ハザマ世界に来ていくつか分かった事がある。
・ひとつめ
この世界での記憶はイバラシティには持ち帰れない。
イバラシティにハザマ世界の出来事は反映されず、
そして、起きた出来事を覚えて帰ることは出来ない。
イバラシティの自分はハザマ世界の戦いは何一つ覚えていなかった。
それは、ナレハテを倒したあと…
つまり、一度のイバラシティに戻ってから、再びハザマ世界に呼び出された時にはっきりした。
ハザマ世界ではイバラシティでの出来事は全て覚えている。
しかし、イバラシティに戻るとハザマ世界の出来事や記憶は全て忘れている。
だから、イバラシティの自分はアンジニティから実際に侵略を受けている事に、気づいていない。
気づくことができない。
何か、イバラシティ記憶を引き継ぐ方法が無いか。
それを探すのもひとつの手かも知れない。
何かしら方法はあるように思う。
でなければ、榊のような運営する人間が成立しないからだ。
最初の時はイバラシティで榊からの警告を受けたわけだし。
イバラシティに記憶を引き継ぐ手段があっても不思議ではない。
・ふたつめ
ハザマ世界での1回の滞在は1時間相当であること。
これは、ハザマ世界とイバラシティを行き来している間に気づいた。
もっとも、イバラシティの自分はハザマ世界の事なんて覚えていないし、
ハザマ世界の自分は1時間の出来事は連続しているように感じるわけだが。
その連続性のなかに、眩暈のように意識がふらっと混ざる。
イバラシティでの記憶が脳にアップロードされるのだ。
それが大体、1時間ごと。
奇妙な感覚ではあった。
1時間毎に夢から目を覚ましているような感覚。
だが、1時間という明確に区切りがあるのは重要な事であるように思えた。
その1時間の中でハザマとイバラシティの行き来が行われる。
なら、一度ハザマ世界にきたらできる事は1時間分しかないわけだ。
時間は有効に活用したい。
そういう意味でもイバラシティに記憶を持ち帰れたら有利だ。
考える時間は多いほうが良い。
・みっつめ…
イバラシティの自分はいつも通り平穏な日々を送っている。
平和な日常。
虎とD.Dをしたり、
滝を破壊したり、
伝説のDボールを探したり…
そういった日々が、この世界に来ると随分懐かしく思える。
そんな日々を過ごした連中と、この世界では対立し合い戦うはめになるのだ。
そして、また元のイバラシティに戻ると和気藹々と会話をする…。
考えるだけで、気が滅入る話だ。
日記を書いている間にも何度もため息がでた。
俺は、とりあえずの対処療法として、
このハザマ世界での決闘を、D.Dとしてやっていくことにした。
用は『気の持ちよう』である。
侵略や戦争といった血生臭いイメージから一旦距離を置きたかったのだ。
俺は、『侵略』したり『略奪』しに来たのでは無い。
俺は『スポーツ』をやりに来た。
そういう心持でやろう。
そして、それは多少効果を見せている。
勝てば、勝ち。
負ければ、負け。
そこに『D.D』とどれだけ違いがある?
俺は『D.D』をやりに来た。
とりあえず、今はそう言う事にしている。
・よっつめ
そう言えば、肩の痛みが引いている気がする。