[今の話]──《イバラシティ》
承前
氷に覆われる、大切な人。居ても立っても居られず、駆け出そうとして……思いとどまった。失敗は許されないのだ。冷静に、冷静になれ。押し殺せ。感情によって起きる異能であるなら、不安になる素振りをみせてはいけない。
自分を落ち着かせるために、ここまで助けてく入れたカルセドニアさんや、ここの住人にお礼を述べる。失敗すればおそらく自分も無事では済まない──というより、一人で生き延びるつもりもなかった。『また』大切な人を失うぐらいなら、いっそ──。
涙を拭って、手を握り直して、つばを飲み込んで。目配せをして踏み出す。
尊の感情に同調して発現される渦巻く冷気。渦巻いているなら風、風であれば、"直接触れれば"制御を奪える。凍えるような冷たさもカルセドニアさんのくれた加護があれば、耐えきれないものではない。1歩ずつ、歩みをすすめる。
やがて眼前にたどり着き、"仮の定義"を外してもらう。変わらず吹き荒れる冷気。ここまで来ると制御を奪うのも難しい。冷たい風から私を遠ざけようとする尊。でも、どれだけ言われようと逃げるつもりはない。だから、尊も、逃げないで。
氷の上から、手を重ねる。しびれるように冷たい。だけど、これを身に纏う尊に比べたら、大したものじゃないはずだ。さあ、気づいて、その力の正体に──
降り積もった雪が、自重に耐えきれず、崩れ落ちてくる。雪崩の挙動は流体だが、この短時間では計算が間に合わない。考慮すべきだった──無意味であろうと、とっさに尊を庇おうとしたとき、尊が声を上げた。
数瞬勢いが弱まる雪崩。そしてあとを託される。これなら、間に合うはず。頭を回転させる。受け止めたとして、これを長時間維持はできない。それどころか、尊の体力はきっと限界で、いつ制御を失うかもわからない。ならば、受け流すしかない。後ろの人にも影響が無いように──出来るだろうか?否、やるのだ。二人ならやれると信じて。
静寂が戻った氷の大地で、全員が無事に生き残った。一息つこうとしたところで、崩れ落ちる尊。慌てて受け止めて確認すれば、寝息をたてていた。本当に限界だったのだろう。改めて無事を確認する。
よかった──
抑えていた感情の堰が切れる。不安で、不安で、仕方なかった。
助けられてよかった
カルセドニアさんのおかげで、凍傷も収まり、あとは回復を待つだけだ。
──でも
次も守りきれるとは限らない。
私は無力だった。
誰かに頼れるとも限らない。
もっと、力を得なければ
大切な人を、未来を、守れる力を
──どんな手を使ってでも。
おわり
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瑠奈 「この私の感情……外からなにか影響を受けてる? まさかルシア、貴方、あっちに来ているの?何のために……?」 |
︙
学校にもっと関わりたいと、ほぼ思いつきで実行委員に参加した荊闘乱祭。
おもったより忙しくて尊との時間も減ってしまったのは残念だけど、有意義な時間を過ごせたと思う。
色んな人と話して、チアにも参加して、うまくは行かなかったけど、尊とも一緒に走ったりして。
そう、当初は予定していなかった競技参加もしてしまった。パパにバレたら怒られるかも。
パパには激しい運動をするなと言われている。理由は教えてくれない。
……どうして?私の病気は治っていると言っていたはず。こうして運動しても、特に何も問題はない。
一応、患者として医者の言うことには従ってはいたけど、説明がないのはおかしい。
なにか、隠しているんだろうか?
この日だけスマホに表示されていたエラー表示を、私は見落としていた。

[816 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[370 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[367 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[104 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[147 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
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エディアン 「・・・・・・・・」 |
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
チャット画面にふたりの姿が映る。
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
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エディアン 「・・・・・・・・」 |
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白南海 「・・・怖いだろうがよ。」 |
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エディアン 「・・・勘弁してくれませんか。」 |
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白南海 「ナレハテってあの!アレだろォッ!!?ドッロドロしてんじゃねーっすか!! なんすかあれキッモいのッ!!うげぇぇぇぇうげえええぇぇぇ!!!!!!」 |
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エディアン 「私だって嫌ですよあんなの・・・・・ ・・・え、案内役って影響力どういう扱いに・・・??私達は関係ないですよね・・・????」 |
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白南海 「あんたアンジニティならそーゆーの平気じゃねーんすか? 何かアンジニティってそういう、変な、キモいの多いんじゃ?」 |
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エディアン 「こんな麗しき乙女を前に、ド偏見を撒き散らさないでくれます? 貴方こそ、アレな業界の人間なら似たようなの見慣れてるでしょうに。」 |
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白南海 「あいにくウチはキレイなお仕事しかしてないもんで。えぇ、本当にキレイなもんで。」 |
ドライバーさんから伝えられた内容に動揺している様子のふたり。
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白南海 「・・・っつーか、あれ本当にドライバーのオヤジっすか?何か雰囲気違くねぇ・・・??」 |
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エディアン 「まぁ別の何か、でしょうね。 雰囲気も言ってることも別人みたいでしたし。普通に、スワップ発動者さん?・・・うーん。」 |
ザザッ――
チャットに雑音が混じる・・・
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エディアン 「・・・・・?なんでしょう、何か変な雑音が。」 |
ザザッ――
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白南海 「ただの故障じゃねーっすか。」 |
ザザッ――
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声 「――・・・レーション、ヒノデコーポレーション。 襲撃に・・・・・・・・いる・・・ 大量・・・・・こ・・・・・・死体・・・・・・ゾ・・・・・・」 |
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声 「・・・・・ゾンビだッ!!!!助け――」 |
ザザッ――
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
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エディアン 「・・・・・・・・・」 |
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白南海 「ホラーはぁぁ――ッ!!!!
やぁぁめろォォ―――ッ!!!!」 |
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エディアン 「勘弁してください勘弁してくださいマジ勘弁してください。 ホラーはプレイしないんですコメ付き実況でしか見れないんですやめてください。」 |
チャットが閉じられる――