
1時間ごとに街での記憶が流れ込んでくるんだが、頭がおかしくなりそうだな。情報量が多すぎて…。
街で、レモンちゃんが家を飛び出してしまった。
 |
書き置き 「ヒーローやっつけて報告書のネタつくってきます」 |
思わず実績がない事を愚痴っちゃってたからな~~~~~~~~~~~~
真面目なMr.エイト辺りが襲撃を提案してきたりするかなとはうっすら思ってたけど、まさか突然家を飛び出すとは…
困った。あの子は単独でやってヒーローに勝つことは出来ないんだ。
レモンちゃんの異能は…いやまあ私の部下の異能はどれも超強力で、まともに食らって平気でいられるやつはいないんだが、それは本人も同じなんだ。
ダストロイヤーは全てを飲み込む人間ブラックホールだが、これをフルパワーでやると吸い込んだものの質量に体の方が耐えきれない。
Mr.エイトは体が水棲生物に変わる異能を持っているが、変えられるんじゃなくて変わってしまうんだよな。しかも元に戻らない。
アレコレやって今の形を保っているが、制限を止めたらどんな姿になってしまうか分からない。
そしてレモンちゃんは…周囲に飛散する水分、まあ一般的で言う雨とか霧を強酸性に変えてしまう能力を持っているが、これが十分に威力を発揮するのに時間がかかるし、発動の引き金が強いストレスなのでコントロールが難しい。
多分なんかそういう精神をアレする訓練を積んだりすれば制御できるかもしれないんだが…
レモンちゃんはまだ若い。実年齢もそうだが、生い立ちが異能のせいでハードすぎて、多分精神年齢が今の半分くらいだ。
キツい訓練に耐えきれるとは思えないんだよな。下手すると異能が暴走して組織内で甚大な被害が出かねない。
かといって戦力にならない人員をダラダラ保護し続けてるなんて本部には言えないしな~とか言ってたらこれだよ!
もっとこう…自身の異能に負けないコントロール能力を与えられればいいんだが…
えーと若干話が逸れたな。
レモンちゃんの戦闘についてだが、前述の通り、酸性雨および酸性霧が攻撃手段として使えるレベルまで強化されるのには30分以上かかる。しかもずっと精神に強いストレスがかかっている事が前提だ。
そして彼女は色んな意味でまだ子供だ。しかも女の子。酸性雨が強まる前に、ヒーローと交戦になろうものなら絶対勝てないだろ。向こうはプロだぞ。
強酸性の肌は武器になるかなあと思った事もあったけど、どうやら幼少から自分の異能に体を蝕まれてた事によって虚弱体質になってしまっているようで、活発な動きは苦手みたいなんだよな。
完全にどうにもならん!という訳ではないが、
現時点ではあまりに課題が多すぎる。実戦経験もないし…。
ダストロイヤーやMr.エイトと同じく、レモンちゃんも異能が制限されるように改造してあるが…
なんかが引き金になって制限解除されたりしないだろうな…。
そんな事になったらもう本当にメチャクチャだ。
ヒーロー達は許してくれないだろうし、ていうか止められるのか?

[787 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[347 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[301 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[75 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
ザザッ――
画面の情報が揺らぎ消えたかと思うと突然チャットが開かれ、
時計台の前にいるドライバーさんが映し出された。
ドライバーさん
次元タクシーの運転手。
イメージされる「タクシー運転手」を合わせて整えたような容姿。初老くらいに見える。
 |
ドライバーさん 「・・・こんにちは皆さん。ハザマでの暮らしは充実していますか?」 |
 |
ドライバーさん 「私も今回の試合には大変愉しませていただいております。 こうして様子を見に来るくらいに・・・ですね。ありがとうございます。」 |
 |
ドライバーさん 「さて、皆さんに今後についてお伝えすることがございまして。 あとで驚かれてもと思い、参りました。」 |
 |
ドライバーさん 「まず、影響力の低い方々に向けて。 影響力が低い状態が続きますと、皆さんの形状に徐々に変化が現れます。」 |
 |
ドライバーさん 「ナレハテ――最初に皆さんが戦った相手ですね。 多くは最終的にはあのように、または別の形に変化する者もいるでしょう。」 |
 |
ドライバーさん 「そして試合に関しまして。 ある条件を満たすことで、決闘を避ける手段が一斉に失われます。避けている皆さんは、ご注意を。」 |
 |
ドライバーさん 「手短に、用件だけで申し訳ありませんが。皆さんに幸あらんことを――」 |
チャットが閉じられる――