
――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――
◆4月1日
今日はピスクの卒業祝いがあった。中等部の生徒が、熱心にも準備を進めてくれたようじゃ。
本来準備は我らが行うべきものではあるが、高等部だけの身内会になるよりもいいのかもしれん。
ピスク、奴はブラ女に随分と拘る女であった。
果たして、大学に行ってもなお彼女は彼女たりうるのだろうか。
送り出した身としては少々の不安もあるが……ま、向こうの問題じゃな。
自分の感情とは上手く付き合えよ、ピスク。
貴様は他人の心配はするくせに、自分のことはからっきしじゃからな。
――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――
――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――
◆4月9日
ブラ女に新しい守衛が増えておった。
取るに足らん些事じゃと思っていたが、どうにもこの守衛、ヤ○ザっぽい。
極道スタイルはむしろ好みの類じゃ。
よくこのような者を我が学院は雇ったなと、感心するが……これは我にとっても良い知らせじゃ。
過去の堅苦しい体制に縛られず、より自由な校風への変革を目指せている証拠なのじゃから。
――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――
――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――
◆4月15日
今日は企業連合と星十字教団の交流戦があったので、観戦に行ってきた。
イノカク……とは違うらしい。
学生が多数ではあったが、スポーツであるイノカクの物よりも、より戦闘に特化したものじゃ。
イノカクとはまた違う面で、戦いというものを楽しませてもらった。
そういえば、実況者がアイドルをやっているようじゃ。
和風アイドルあすり。
今後も見離せないな!
――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――
――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――
◆4月23日
何やら眷属がカチコミしたがっているようじゃ。
どこに行っても止めに来るのが眷属であったが、止める割にはその状況を楽しんでいるらしい。
そういや直近のカチコミはしぃらに連れられて行ったホワイトデー会城じゃったか。
あの後生徒会でお菓子を配ったりしたが、あれも楽しい出来事じゃったな……
――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――
――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――
◆4月30日
体育祭じゃ!
しぃらに連れられてまた百葉箱にやってきた。
ええいカラス共め、服引っ張りおってからに。アイロンかけるのも大変なんじゃからな!
我が校はチアガールとして応援するのを主な目的とする。
体育祭で暴れたい気持ちも正直あるのじゃが……正月のイノカクで激しくやりすぎたのもある。
まあ今回は合同というのもあるしな、運営側での参加とさせてもらおう。
いややっぱ参加したいな、どうしようか。こっそり参加してしまおうかのう。
ともあれ目の前の目的は、チアガールとして応援を行うことじゃ。
チア部の連中にこれを習い、我もまた全力でボンボンをフリフリすることとしよう。
ところでどうしてローラースケート?
ま、まあ練習すればなんとかなるか。うむ、今日も1日がんばるぞい。
――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――○――――
 |
マオ 「……」 |
明日はどうしようか。そのまた明日は?
来年は中等部生徒会にいた者が上がってきて、かつてない戦争が起きる。
それまでに会長――雪月結華との決着を付け、地盤固めに奔走しなければならない。
最も、結華のことを何も知らなかった今までと違って、あまり敵対する意志は無いのだが。
所詮はどちらが上に立つかというだけの話で、組織としての枠組みが大きく変わるわけではない。
魔王は戦いが好きだ。
だからこそ、全力で当たらせてもらう。
どちらが勝ったとしても、そこにきっと未練は無いだろう。
イバラシティの魔王は明日へと向かう。
目の前の試練を乗り越え続けて、努力し続けて、先の未来を掴み取る。
これが自分の在り方なのだから。
 |
カノン 「魔王軍四天王。愛の悪魔、カノンはここに」 |
 |
カノン 「ごきげんよう、魔王様。お変わり無い様子で何よりです」 |
 |
魔王 「カノンか。……ふん、魔王が倒れるわけがなかろう。で?貴様はワールドスワップに巻き込まれてはいないはずじゃが。何をしに来た」 |
 |
カノン 「もちろん、我が主たる魔王様が心配になったのです。忠実な魔王の下僕として、当然でしょう。ああ、もちろん愛する魔王様を慕う者として、個人的な感情もありますが」 |
 |
カノン 「魔王様。まさかあの島に、未練などありませんよね? あなたを慕う雪野さんは、どうやら一緒に堕ちると申しておられるようですし。」 |
 |
カノン 「素晴らしい! 愛です。愛ですね、魔王様?」 |
 |
魔王 「ええい、変わらず愛だとうるさいヤツめ。そういう貴様は別の島で別の魔王に絡んでいたようではないか。主君に対する裏切りか? ブチ殺すぞ?」 |
 |
カノン 「可愛らしいお方を見つけたので、カノンったらつい手が出てしまいまして。殺してくださるのですか? 愛ですね?」 |
 |
魔王 「殺しのどこが愛なんじゃ!ええい、くそ。貴様といるとどうにも調子が狂う!」 |
 |
魔王 「……ともかく、残る気など無い。我には魔王としての責務がある。とっとと愚民共を元の国に送り返し、我らも帰還するぞ!」 |
怒ったようにして飛び去っていく魔王の背中。
きっとパーティメンバーの元へ行くのだろう。
 |
カノン 「……やっぱり残っているじゃないですか、未練。一人でなく、仲間と共に戦っているのがその証拠です」 |
 |
カノン 「ああ、素晴らしい! 愛ですね、魔王様。とはいえ、本当に残られてしまっては困りますから……もうちょっとだけ見守ることにしましょう」 |
魔王と比べると小さな翼を羽ばたかせて、カノンもまた飛び去っていく。
その手に一枚の楽譜を握りしめながら。
to be continued...