働いて夜遅くに帰る。
そんな日々が続いていたある日の帰り、道端に黒い猫が捨てられているのを見かけた。
その猫は酷く衰弱しているようで、俺は気付けば家に連れて帰ってしまっていた。
とは言え、動物の介抱などしいた事もなく色々とスマホで調べながら
体調が落ち着いたのを確認してから、眠りにつく。
そして
翌朝。
ふと、目を覚ますと昨日の猫がスヤスヤと眠っている。
表情は大分健やかで元気を取り戻したような姿に安心しつつも
場所が場所だけにちょっとここじゃ踏んでしまいそうだなっと小脇を抱え移動させ…
ぐにょーん
伸びた。
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雷蔵 「ん!?」 |
胴が伸び…、伸び過ぎである。その長さ実に1m。
猫の身体は伸びると聞くが、これ骨どうなってんの!?と慌てていると黒猫の方も目を覚まし。
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黒猫 「あ、やべ」 |
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雷蔵 「今、「あ、やべ」って言わなかった!?!?喋らなかった!?!?!?」 |
猫ってこんなハッキリ喋るものだっけ?いや、その前に。こんな伸び。いや…
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(これ本当に猫なのか?) |
気まずい時間が流れる。
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黒猫 「ねこです。よろしくおねがいしまs」 |
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(いや、うん。猫じゃない。これ絶対猫じゃない!! でも、猫じゃないなら…これは何なのだろう?) |
と考えてみてもよくわからないので、理解を諦める。代わりに「元気になったか?」と声を掛ける。
すると黒猫は驚いたようで
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黒猫 「…おまえ、俺を追い出さないのか?」 |
別に今追い出す理由もない。それよりも…
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雷蔵 「俺は雷蔵って言うんだけどさ。お前は?名前ある?」 |
会話が成立するのであればまずは話を聞けば良い。そう思ったのだ。
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クロイ 「俺は...俺はクロイ。クロイさんだ。そう呼んで貰った。」 |
そしてクロイさんはぽつぽつと自分のことを話し始める。自分が何者かよくわからないという事。
暗いところから逃げ出したという事。猫の姿なら誰かに助けて貰えると思った事。
そして、猫では無いとバレた事で何度も捨てられたということ。
行くアテも無く何の後ろ盾も無い、自分が何者かもわからない。
そう語る黒い猫の姿に雷蔵はどうしても自分を重ねてしまう。
ちなみにクロイさんというのは最初に拾った子供が名付けたらしい。
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雷蔵 「…まぁ、別に追い出しゃしねぇよ。それよりも腹が減ったな。朝飯まだだっけ。 猫じゃ無ぇなら何食うの?何か食べてみてーもんとかある?」 |
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クロイ 「…雷蔵と同じのが食べてみたい。」 |
ヒトと同じモノ食えるのか。でもどうやって食べさせようかと考えていると
黒い猫はぐにょーんっと姿を変える。人間の子供ぐらいの大きさぐらいのところで止まり
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クロイ 「こっちのが食べやすそうだ」 |
いや、うん。
全裸はダメだ!全裸は!!!!
慌てて自分のTシャツを着せる。ぶかぶかである。
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クロイ 「なんだコレ?邪魔だな?」 |
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雷蔵 「邪魔でも来てろ…、その姿の時は。」 |
えーっと…子供用の服ってどこで売ってるんだっけ…?
などと考えながら黒猫(?)と青年の共同生活が始まるのであった。