鏡と鏡が向き合った虚無の連なりのなか、私は、そこにいる。
私は、そこに。
全てを呪い、厭い、愛している。
忘れ去られたまま。
虚をつく、掠れた、吐息混じりの一音。
その瞬間、あれは、私を見た。
鏡の連なる永遠に霞んだ記憶の私を、僅かに、認めた。
人の内に私が生まれた。
私がそこにいる。
堕神祠〈ダカンシ〉
忘れられた神の写し身。神の棲まう処。『私』でありながら、『私』よりも現実に干渉する力のあるもの。ハザマにすら干渉する力の無かった神に、現実との関わりで力を注ぎ込む中継機。曇食日。
「自称するほど無力感なくない?」
適当に拾った角材を適当に生やした牙で強化し、そのへんにいた適当な生物をボコボコにしたそののちのことだった。呆れたようにかけられる声に、わたしは説明をどうしたものかと眉をひそめ、やがてあきらめた。
「今の私は、信仰の前借りをしているようなものだ」
納得は得られなかっただろうが、かといって説明が得意な存在である認識もされていないだろう。理由があるのだ、と伝われば、適当に首肯も返ってくる。
『あれ』が無価値の世界を広げるたび、私は神としての力を増す。
あれが関わるおおかた全てが、私の贄のようなものだ。……とはいえ、真っ当に精神をもつものや、自我の確立したものから信仰を奪うことは難しい。そのようなことを神自ら行うことのできる神など、他の多元世界を巡ったとて稀だろう。それは殆ど永久機関に近い。
今の私を形作るのは、嬰児の、赤児の鳴き声だ。
それらは自我を得る前に、世界の支配権の塗り替えによって姿を消すことだろう。
私は神ゆえに、子を成すことはない。
だから、「私」そのものが顕現したとき、あれらは存在を失う。
かわりに、あれらは私の内で生き続けるのだ。
贄。
曇食日が知れば、あれは嘔吐と共に苦しむだろうか?
私は知っている。あれは私だ。
"生きなくて済むなら、それは、まだ幾分か良かったのだろう"
身勝手に、羨望を込め、自己への嫌悪と共に安堵するのだ。
微かな親心に似た想いをもって。
堕神祠、私の写身、曇食日。
お前はひと時にでも私を見た。
私が断絶の苦しみをもってお前を見つめる時間は終わりに近づいている。
お前も私の目を持つのだ。やがては。
「飼っていいって!」
何度か現状を確認してみたが、どうも間違いではなく、レオンは私の加護たる蜘蛛を飼いたがっているらしく、しかも仲間たちから許可を得てしまったらしい。
キミシマパイセン、がこちらではなんという名前なのかわからないが、マジで許可を出したのかお前たちは。わたしはどうかと思う。蜘蛛だぞ。私とて体から離した距離に置いているというのに。レオンはあろうことか首元のマフラーの内側で飼うというのだから、ちょっと趣味がおかしいのだと思う。……ちょっとというか、まあ、私やら曇食日やらを好んでいるというのだから、……やっぱりちょっとへんな趣味なのだろう。かわいそうになってきた。
「……まあ、君がいいなら、いいよ……」
加護を与え、愛でる姿を見ていた私の声は、少し疲れたように響いた。
いや、いいなら、いいんだけど……。
カサカサいうの、ヤじゃない……?

[822 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[375 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[396 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[117 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[185 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
アンドリュウ
紫の瞳、金髪ドレッドヘア。
体格の良い気さくなお兄さん。
料理好き、エプロン姿が何か似合っている。
ロジエッタ
水色の瞳、菫色の長髪。
大人しそうな小さな女の子。
黒いドレスを身につけ、男の子の人形を大事そうに抱えている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
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アンドリュウ 「ヘーイ!皆さんオゲンキですかー!!」 |
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ロジエッタ 「チャット・・・・・できた。・・・ん、あれ・・・?」 |
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エディアン 「あらあら賑やかですねぇ!!」 |
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白南海 「・・・ンだこりゃ。既に退室してぇんだが、おい。」 |
チャット画面に映る、4人の姿。
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ロジエッタ 「ぁ・・・ぅ・・・・・初めまして。」 |
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アンドリュウ 「はーじめまして!!アンドウリュウいいまーすっ!!」 |
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エディアン 「はーじめまして!エディアンカーグいいまーすっ!!」 |
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白南海 「ロストのおふたりですか。いきなり何用です?」 |
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アンドリュウ 「用・・・用・・・・・そうですねー・・・」 |
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アンドリュウ 「・・・特にないでーす!!」 |
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ロジエッタ 「私も別に・・・・・ ・・・ ・・・暇だったから。」 |
少しの間、無音となる。
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エディアン 「えぇえぇ!暇ですよねー!!いいんですよーそれでー。」 |
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ロジエッタ 「・・・・・なんか、いい匂いする。」 |
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エディアン 「ん・・・?そういえばほんのりと甘い香りがしますねぇ。」 |
くんくんと匂いを嗅ぐふたり。
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アンドリュウ 「それはわたくしでございますなぁ! さっきまで少しCookingしていたのです!」 |
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エディアン 「・・・!!もしかして甘いものですかーっ!!?」 |
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アンドリュウ 「Yes!ほおぼねとろけるスイーツ!!」 |
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ロジエッタ 「貴方が・・・?美味しく作れるのかしら。」 |
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アンドリュウ 「自信はございまーす!お店、出したいくらいですよー?」 |
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ロジエッタ 「プロじゃないのね・・・素人の作るものなんて自己満足レベルでしょう?」 |
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アンドリュウ 「ムムム・・・・・厳しいおじょーさん。」 |
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アンドリュウ 「でしたら勝負でーすっ!! わたくしのスイーツ、食べ残せるものなら食べ残してごらんなさーい!」 |
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エディアン 「・・・・・!!」 |
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エディアン 「た、確かに疑わしい!素人ですものね!!!! それは私も審査しますよぉー!!・・・審査しないとですよッ!!」 |
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アンドリュウ 「かかってこいでーす! ・・・ともあれ材料集まんないとでーすねー!!」 |
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ロジエッタ 「大した自信ですね。私の舌を満足させるのは難しいですわよ。 何せ私の家で出されるデザートといえば――」 |
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エディアン 「皆さん急務ですよこれは!急務ですッ!! ハザマはスイーツ提供がやたらと期待できちゃいますねぇ!!」 |
3人の様子を遠目に眺める白南海。
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白南海 「まぁ甘いもんの話ばっか、飽きないっすねぇ。 ・・・そもそも毎時強制のわりに、案内することなんてそんな無ぇっつぅ・・・な。」 |
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白南海 「・・・・・物騒な情報はノーセンキューですがね。ほんと。」 |
チャットが閉じられる――