
ときどき、おもうことがある。
これでいいのか、正しいのか、間違っていないのか。
もっと奔放に、自由に、我儘に。
もっと緻密に、理詰めで、しっかりと。
ときどき、わからなくなる。
故に私は、父の背に問う。
ラザーとは、錬金術とは。一体、何が答えなのか。
突如意識が覚醒し、気がつけば……紫がかった空を差す時計台と、それを背に立つ男一人。
ラザーは直感する。ここは、『戦争』の場だ、と。先程まで危惧していた、危惧されていた、奪い奪われる悪夢の場だと。
前回の夢……悪夢から続く説明をシロナミから聞きながら、片手で仕込んだ薬瓶の状態を確めつつ、全力で思考を巡らせる。
……一つでも、『後手』に回れば。それは、一生の後悔になるのが、目に見えているから。
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ラザー 「(仕込みの錬金は安定重視で効果が低い、『自衛』にすら役立たない。あちらの世界での錬金が安定しにくかったのはワールドスワップによる世界の歪曲と仮定、その場合、互いを隠さず殴り合うこのハザマでなら歪曲影響力は低く、錬金成功率は高い。あちら……仮称アンジニティの状況まで見えているこの男は白に近いグレー、鵜呑みは禁物……)」 |
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ラザー 「……ッ!」 |
殺気、振り向くラザー。一拍遅れて、シロナミからの声が届く。
平静、といった風に続けるシロナミに。『ブチのめせ』と続けたシロナミに。僅かに、しかしはっきりと、ラザーは苛立ちにも似た否定を抱いた。
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ラザー 「違うわよ。そんな簡単な話じゃない。……そんな簡単に。善意を手折ってやるものか……!」 |
なるほど確かにアンジニティとやらは町に紛れこんでいたのだろう、それは自らの錬金の技が示している。
だが、目の前の相手がアンジニティではないと。偽りの姿だろうとなんでもいい、確かに紡いだ言葉を持った『友人(アンジニティ)』でないとする事実はどこにある?
この騒動の中に居る彼が、彼女が、彼らが、あの人達大事な友人が戦争で互いに争い、命を落とさない保証がどこにある?
ふざけるな。
「誰も殺さない。誰も殺させない。」
だれも、ころして、なるものか。……でなければ、わたしは。
ラザーは自分でも、今何をしているのか理解できていない。
血反吐を吐いた気がする。呪詛まがいの決意を吐いた気がする。体の奥底から、赤い何かを放った気がする。これまで見たことの無いほど、強力な錬金術を使った気がする。
……父の姿を、見た気がする。