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モモ 「1、2……あぁ今回で3回目か。あっという間にひと月経っちまったな。十日周期で来るって話聞いたときは命いくつあっても足りねぇ、期限来るたびにびくびくするかと思ってたが」 |
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モモ 「バイトして、飯食って、寝てを繰り返してたもう期日だもんな……最中は長く感じるけど、振り返るとあっという間にすぎていたこの感覚、やるせねぇよな」 |
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モモ 「ここから先もあくせく働いて、寝てを繰り返して時間が過ぎていくんだと思ってたが、侵略なんてされたらそうも言ってらんねぇ」 |
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モモ 「私的には今週みたいに知り合いと駄弁って、鍋囲んだりするので十分楽しく感じるんだけどな~」 |
このままそんなありきたりで、それでいて充分に幸せを感じる生活が続くと思っていたのだが、それらを奪う者たちに目をつけられてしまった以上、このままではそのささやかな幸せも奪われてしまうのだろう
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モモ 「つってもなー……何ができっかな、喧嘩とかしたことねーよ。ランニングとかはしてるけどさ」 |
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モモ 「張り付く異能じゃ敵はたおせねーし、そもそも侵略してきてる奴等とバトってる記憶とか何もないから対策建てづらいし……うーん、無難に護身用のなんか、探してみるか…?」
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カリカリ……『携帯しやすい武器』と日誌兼メモ帳の端に書き込む。スタンガンとかスタン警棒が相手を無力化するには良い印象があるが、手に入るかというとどこらへんで買えるかすら目星がついていない
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モモ 「他には折り畳みナイフとか…?やだな、持ってるときに限って職質くらって酷い目に遭いそう」 |
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モモ 「まぁそもそもこっちの世界全体に喧嘩吹っ掛けてくるような奴等にチンケな武器が通用するかどうかっつー問題もある」 |
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モモ 「あぁいや違う違う、自衛。あくまで自衛の為になんか頼れるのが欲しいって話しなんだよな」 |
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モモ 「……携帯性良くって、んでもってたら襲われなさそうな武器……ゲームの武器屋とかならありそうだけど……現代社会に武器屋があるかっつー……の…?」 |
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モモ 「……いや、鍛冶とか得意な異能持ちならあるんじゃね?武器屋……!探してないのに諦めるのは違うしな」 |
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モモ 「この町に居たらいいんだけど、鍛冶屋的なジョブな人」 |
『鍛冶できる人探す!』と新たに書き込む
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モモ 「目下の方針決まったし、今日はとりあえず侵略防げることを祈りつつねるとするか。おやすみー」 |
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モモ 「武器、武器ねぇ……自前の爪で充分なんだが、まぁ向こうの『私』がそれを知ることはないか」 |
大きく鋭いかぎ爪で器用にページを捲り、流れこんできた十日分のイバラシティでの偽装された記憶に齟齬が無いかを確認する。
とは言っても向こうの自分が事細かな詳細を書くような性格ではないことは分かっている。それに加えたとえ齟齬があったとしても、お互い干渉できないため何ら問題はない
ただ気になるのだ。この思ったことをそのまま書き留めたずさんな『私』はいわばたくさんあった可能性の一つである
もしも荒廃したアンジニティの生まれじゃなかったら。
もしも容姿が人間とそう変わらなかったら
もしもそんな平和な世界を奪う奴がいると知ったら…
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モモ 「……ははっ、くだらねー。読み物なんて久しぶりだからつい読んじまったな」 |
そんな今とは違う前提条件を持った自分。そいつが考えてたこと、記憶や体験は既に受け取っているのでメモの内容も既知のものなっている。読み直す必要性もだいぶ薄い
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モモ 「………」 |
一笑に付したが、しばらくするとまたぱらり、とページを捲る
あったかもしれない可能性の自分が綴った、日誌を読めば何かわかるかもしれない。
それが何であるのか、どう変わるのか分からない……ただなんとなしに、彼女はページを捲った