>>>MAP 【K-12】
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止まった足を地面から無理やり引き剥がすように、歩を進めた。
白昼夢らしいものを見て一箇所に留まってしまったことで随分周囲の気配も減ったように思う
これがアンジニティであったなら致命的な失敗だったろうな、なんて考えられる程には
赤鬼(ベニ)が言った事は正しいのだろう。
サクッ…──と足元に柔らかな感触。
道路が途切れ、草原地帯へと足を踏み入れたようだった。
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>>>MAP【N-14】
歩き疲れた足を休ませるために、近くの茂みに隠れるように腰を下ろす。
草地でとる休息は遮蔽物のない道よりいくらか楽だった、両膝を抱え、顔を埋める。
ずっと同じことを考えている。
知りたいと思いながら、気が付きたくないと願う、かたち。
『良い想い』も、『悪い想い』も、過ぎれば全て等しくストレスである事に変わりはなくて
溢れ出る程に強い想いは抱えるにも苦しく、涙となって頬を濡らした。
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つづり 「…怖い」 |
誰に聞かれるでもなく零れた言葉は、紛れもない本物で。
僕はストレスに弱い。
もの
それも外傷的なものではなく、身の内に溢れる精神という感情の、だ。
あの街へ足を踏み入れてからというもの、これは幾度も経験する事となった…
だからこそ知ってしまったともいうのだが
最初は焦燥と不安、次に拒絶と怒り、そして今は…
誰しもが幸せであればそれが良い、と思う。けれど同時に、
他人が不幸に見舞われようとも僕は気にも留めないだろう、とも思う。
だってそれらは、"僕にはどうすることもできないもの"だ。
多少は「辛そうだ」とか、「大丈夫だろうか」などと、心配に似た何かを思う事もあるけれど
苦しみや痛みなどは結局の所、自分でどうにかするしかないものなのだ。
誰かが和らげてくれるなんて、ただの一度も経験したことはなく、
だから。そんなものがあるなんて信じられるわけもないし、
他人のように思い悩むこともないだろう、と思っていた。
━━━…
だったらこの気持ちは?
何故
傷ついて欲しくないと思うのだろう
早鐘のような鼓動は熱く、近づきたいと思うのだろう
自身の変化に戸惑う。変わりたくない。変わることが怖い。
溢れたかたちに振り回されず、平穏でありたいと願うのに
何処かで欲しいとも思ってしまう自分が止められなくて
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つづり 「…いいや、いいや違う…僕は!」 |
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つづり 「気に入ったものを、僕でない誰かに傷つけられるのが嫌なだけ…! 鼓動は、衝動を抑え込んでいるだけ……!…だって──」 |
ひと目見て気に入ってしまった彼はとても魅力的で
ビブリオに蒐集できないか
僕のものになってはくれないか、と願ってしまった。
その首が欲しい、と、そう思い描いてしまった。
…
ビブリオ
"僕の異能"の中には、生きているものは入れられないから、
つまりは"そういう事"で……──それは"悪い事"だと知っている。
『それが、『恋い焦がれる』ということ、なんでしょうか』
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つづり 「っ……ちがう…!」 |
ふいに、思い出された言葉を、反射的に否定する。
衝動に身を任せれば、相手を害してしまうこの気持ちが
"愛"や"恋"などであって良いはずがない、と頭を振って。
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つづり 「それを…わかっているのに…… この衝動 僕は、…"好きである事"を捨てられない……」 |