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>> 緑昌ヨウジ
――
お気をつけ下さい、将軍、嫉妬というものに。
そいつは緑色の目をした怪物で、ひとの心をなぶりものにして、餌食にするのです。
William Sharekspeare Othello , 1602.
緑昌ヨウジは
完璧な家庭で育った。
幸福で優しい母、厳しいが尊敬できる父親、成績も常にトップで運動もできた。
裕福で見目もよい彼は、常に皆からの羨望を浴びて育った。
校内順位で
1位だったことをを母に伝えると、母はとても喜び「がんばったね。」と頭をなでてくれた。ふっくらとほほ笑むその表情がヨウジは
一等好きだった。
同級生から
嫉妬による嫌がらせを受けることもあった。
表向きは優等生らしく困ったようにふるまっていたが、
内心では嘲笑していた。なんと
醜い負け犬なのだろう、と。
しかし
最初の挫折は高校時代だった。有数の進学校に進学したヨウジは
初めて人に
敗北した。
全国から一握りの優秀な学生が集う その学校では、ヨウジは選ばれた人間ではなく、
全国的に優秀な学生の一人だったのだ。
今まで周囲の
羨望の中心だった緑昌ヨウジは強く打ちひしがれた。
群衆の一人であるという焦りが、
強い妬みの感情が身のうちを焼く。
そんな折、両親が離婚した。母は何も言わず家を出た。連絡をよこすこともなかった。
自分が一番でなくなったから
見捨てられたのだ。そう思った。
自虐的で、ひどく攻撃的な自分を持て余しながらも一層勉学に励んだ。
一番になれば、
特別になれば、母が戻ってくると願掛けして。
しかし、その後の大学でも、苦労の末入社した一流企業でも、
選ばれた人間は自分ではなかった。
――
緑の目の怪物が囁いた。
あれらがいなくなればいいのだ、と。
抑圧された感情があふれ出す。こんなにも自分が制御できないのは初めてだった。
羨望の中心にいる親友を騙し、突き落とし、
そして
摘発された。
かつて栄光の中にいた自分が嘲笑する。なんと
醜い負け犬なのだろう。
父から勘当され、父も納得した美しい婚約者
カナデも去った。
一瞬にて、今まで築いた栄光・名誉、家族すべて失ったのだ。
もはや自分は嘲笑されるだけの存在だった。
すべてを失った自分は、最後に母を訪ねた。
――
母は、再婚していた。
だから、
癇に障ったのだ。
負傷しながらも、固く繋がれた手に。
暴走した怪人に襲われながらも、互いを見捨てなかった強い絆に。
弟のほうに
XYZ細胞の適性がないのは分かっていた。
だから
あえて移植したのだ。醜い怪物と化した弟を
見捨てる姉の姿が見たかった。
その後、
侮蔑しながら弟を見捨てた
女を殺してやろうと思った。
いつものように。
「弟を助けてくださってありがとうございます」
――ああ、
いらいらする。
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こじんまりとした
マルカイの捜査室に、元気の良い声がこだまする。
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遊場 ナナ 「本日付をもって着任いたしました、遊場ナナであります!
ご指導・ご鞭撻のほど よろしくお願いいたしまーーーす!!」 |
紫とピンクのグラデーションのド派手な髪色に、でかいサングラス。
きわめつけは謎のヘッドセット。
どう見ても怪しい風貌の女性が、入り口に立っていた。
To Be Continued...