
改めて、ここにハザマで共闘する4人の勇士が揃った。
などというと聞こえはいいが、これは・・・なんだ、成り行き上・・・仲間? 味方?
便宜上パーティメンバーとでも呼んでおくが、とにかく仲間となった3人の戦闘力を観察する。
もともと備わっている能力、さらに言えば体力精神力、そういったものの傾向もあるが、
まず必要なのは単純な戦闘力だ。
この侵略ゲームは、戦闘をすることが前提な以上、よほどでない限り戦闘力が第一に求められる。
戦闘能力だけに拘ると情報収集に難が出たりするものだが、
最低限の情報は、Cross+Roseとやらで得られるらしい。
できれば索敵や情報収集でも差を付けておきたいが、索敵系の能力者は陣営に数人いればいい。
むしろ重要なのは情報伝達の方で、これもCross+Roseとやらの機能で補える。
ノウレットと名乗る管・・・妖精、自我があるサポートシステムなら引き込む事も可能か? 奴を丸め込んで情報を引き出すことも必要だな・・・それこそアマネの得意分野か。
◇ ◇ ◇
サツキ。
変身系の能力。10代の女としては元々の体格にも恵まれてるな。
変身の様子は観察できなかったが、戦闘開始とともに別の姿を取っている。
隙は皆無ではないが、時間が掛かることもなく、初動からスムーズに攻撃態勢に移れる模様。
変身の隙を守る必要は無し。常時変身状態でないのは、消費がでかいか、何らかの制約か。
少なくとも言動は変身前後で継続しているようなので、憑依や別人格などでなく、
本人の意識を保ったまま戦闘力を強化できる代物のようだ。
性格は攻撃性が増しているようだが、理性を失う類の物ではないのはありがたい。獣人化とかコントロール利かなくなるパターンは厄介だからな。
変身後は長い手のような髪のような物を体の一部として扱える、か。
殴り威力は申し分なし。
髪がどの程度の精度と感覚があるのか、威力と最大射程、あとは切り落とされた場合に再生可能なのか。切断された断片も動かせるのか。再生できるならどの程度時間がかかるのか・・・が知りたい。ノーリスクで断片を扱えるなら良い威嚇と牽制になる。
アマネと同じくイバラサイドの、学校通いのはずだが、陣営に関しては不明。どんだけ喋るか、だな。
セオリ。
脳胃・・・じゃねー、人喰い。
常に空腹状態というよりも、根源的な欲求が人間のそれと異なっているように思える。
定期的に一日三度、食欲を満たしてやれば済むというような物でもないのだろう。
逆に言えば、食欲適当に煽ってやりゃコントロール可能にも見える。
衣服からして和族の・・・武術系か。単純に格闘のパワーが高いな。
力押しでも大抵の相手に引けを取らない上、あっち方面らしく呪いの類も心得ているようだ。
おそらく捕食相手の精神干渉や操作、何らかの行動制限を強いる類の物もあるだろう。巻き込まれたくはないが、威力と効果範囲は知っておきたい。
さらに召喚も備えてるらしい。こいつは一対多を充分すぎるほど想定してやがる・・・さすが一人で全て喰らう腹積もりなだけはあるな。
一応この、ハザマ世界におけるゲームのルールは「最大4人対4人」となっているようだが、
対多数になる場合はこいつの召喚が不可欠。範囲攻撃があっても、だ。
召喚はデコイとしても有効だが・・・どうもここは息切れしやすいらしいな。
多召喚には期待はできない。強力なやつ1体呼ぶだけで充分ではある。
そして・・・アマネ。
考えれば考えれるほど「仲の良い一番の友人」という意識に持っていかれそうになるが、
ここでの戦力を見定めなければならない。
いわゆる基礎技能、ここハザマでの力の扱いはできている・・・ようだな。
最初の「テスト」、ナレハテにやられてない時点で上出来だ。少なくとも極端に足手まといになったりする心配はない。
こいつの扱う特性は・・・光と水が見えるな。
まあ本人の性質的にそっち方面なんだろう。回復、支援。力の放出もできている。
目を瞑って出鱈目に殴りかかるより、後方支援なら支援でそっちに集中してもらった方がいい。
チームとして力押し一辺倒よりも、むしろバランスがいいと捉えるべきだな。
このハザマ世界は、本人の異能が反映された仮想世界、ただし全員平等に最低限の底上げ有り、というように考えるのが理解しやすい。
ハザマからの脱落後にどうなるのかはルールで開示されなかったが、さすがにこいつが目の前でやられたりしたら夢見も悪いだろう。
その点、過剰な心配は不要そうなのは幸いだ。
攻撃の直撃を逸らしてやる程度はできるが、最低限自分の身は自分で守ってもらうんでも支障はないだろう。
アマネ本人の固有能力は、あるのかないのかすら不明だが、聞いてもはぐらかすようなヤツだった・・・ような記憶。
チ、もう少し踏み込んで聞いておけよ、「はずれ」。
ひとまず、戦闘において当面の戦力は支障なさそうだ。
個別の戦闘力、連携、それなりに整っている。
わけもわからず飛ばされてきたイバラシティの連中よりも、大方恵まれていると考えるべきだろう。
◇ ◇ ◇
「一応聞いとくが」
対人戦闘の終了後。
放心した様子のアマネに声を掛ける。
「さっきの連中、知り合いだったろ。
塾っつったか、「はずれ」と一緒に勉強したな。
あそこの教師ってやつか。
戦った感覚。
戦わざるを得ないと悟った相手が、本気で掛かってくる感覚。
倒した感触。
どう思った。言ってみな」
「・・・・・・」
アマネは答えない。
背を向けたまま、黙っている。
「・・・あー」
答えを求めてるわけじゃない。
だが、この先も何度となく遭遇しうる場面だ。
先ほどは自分が地べたに這いつくばらされながら、
今度は自分を知る他人を地に這わせ、蹴落とし、踏みつけていく。
これを決着が付くまで、幾度も幾度も繰り返して。
その先にある物も、自分とは違うはずで。
お前の、精神は。
壊れずにいられるか。