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ショウスケが怪我を負ったと聞き、全身の血が冷えた。
足の感覚が無くなり、その場に崩れ落ちたと思う。
詳細は訊こうにも相手にされなかった。
ただ、医務室に運ばれたという言葉を耳にして弾かれたように向かっていた。
…………………
バン、と戸を開けると医務室に居た医師が振り向いた。
ベッドの上には血の気のないショウスケが横たわっている。
それを目にした途端、全身に震えが来た。
何故?どうして?一体何が?
息は?心臓は動いている?
まさかもう…………
「ショウスケくん!」
悲鳴にも近い声を出し、縋るようにベッドに行っていた。
それを医師が阻む。
「ショウスケくん!ショウスケくんが!!」
「落ち着きなさい!」
何故自分を阻むのか、容体を知りたい、どうなっているのか、離してほしい、
あらゆる気持ちがぐちゃぐちゃになり、ピクリとも動かないショウスケに焦りを覚える。
「離してください!」
火事場のなんとやらなのか、大人相手に力の限りで振りほどきショウスケの元にたどり着く。
「……し……ショウスケくん……」
生気のない顔に息が止まる。
「離れなさい!」
医師たちの言葉などは耳に届かなかった。
心拍数が上がる。
冷えた血が沸き上がる気配がする。
呼吸が浅く、震えが止まらない―――
「いやだ……」
唯一、この灰色の日々で心を開けたと思った相手なのに。
この手からすり抜けていく感覚。
「いやだ!」
抑えていた、抑えつけらえていた感情が積もりに積もって、今花火のように爆発した。
その瞬間、周りが凍てついたかのように自分以外の動作が無くなった。
「え……?」
己を取り押さえようとする医師たちは、こちらに手を伸ばしたまま固まっている。
「な、なに……?」
怯え狼狽えるコハルの近くに人がやってくる。
人、というよりはぼんやりとした人の形をした影のようなものがその場にあった。
『その少年を助けたいかね』
ユラユラと揺れる影がコハルに話しかける。
警戒はあったが、その問いに迷いなく頷いた。
『いいだろう。お前の内に眠る異能を覚醒させよう。』
影が一層揺らめき、コハルに触れると空間が弾けたように動きを取り戻した。
それと同時に、コハルとショウスケの周囲に泡のようなものが無数発生していた。
「こ、これは……!?異能……?」
医師たちが狼狽える。
コハルには異能が使えない、ということは周知だったから。
今のは一体、と思う暇もなく、目の前のショウスケに集中する。
「お願いだから、目を覚まして……」
コハルの想いを汲むかのように、キラキラと漂う無数の泡がショウスケの全身を包み込んだ。
それからしばらくして、シャボン玉が割れるかのように、パン!と泡が消えた。
コハル自身も何が起きたのかわからなかったが、
泡に包まれたショウスケの顔に血色が戻っていた。
そして、睫毛がふるりと震える。
「ショウスケくん!」
――コハルがようやく己の殻に小さな穴をあけ、水の異能を手にした出来事だった。
その代償は知らないままに。

[770 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[336 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[145 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[31 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
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白南海 「うんうん、順調じゃねーっすか。 あとやっぱうるせーのは居ねぇほうが断然いいっすね。」 |
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白南海 「いいから早くこれ終わって若に会いたいっすねぇまったく。 もう世界がどうなろうと一緒に歩んでいきやしょうワカァァ――」 |
カオリ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、橙色の着物の少女。
カグハと瓜二つの顔をしている。
カグハ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、桃色の着物の少女。
カオリと瓜二つの顔をしている。
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カグハ 「・・・わ、変なひとだ。」 |
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カオリ 「ちぃーっす!!」 |
チャット画面に映し出されるふたり。
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白南海 「――ん、んんッ・・・・・ ・・・なんすか。 お前らは・・・あぁ、梅楽園の団子むすめっこか。」 |
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カオリ 「チャットにいたからお邪魔してみようかなって!ごあいさつ!!」 |
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カグハ 「ちぃーっす。」 |
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白南海 「勝手に人の部屋に入るもんじゃねぇぞ、ガキンチョ。」 |
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カオリ 「勝手って、みんなに発信してるじゃんこのチャット。」 |
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カグハ 「・・・寂しがりや?」 |
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白南海 「・・・そ、操作ミスってたのか。クソ。・・・クソ。」 |
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白南海 「そういや、お前らは・・・・・ロストじゃねぇんよなぁ?」 |
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カグハ 「違うよー。」 |
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カオリ 「私はイバラシティ生まれのイバラシティ育ち!」 |
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白南海 「・・・・・は?なんだこっち側かよ。 だったらアンジニティ側に団子渡すなっての。イバラシティがどうなってもいいのか?」 |
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カオリ 「あ、・・・・・んー、・・・それがそれが。カグハちゃんは、アンジニティ側なの。」 |
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カグハ 「・・・・・」 |
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白南海 「なんだそりゃ。ガキのくせに、破滅願望でもあんのか?」 |
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カグハ 「・・・・・その・・・」 |
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カオリ 「うーあーやめやめ!帰ろうカグハちゃん!!」 |
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カオリ 「とにかく私たちは能力を使ってお団子を作ることにしたの! ロストのことは偶然そうなっただけだしっ!!」 |
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カグハ 「・・・カオリちゃん、やっぱり私――」 |
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カオリ 「そ、それじゃーね!バイビーン!!」 |
チャットから消えるふたり。
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白南海 「・・・・・ま、別にいいんすけどね。事情はそれぞれ、あるわな。」 |
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白南海 「でも何も、あんな子供を巻き込むことぁねぇだろ。なぁ主催者さんよ・・・」 |
チャットが閉じられる――