「―――――おトモダチがほしい」。
彼女はそう言うとピッケルを持ちだし友達になりうる相手を探しはじめる。
数時間後、[お気に入り]を見つけると彼女は無邪気に笑い、走り出した。
「ねえ、わたしのおトモダチになってよ?」。一方的にそう言うと、彼女は笑いながらピッケルを構え振り下ろす―――――。
[お気に入り]は逃げるかもしれないが彼女には問題がない、無限に走れる脚があるのだから。その足で何処までも追いかけ、追い詰め、手に持ったピッケルで頭蓋を叩くその繰り返しである。
[お気に入り]が動かなくなると彼女は笑うのをやめた。
無表情のまま彼女は露わになった[お気に入り]の脳に手を入れる。ぐちゅりぐちゅりと音が立つ、動かなくなって久しい[それ]はびくんと跳ね―――動き出した。
彼女はまた無邪気に笑いだし[それ]に言う。「おトモダチになってくれるのね?ありがとう!」。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
沢山の[友達]に囲まれながらその知らせの紙は唐突に飛んできた。
「てぃー…わん?なんだろう…」。
普段は物を読む習慣すらない彼女だが、ド派手な絵にカラフルな色彩が施されたその紙を手放す事が出来なかった。
「よくわかんないけど…おもしろそう!」。
紙の表にはそう、アンジニティの間で有名なあの『爆弾鉄器グランプリ』(通称T1)の事がでかでかと書かれていた。背景は大きな爆炎とそれに逃げ飛ぶナレハテの絵が描かれ非常にコミカルである。
裏面には丁寧に爆弾鉄器の作り方が、かわいいキャラクターの絵付きで解説されていた。
「こうすればいいのかな?」。
基本文字を読まない彼女は絵だけの印象を頼りに、[友達]の一人の頭を切り開きそこに爆発魔法を仕込んでみたようだ。
するとどうだろうか。[友達]から[爆発する肉塊]に変わったそれはヨタヨタと数歩、力なく歩き前のめりに倒れると爆発四散した。
「アハッ♪」。
その光景を見ていた彼女は頬に付いた血を拭うと体を震わせる。
「――――すごい」。
こうして初めての試みは失敗に終わったものの、彼女に多大な衝撃を与え幕を閉じたのである。
―――それから数日。彼女は考える。あの爆発は好きだけど[友達]がすぐにいなくなるのは寂しい。その問題を抱えていたのである。
「イレモノががんじょうじゃないからすぐにばくはつしたのかな?」。
ようやく鉄の入れ物を手に取った彼女はそうつぶやく。
試しに爆発魔法を仕込み離れてみる…どうやら爆発はしないようだ。
「これならおトモダチもあんぜんね!」。
後は仕舞う場所なのだが、彼女はもう決めていたようだ。
[友達]の一人を連れてくると腹を裂き、胃の中に先ほどの鉄の入れ物を入れ器用に縫ってしまった。
「おさいほうはとくいなんだよ♪」。
こうして彼女は知らぬ間に『歩く爆弾鉄器』を完成させた。
聡明なアンジ民の皆様はお気づきかもしれないが、(イバラ民はアホ)幸運にもハザマとT1の開催日時は一致しているのだ!
故に彼女はハザマで[友達]を増やし、『歩く爆弾鉄器』を量産させていく目論見だ!
[お気に入り]にならないように気をつけろ!