
某所、アジトにて。
アジトというのは仲間の片眼鏡の人が拠点として用意した隠れ家のようなものだ。
彼は思いのほか場慣れしているらしく、物品の調達や諸々の調整に長けていた。
このアジトもその一環らしい。
仲間を集めて拠点も用意して、慎重で着実に物事を進める性格なのだろう。
そんな人物がこんなよくわからない世界に巻き込まれているのだから、世の中何が起きるかわからない。
黒猫に用意された部屋……もとい、案内を追い抜いて「ここがいいにゃ!」と選んだ部屋は物置だった。
誰かが放置したままなのか、棚や箱などが雑多に置かれていて、寝床に使えそうな家具はない。
それでもするりと隠れられるポイントが多く感じられて、一目見て気に入ったようだ。
内装は好きにしていいという言葉をいいことに、棚の配置をどんどん動かし、ドア方面からの死角を増やす。
ついでに棚と棚の橋掛けのように板を置いたりもする。
どこからか持ってきた毛布を数か所に配置し、調理に使うもの置き場、衣類置き場、
いつの間にか持っていたもの置き場、等々、好き勝手やっていた結果、
随分と散らかったように見える部屋が出来上がった。
死角が多い方が落ち着くのだから仕方ない。別に整理整頓が下手というわけではない。
実際、爪とぎ用のスペースは掃除&廃棄しやすいようにドア近くに用意した。
適当に拾ってきた木の板を爪とぎ用に使ってみてはいるが、一度の爪とぎで使い物にならなくなるのが困る。
もう少し頑丈そうなものはどこかにないだろうか。黒猫の目下の悩みとなった。
ではその部屋で何をしているのかというと、大半は寝ている。
寝る子と書いてねこと読むくらいだし仕方ない。
最初は数か所に置いていた毛布も、全部集めて全部使った方が気持ちいいと気づいてからは
一か所で寝ている。枕元(枕はないが)には「いつの間にか持っていた物置き場」から
持ってきた刀の鍔を置いていると落ち着いていい。その刀の鍔に黒い紐を通して結うと尚良かった。
それぞれが自分にどういう意味があるのかは知らないが、安眠は大事なのでこれらも大事にするつもりだ。
それにしても、中央部に穴が開いた鉄の飾りものを見てこれが何かすぐわかったのはなぜだろう。
失った記憶に関係あるのだろうか。それならばさっさと手離した方が余計な事を思い出さずに済むから
捨てた方がいいか。猫の頭でもそれくらいは考えられるが、それにしても手離し難いこの謎の愛着。
肉球でなぞって感じる鍔の模様の感触も好ましい。ひんやりしているのも良い。もう少し持っておこう。
また何か面白いものがいつの間にか手に入ったりするだろうか。
それが最近のちょっとした楽しみになっている黒猫だった。

[770 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[336 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[145 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[31 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
 |
エディアン 「・・・おや。チェックポイントによる新たな影響があるようですねぇ。」 |
 |
エディアン 「今度のは・・・・・割と分かりやすい?そういうことよね、多分。」 |
映し出される言葉を見て、腕を組む。
カオリ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、橙色の着物の少女。
カグハと瓜二つの顔をしている。
カグハ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、桃色の着物の少女。
カオリと瓜二つの顔をしている。
 |
カオリ 「ちぃーっす!!」 |
 |
カグハ 「ちぃーっす。」 |
チャット画面に映し出されるふたり。
 |
エディアン 「あら!梅楽園の、カオリちゃんとカグハちゃん?いらっしゃい!」 |
 |
カグハ 「おじゃまさまー。」 |
 |
カオリ 「へぇー、アンジニティの案内人さんやっぱり美人さん!」 |
 |
エディアン 「あ、ありがとー。褒めても何も出ませんよー?」 |
少し照れ臭そうにするエディアン。
 |
エディアン 「間接的だけど、お団子見ましたよ。美味しそうねぇあれ!」 |
 |
カオリ 「あー、チャットじゃなくて持ってくれば良かったー!」 |
 |
カグハ 「でも、危ないから・・・」 |
 |
エディアン 「えぇ、危ないからいいですよ。私が今度お邪魔しますから!」 |
 |
エディアン 「お団子、どうやって作ってるんです?」 |
 |
カオリ 「異能だよー!!私があれをこうすると具を作れてー。」 |
 |
カグハ 「お団子は私。」 |
 |
カオリ 「サイキョーコンビなのですっ!!」 |
 |
カグハ 「なのです。」 |
 |
エディアン 「すごーい・・・・・料理系の異能って便利そうねぇ。」 |
 |
カオリ 「お姉さんはどんな能力なの?」 |
 |
エディアン 「私は・・・アンジニティにいるだけあって、結構危ない能力・・・・・かなー。」 |
 |
カグハ 「危ない・・・・・」 |
 |
カオリ 「そっか、お姉さんアンジニティだもんね。なんか、そんな感じしないけど。」 |
 |
エディアン 「こう見えて凶悪なんですよぉー??ゲヘヘヘヘ・・・」 |
 |
カオリ 「それじゃ!梅楽園で待ってるねー!!」 |
 |
カグハ 「お姉さん用のスペシャルお団子、用意しとく。」 |
 |
エディアン 「わぁうれしい!!絶対行きますねーっ!!!!」 |
 |
エディアン 「ここじゃ甘いものなんて滅多に食べれなさそうだものねっ」 |
チャットが閉じられる――