今日は何故かいつの間にか《ぬめぬめ》したものが鞄に入っていて、インテグラセンターでジッパーを開いた時には「……ヒュイッ!」って、変な声だしてしまった。
連日謎のものが気が付くと入っているこの事件。
外部からの嫌がらせにしては手がかりが少なすぎて、必然的に大使館の誰かがイタズラをしていると考えるのが無難なように思える。
しかし、ユカラもアズちゃんも同じ被害に遭っている仲間なので、犯行の可能性は極めて低い。
となると、残る容疑者は館長のロケットさん……じゃないや、ランチャーさんかどう考えても悪事には縁遠いユカラの妹さんのマグノリアちゃんしか残っていなかった。
ランチャーさんの行動をわかる範囲で一日監視してみたけれど、特に怪しい事をしていないというか、あんまり働いてねぇなこの人という結論だけは出た。
でも、上司がひっきりなしに動く職場も忙しいので、これ位のぬるさの方が良いのかもしれない。
となると、残された可能性はマグノリアちゃんしか怪しい人は居ないという事になる。
あの天使のようなマグノリアちゃんが、私の鞄に《ぬめぬめ》を?
それはあまりにもあり得ない事ではあるが、誰かに脅されて嫌々イタズラをしているのかも知れない。
マグノリアちゃんの弱みに付け込んで何て事を……私は謎の陰謀者に怒りをぶつけながらも、マグノリアちゃんの日常の動向を調べてみる事にした。
「行ってきますー!」
何時ものようにインテグラセンターへ仕事へ向かう振りをして、私は大使館に戻ってこっそりマグノリアちゃんの行動を確認する事にした。
ビルから一度出て暫く時間を潰すと、私はまたビルに戻り大使館の自分の部屋を確認に向かった。
すると、通路でマグノリアちゃんが大きな移動籠を持ちながら私の部屋へと入っていくのが見えてしまった。
「マグノリアちゃん……まさか、そんな!」
私は部屋に駆け込み、マグノリアちゃんの後を追った。
部屋にはマグノリアちゃんが移動籠から何かを取り出し、ベッドに仕掛けをしようとしていた所だった。
思わず私はマグノリアちゃんの手を掴む。
「えっ、深雪……様?今日のお仕事はもう終わったのですか?」キョトンとしているマグノリアちゃんの手には綺麗なシーツと枕カバーがあった。
「マグノリアちゃん……えっ、これは、どういう事?」
私の疑問にマグノリアちゃんは可愛らしく微笑んだ。
「はい。深雪様達がお出掛けのお時間を使って、ベットメイキングさせて頂いております。いつも快適な睡眠をとれますように。」
マグノリアちゃんめっちゃ良い子だった……好き。