
壁に貼る。椅子に貼る。自分に貼る。呪文を唱える。色々試してみたけれど、どれも不発に終わってしまった。壁や体に貼ってもすぐに落ちてしまうし、椅子に貼ってみてもうんともすんとも言わない。唱える呪文なんて何もわからない。他にできそうなことも思い浮かばなくて、私は早々に頭を抱えることになってしまった。
時計を見ればもう11時になるところで、いちかちゃんの来る可能性を考えるともう片付けをしてばれないようにしておかなければならない。どうせ一枚しか出していないけれど、私は御札をさっとカードケースに入れてポケットにしまいこんだ。
一呼吸おいたくらいのタイミングで背後に気配を感じ、振り向くとレイさんがちょうどやってきたところといった雰囲気で靄に包まれて立っていた。
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レイ 「その感じだと、結局何もできなかったみたいね」 |
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”私” 「はい…… 使い方もわからないですし」 |
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レイ 「……言っとくけど、アタシは教えないわよ」 |
レイさんは腕を組み、軽く首を傾げるような仕草でこちらを見る。使い方を教えないということは知ってるということだろうけれど、真正面から尋ねたところで教えてはくれないだろう。
だからといってうまく訊く方法も浮かばないのだけど。こういうとき、駆け引きにまったく慣れていない自分を恨む。昔から私はそういう言葉の裏に何かを隠したり覗かせたりするのがとても苦手で、いつも真っ正直にばかり話していたような気がする。だから馬鹿正直だとか言われてしまったりして。
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”私” 「……?」 |
なんだろう。何かがよぎった気がするけれど、よくわからない。うまく掴むことができない。
首を傾げていると、レイさんが怪訝そうな顔をして覗き込んできた。
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レイ 「何よ。 何か思い出しでもしたの?」 |
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”私” 「……え?」 |
そうか。言われて気付いた。思い返してみれば、記憶がない状態だと出てこないはずの言葉が出てくることが何度もあった気がする。それがどれだったかは、今思い返しても判別するのは難しいのだけれど。
ただ、神社についての知識と、さっきの馬鹿正直だと言われてしまうという記憶は間違いなくそれだと思う。だとすれば、記憶も徐々に戻ってきているんじゃないか。
ならば。神社関係の記憶か、おそらく持っているはずの何かしらの能力の記憶さえ戻れば。ここから出られる手段も思いつくのでは。
問題は、何をきっかけにして記憶が戻ってきたのかがわからないこと。今までの思い出した記憶は、確か会話や物思いに耽っているときに自然と出てきたような気がする。でもそれだけじゃ足りない。もっと確度の高いきっかけがわからなければ、時間がかかりすぎてしまう。
もうすでに11時間が経ってしまったというのに。
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レイ 「……その顔だと本当にそうみたいね。全部じゃないみたいだけど。 思い出してもいいことないって言ったのに。 後悔してからじゃ遅いってわからないわけじゃないでしょ?」 |
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”私” 「……これは、私の記憶ですから。 後悔なら思い出してからします。 ないほうがいいなんて、ないに決まってる……」 |
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レイ 「……知ってたけど、アンタも大概な頑固ね。 思い込むところ、直したほうがいいわよ」 |
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”私” 「直しません。 覚えてはないけれど、きっと、これが私だから」 |
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レイ 「……そうね、アタシもアンタも大概な頑固。 だからかしらね、兄貴がアタシにしたの」 |
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”私” 「いちかちゃんが、レイさんにした?」 |
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レイ 「そうよ、兄貴が自分にじゃなくてアタシにアンタの――」 |
途中まで言って、レイさんは言葉を切った。どうも失言したことに気付いてしまったらしい。もう少し喋ってくれたら どういう意味なのか理解できそうだったけれど、さすがにそこまではたどり着けなかった。やっぱり言葉巧みに、というのは私には難しい。
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レイ 「……ああ、やめやめ。 アタシ、ホント口が軽いっていうか、つい滑らせがちなのよね。 また兄貴に怒られちゃうわ」 |
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”私” 「そんなにいちかちゃんが強いんですか? あんなに可愛らしい子供なのに」 |
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レイ 「見た目だけはね。 大体、子供じゃないもの。 見た目だけよ、あんなの」 |
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レイ 「……これは失言じゃないわよ。 年齢のことは確か隠してないもの。 言いもしないけど」 |
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”私” 「そういえば『兄貴』って呼ばれてますよね。 レイさんが10代にはとても見えないし……」 |
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レイ 「……聞きたい? 実年齢。 きっと聞いたら腰抜かしちゃうわよ」 |
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”私” 「そんなに?」 |
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レイ 「だってあれ、兄貴のじゃないもの。 あれもアンタと同じで『とっちゃった』やつ」 |
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”私” 「とった?」 |
途端にレイさんは目を閉じて口元を抑える。
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レイ 「……また喋りすぎちゃったわね。 年齢はともかく、こっちはダメなんだったわ」 |
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”私” 「こっち?」 |
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レイ 「アンタ、もう質問するのはやめなさい。 もうさすがに喋らないわよ」 |
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”私” 「あっ……じゃあ、実年齢だけでも……」 |
レイさんは心底鬱陶しそうな顔をした後、下を向いて何度か瞬きをし、ため息をついた。質問はするなと言われたけれど、びっくりするわよと言われて放っておけるほどのんきでもない。というか、ただただ気になる。
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レイ 「……75」 |
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”私” 「は?」 |
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レイ 「兄貴の実年齢よ。 75歳。 かわいこぶってるけど、あれでも立派なジジイよ」 |
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”私” 「うそ……」 |
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レイ 「だから腰抜かすって言ったじゃない。 満足でしょ? アタシ戻るわね。 せいぜい御札にでも集中してなさい」 |
レイさんはゆっくりと歩きながら消えていく。呆然と見送ると、私はよろめくようにして椅子に座り込んだ。
75歳もそうだけれど、じじいってことは男なんだろうか。兄貴、とも呼ばれているし。
あんなに可愛らしい仕草で、かなりぶりっこが入っているとはいえ愛らしさを振りまいた喋り方をする75歳男性の存在に私はついていくことができなかった。
……いや、でも確かに言われてみれば、いちかちゃんの喋り方はどこか古臭い可愛らしさのような。そんな気がしたのだった。
制約LV を
5 UP!(LV0⇒
5、-5CP)
変化LV を
2 UP!(LV0⇒
2、-2CP)
付加LV を
7 UP!(LV55⇒
62、-7CP)
日明と月夜(285) により
ItemNo.26 すごい石材 から防具『
式陣:防』を作製してもらいました!
⇒ 式陣:防/防具:強さ261/[効果1]防御20 [効果2]- [効果3]-
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日明 「こんな感じでよろしかったでしょうか?もし改善点があったら教えてくださいね」 |
日明と月夜(285) の持つ
ItemNo.17 フュージドミストルティン(偽) に
ItemNo.4 何か固い物体 を付加しました!
日明と月夜(285) の持つ ItemNo.6 カリカンジャロスフェルシュング に ItemNo.8 美味しい草 を付加しようとしましたが、指定アイテムが装備品と素材ではありませんでした。
リカルド(28) の持つ ItemNo.1 まやかしの封魔布 に ItemNo.16 不思議な雫 を付加しようとしましたが、既に効果2が付加されていました。
ミロ(79) とカードを交換しました!
ダイヤの4
(バックフロウ)
クイックレメディ を研究しました!(深度0⇒
1)
クイックレメディ を研究しました!(深度1⇒
2)
コロウドスパウト を研究しました!(深度0⇒
1)
アサルト を習得!
アイシング を習得!
フラッシュ を習得!
パラライズ を習得!
キャプチャートラップ を習得!
◇通常獲得:各CP・FPが5増加した!

[843 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[396 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[440 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[138 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[272 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
[125 / 500] ―― 《商店街》より安定な戦型
[125 / 500] ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
[24 / 500] ―― 《古寺》戦型不利の緩和
―― Cross+Roseに映し出される。
フレディオ
碧眼、ロマンスグレーの短髪。
彫りが深く、男前な老翁。
黒のライダースジャケットを身に着けている。
ミヨチン
茶色の瞳、桜色のロング巻き髪。
ハイパーサイキックパワーJK。
着崩し制服コーデ。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
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フレディオ 「いよぉ!なるほどこう入んのか、ようやく使えそうだぜ。」 |
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ミヨチン 「にゃー!遊びに来たっすよぉ!!」 |
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エディアン 「にゃー!いらっしゃいませー!!」 |
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白南海 「毎度毎度うっせぇなぁ・・・いやこれ俺絶対この役向いてねぇわ。」 |
ロストのふたりがチャットに入り込んできた。
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ミヨチン 「・・・・・?おっさん誰?」 |
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フレディオ 「フレディオにゃー。ピッチピチ小娘も大好きにゃん!」 |
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ミヨチン 「・・・・・」 |
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エディアン 「・・・・・」 |
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フレディオ 「・・・いやジョークだろジョーク、そんな反応すんなっつーの。」 |
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ミヨチン 「大好きなのは嬉しーけど、そのナリでにゃんは痛いっすよぉ! なんすかそれ口癖っすかぁ??まじウケるんですけど。」 |
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フレディオ 「え、あぁそっち?・・・ジョークだジョーク。」 |
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エディアン 「私はそっちじゃないほうですね。顔がいいだけに残念です。」 |
軽蔑の眼差しを向けるエディアン。
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白南海 「・・・別にいいだろーよ。若い女が好きな男なんてむしろ普通だ普通。」 |
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フレディオ 「おうおうそうだそうだ!話の分かる兄ちゃんがいて助かるわッ」 |
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フレディオ 「・・・っつーわけで、みんなで初めましてのハグしようや!!!!」 |
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ミヨチン 「ハグハグー!!」 |
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エディアン 「ダメダメやめなさいミヨちゃん、確実にろくでもないおっさんですよあれ。」 |
ミヨチンを制止する。
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フレディオ 「・・・ハグしたがってる者を止める権利がお前にはあるのか?」 |
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エディアン 「真面目な顔して何言ってんですかフレディオさ・・・・・フレディオ。おい。」 |
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白南海 「お堅いねぇ。ハグぐらいしてやりゃえぇでしょうに。」 |
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フレディオ 「そうだそうだ!枯れたおっさんのちょっとした願望・・・・・」 |
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フレディオ 「・・・・・願望!?そうかその手が!!!!」 |
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エディアン 「ゼッッッッタイにやめてください。」 |
フレディオの胸倉をつかみ強く睨みつける!
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白南海 「そういえば聞きたかったんすけど、あんたらロストって一体どういう存在――」 |
――ザザッ
チャットが閉じられる――