
パァン。
青く晴れ渡った空に、乾いた音が響いた。
ぼくはそれを聞いた瞬間、何かが分かった気がした。
荊闘乱祭。
イバラシティ全域の学生が一堂に集まって、紅白に分かれて競い合う体育祭。
ぼくにとっては学校の体育祭、というもの自体初めての体験で、
それが市全体のスケールで行われるなんて、ワクワクしてしまう。
だから当然、このお祭りに参加することに決めた。
ただし、チアリーディングとしての応援だけ。
テレポーテーションの異能は競技にあまりにも有利だと思ったし、
ぼくはイバラシティの体育祭というものをよく知らない。
選手として競技に参加しなくても、会場にいるだけで充分楽しめるはずと納得済みだった。
予想通り、闘乱祭はたくさんの人が集まって、熱気にあふれてて、すごく盛り上がって。
ぼくは競技に参加した友達を応援したり、派手なパフォーマンスをする選手の姿に驚いたり
スポーツの祭典を満喫していた。
そうして、最後の競技であるリレーもそろそろ終わる……という時にその声を聞いた。
「あと4名です!ご協力お願いしますっ!」
振り返ると紅組のハチマキをした女の子が二人、応援席に向かって声を上げていた。
どうやらリレー出走の人数が足りないようだ。
そこに一人、小さな女の子が話しかけているのが見えたけど、
残り少ない時間で規定人数があつまるかどうか、かなり厳しそうに思えた。
どうしよう。
ぼくは白組のチアに参加してはいるけど、選手登録はしていない。
つまり、厳密にはどちらの組にも属していない。
今からでも紅組に振り分けられれば、彼女たちの力になれる。
けれど、本当にそれが必要だろうか?
出走していない紅組の選手はまだまだいそうだし、
白組チアの服を着ているぼくが割って入るのも、余計なお世話かもしれない。
迷いながらも、もう一度彼女たちの様子を伺う。
緑メッシュの入った金髪の女の子と、鮮やかな赤髪の女の子。
彼女たちは困ったような、必死な表情で呼びかけを続けている。
ぼくは選手振り分けのクジを置いてある受付に走った。
受付けのお姉さんに声を掛ける間も惜しんで、クジを引いてみる。
赤色の玉。
すぐに応援席へと取って返して、さっき呼びかけをしていた赤髪の女の子に声を掛けた。
「ぼく、さっきくじ引いてきたんで、こんなカッコでよければ走れるけど……」
「大歓迎です!よろしくお願いします!」
彼女の言葉を受けて、すぐさまトラックに降りる。
その間にも、大柄なお兄さんや、綺麗な銀髪の女の子が参加してくれたようだった。
6人、揃った!!
第一走者の女の子は既に走り始めていて、ぼくたちは慌ててそれぞれの定位置に向かう。
即席も即席、お互いの名前も聞きかじりの状態だったけど、みんな全力で走った。
紅色のバトンは落とされることなくしっかりと繋がって、そして――ほとんど時が止まった。
最後の走者の女の子が、日に透ける銀髪をなびかせながらゴールに駆け込むと同時に
ピストルが鳴らされる。
ぼくはそれを聞いて、胸の中のつかえがストンと落ちた気がした。
理屈じゃなくて
理由を探したりしないで
誰かに言われたからじゃなくて
ぼくは、ぼくが行きたい場所に行こう。
それが、きっと一番後悔しない方法だろうから。
大きく吸い込んだスタジアムの風は、少しだけ土埃の匂いがした。

[822 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[375 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[396 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[117 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[185 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
アンドリュウ
紫の瞳、金髪ドレッドヘア。
体格の良い気さくなお兄さん。
料理好き、エプロン姿が何か似合っている。
ロジエッタ
水色の瞳、菫色の長髪。
大人しそうな小さな女の子。
黒いドレスを身につけ、男の子の人形を大事そうに抱えている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
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アンドリュウ 「ヘーイ!皆さんオゲンキですかー!!」 |
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ロジエッタ 「チャット・・・・・できた。・・・ん、あれ・・・?」 |
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エディアン 「あらあら賑やかですねぇ!!」 |
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白南海 「・・・ンだこりゃ。既に退室してぇんだが、おい。」 |
チャット画面に映る、4人の姿。
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ロジエッタ 「ぁ・・・ぅ・・・・・初めまして。」 |
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アンドリュウ 「はーじめまして!!アンドウリュウいいまーすっ!!」 |
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エディアン 「はーじめまして!エディアンカーグいいまーすっ!!」 |
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白南海 「ロストのおふたりですか。いきなり何用です?」 |
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アンドリュウ 「用・・・用・・・・・そうですねー・・・」 |
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アンドリュウ 「・・・特にないでーす!!」 |
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ロジエッタ 「私も別に・・・・・ ・・・ ・・・暇だったから。」 |
少しの間、無音となる。
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エディアン 「えぇえぇ!暇ですよねー!!いいんですよーそれでー。」 |
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ロジエッタ 「・・・・・なんか、いい匂いする。」 |
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エディアン 「ん・・・?そういえばほんのりと甘い香りがしますねぇ。」 |
くんくんと匂いを嗅ぐふたり。
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アンドリュウ 「それはわたくしでございますなぁ! さっきまで少しCookingしていたのです!」 |
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エディアン 「・・・!!もしかして甘いものですかーっ!!?」 |
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アンドリュウ 「Yes!ほおぼねとろけるスイーツ!!」 |
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ロジエッタ 「貴方が・・・?美味しく作れるのかしら。」 |
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アンドリュウ 「自信はございまーす!お店、出したいくらいですよー?」 |
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ロジエッタ 「プロじゃないのね・・・素人の作るものなんて自己満足レベルでしょう?」 |
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アンドリュウ 「ムムム・・・・・厳しいおじょーさん。」 |
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アンドリュウ 「でしたら勝負でーすっ!! わたくしのスイーツ、食べ残せるものなら食べ残してごらんなさーい!」 |
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エディアン 「・・・・・!!」 |
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エディアン 「た、確かに疑わしい!素人ですものね!!!! それは私も審査しますよぉー!!・・・審査しないとですよッ!!」 |
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アンドリュウ 「かかってこいでーす! ・・・ともあれ材料集まんないとでーすねー!!」 |
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ロジエッタ 「大した自信ですね。私の舌を満足させるのは難しいですわよ。 何せ私の家で出されるデザートといえば――」 |
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エディアン 「皆さん急務ですよこれは!急務ですッ!! ハザマはスイーツ提供がやたらと期待できちゃいますねぇ!!」 |
3人の様子を遠目に眺める白南海。
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白南海 「まぁ甘いもんの話ばっか、飽きないっすねぇ。 ・・・そもそも毎時強制のわりに、案内することなんてそんな無ぇっつぅ・・・な。」 |
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白南海 「・・・・・物騒な情報はノーセンキューですがね。ほんと。」 |
チャットが閉じられる――