カタカタカタ………
事務員の小鳥遊さん。またの名をジャンヌ
(ソシャゲアカウント名)。
現在は2月下旬に開催される
チョコレートイメージガールオーデション大会について、参加者に向けて詳細メールの内容を打ち込んでいるところだった。
この大会は、開催こそYSDプロが行っているが元はチョコレート工場の依頼だ。
バレンタインという日本では恒例の行事ごとに乗っかったある意味大それた企画。テレビも来るとかこないとか。他の芸能事務所にも参加の依頼を出したらしく、今それらに向けて招待メールを打っているのが彼女である。
そんなデスクに座る彼女の前には、当事務所の看板モデルのフロレンシアが退屈そうにチョコスティックをかじっていた。
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シア 「ねえジャンヌ、日本のバレンタインって女の子が男の子にチョコあげるんだっけ」 |
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小鳥遊 「はい?まあそうですね、逆の場合もありますけど大抵がそうかと…」 |
友チョコとか本命チョコとか義理チョコとかいろいろありすぎる日本のバレンタイン。ドイツ出身の彼女には馴染みがなさそうなのでそれは伝えずにいよう。
しかし小鳥遊が思っていたよりも、彼女の考えていることはだいぶ先のようで…
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シア 「チョコレートをあげるってことは、ホワイトデーにお返しもらうんだよね?」 |
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小鳥遊 「…?そうですね」 |
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シア 「料理上手の人に返すのってすごく嫌じゃない?」 |
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小鳥遊 「はあ…?」 |
いきなり何を言い出すのかこのモデルは、バレンタインに何か苦い思い出でもあるのだろうか。チョコなだけに。
でもバレンタイン…チョコ…お返し…このききかたはむしろシアさんがもらってお返しの際に何かあった…?
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小鳥遊 「え、何か苦い思い出でも?」 |
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シア 「?………いや違う違う!返すとかじゃなくても、料理上手の相手にあげるのもなんか嫌って話!」 |
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小鳥遊 「シアさん料理しないんですか?」 |
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シア 「う~んしない!」 |
そこきっぱり言っちゃいますか……彼女の育ちは詳しく知らないが、普段の様子から見るに前に出された食事を食べて終わるタイプだとわかる。いつも来客用のお菓子をつまみ食いされているからわかる。
でもどうしてそんなことを聞くんだろう?誰かあげたい人でもいるのかな?
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シア 「プロデューサーちゃんってさぁ~食い意地はってるから完食するけど『自分が作ったほうが美味い』みたいなこと言いそうじゃない?」 |
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小鳥遊 「あ~……それはわかります」 |
うちの事務所のプロデューサーさんは確かに料理が美味い。趣味は料理ですか?ってくらいうまいし本屋に入って5冊購入したら内1冊は料理本だと思った方がいいくらいのレベルだ。
たまに来客用に出すお茶菓子も作ってくれたりする。元モデルらしいけど名前もよくわからないし何者なんだろあの人……
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小鳥遊 「まあ実際私が作るよりおいしそう…むしろ私がプロデューサーさんからチョコもらいたい……ガチャ勝てそう」 |
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シア 「がちゃ?」 |
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小鳥遊 「おっと失礼つい本音が」 |
冷静になって私、もらえたとしてもそれは何の触媒にもならない。シアさんからのチョコは吸血鬼キャラが引けそうだけど。
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小鳥遊 「というかやっぱりどうしてそんなことを?ちなみに私は義理チョコなら配りますけど」 |
まあ職場内だけですが。しかも既製品ですよ、ええ。約束されたおいしいチョコです。
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シア 「うー……いやいや、ちっちゃい頃に手作りのお菓子あげたらね、はっきりまずい!って言われたことあったからさ~ 今年は日本にいるし、周りにのっかって手作りチョコ挑戦!してみよっかな~って思ったけどプロデューサーちゃんにあげるのはどうしようかなって思って」 |
少し照れたようにほほをかくシアさん。なるほど、意外と乙女なところもあるんですねこの人。
要するに私が渡すなら一緒に渡そうと思っている……のでしょうか?プロデューサーさん、好かれてるのか嫌われてるのかよくわかりませんね…。
等と思いながら、私は彼女の小さいような大きいような悩みを軽く聞き流しながらキーボードを叩いた。
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◆チョコレートイメージガールオーデション大会
◆開催予定2月下旬
・開催場所:〇〇区〇〇
・当日に必要………
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以上の内容を
白埼蒼歌様
月島キャロル様
群条エナ様
シルバーキャット様
千代田梅子様
道行裏葉様
にお送りしました。 ▼