして。
まだ幸せにしてやれていなかったのに。
残された遺族のための仕事? それが俺の仕事。だけど……
俺は、
そこから記憶が無い。
気がついて目が覚めた頃には白い天井で、病院に居た。
俺の親友らしい奴が、何があったか教えてくれた。
俺はどうやら海でぶっ倒れてたらしくて、溺れていたんだと。
可愛らしく言うじゃん、記憶の中のお前はもっと作り笑いと愛想笑いを上手に使う奴だったのに。
なんだよ。
本当に俺を安心させるために優しく笑うじゃん。
……事故だよ事故。
俺が死のうとするわけ無いでしょ、怖くてたまらないのに
誰よりも死ぬのが怖いのにさあ?
きゅーやさんだよ? 怖がりで寒がりで構ってもらいたがりの寂しいおじさん。
ああでも、それ以上その街には居られなかったんだ。
ごめんねえ、親友らしい人。
なんか、おかしいんだわ。俺此処に居たらいけないっていうか、居るべきじゃないって言うか。
お前と親友だったかも知れないけど。
お前が求める親友は俺じゃ無いって感じがするの。変でしょ?俺もそう思ったよ。
引っ越しもすんなりいったし、さあてって、選んだ新天地
やってきましたよイバラシティ、ここには俺を知る人間は居ないはず。
……だけど妙な奴が俺にややこしい物をくれやがったからさあ。
なんだいそのギフト。仕方ないな、今回も承りますよ、可愛い子は守りたいしな。
しっかし……この町本当に医者いらねえな。治癒異能で終わりじゃん。
俺の出来る事ってなんなのかねえ。
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「実際!! 俺に出来る事って何だと思うよ」 |
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「そんなの……きまってるだろ、人の話を聞いて得意のうわべだけの口でごまくらかすとかか?」 |
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「なにそれ、俺が普段から詐欺師みたいなことやってるように聞こえるじゃん。」 |
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「事実怪しいんだ行動が……、オーバーなリアクションに五月蠅いし話が長い。」 |
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「何も考え無しに言ってるから仕方ないよな、だってきゅーやさんだもん!!」 |
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「きゅーやさんだから、ねえ……仕方ないか。 俺は俺らしくやればいいだろう、勝手に来る人間は来る」 |
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「きゅーやさんだからね、俺は俺らしくやれば、勝手に来る人が来る。 俺って愛され系?」 |
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「言ってろ、愛されたら死ぬくせに。俺も御免だ」 |
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「奇遇だね、俺。俺もごめんです。もう誰かを好きになるの怖くて仕方ねえや! 疲れた疲れた!!」 |

[845 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[409 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[460 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[150 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[311 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
[202 / 500] ―― 《商店街》より安定な戦型
[149 / 500] ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
[68 / 500] ―― 《古寺》戦型不利の緩和
―― Cross+Roseに映し出される。
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
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白南海 「・・・ロストの情報をやたらと隠しやがるなワールドスワップ。 これも能力の範疇なのかねぇ・・・・・とんでもねぇことで。」 |
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白南海 「異能ならリスクも半端ねぇだろーが、なかにはトンデモ異能もありやがるしねぇ。」 |
不機嫌そうな表情。
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エディアン 「私、多くの世界を渡り歩いてますけど・・・ここまで大掛かりで影響大きくて滅茶苦茶なものは滅多に。」 |
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エディアン 「そういえば貴方はどんな異能をお持ちなんです?」 |
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白南海 「聞きたきゃまずてめぇからでしょ。」 |
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エディアン 「私の異能はビジーゴースト。一定の動作を繰り返し行わせる透明な自分のコピーを作る能力です。」 |
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白南海 「あっさり言うもんだ。そりゃなかなか便利そうじゃねぇか。」 |
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エディアン 「動作分の疲労は全部自分に来ますけどねー。便利ですよ、周回とか。」 |
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白南海 「集会・・・?」 |
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エディアン 「えぇ。」 |
首を傾げる白南海。
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エディアン 「――で、貴方は?」 |
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白南海 「ぁー・・・・・どうすっかね。」 |
ポケットから黒いハンカチを取り出す。
それを手で握り、すぐ手を開く。
すると、ハンカチが可愛い黒兎の人形に変わっている。
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エディアン 「わぁー!!」 |
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エディアン 「・・・・・・・・・」 |
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エディアン 「・・・手品の異能ですかー!!合コンでモテモテですねー!!」 |
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白南海 「なに勝手に変な間つくって憐れんでんだおい。」 |
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白南海 「糸とかをだなー・・・・・好きにできる?まぁ簡単に言えばそんなだ。 結構使えんだよこれが、仕事でもな。」 |
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白南海 「それにこれだけじゃねぇしな、色々視えたり。」 |
眼鏡をクイッと少し押し上げる。
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エディアン 「え!何が視えるんです!?」 |
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白南海 「裸とか?」 |
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エディアン 「ぇ・・・・・」 |
咄嗟に腕を組み、身構える。
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白南海 「・・・嘘っすよ、秘密秘密。言っても何も得しねぇし。」 |
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エディアン 「ケチですねぇ。まぁ私も、イバラシティ生活の時の話ですけどねー。」 |
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白南海 「・・・・・は?」 |
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エディアン 「案外ひとを信じるんですねぇー、意外意外!」 |
そう言ってチャットから抜けるエディアン。
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白南海 「あぁ!?きったねぇだろそれ!クッソがッ!!おいいッ!!!
・・・アンジニティぶっ潰すッ!!!!」 |
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