長い、長い夢から醒めたような感覚でした。
部活動に、テスト勉強に、遊びに。
仲間たちと過ごした温かい日々、温かい感情が流れ込んできます。
それは、自分が揺らいでしまいそうなほどに尊い“つくりもの”の記憶でした。
からっぽだったわたしのこころに入り込んだ、不純物でした。
淀んだ空の色。乾いた空気。
荒廃した世界に棄てられてから、どれだけの時が過ぎたのだろうか。
或いはほんの一瞬だったのだろうか。気が付けば、侵略行為が始まっていた。
「我は神、か。……くだらない。なにが神だ、笑わせてくれる。」
ワールドスワップによって作られた偽りの人格、十神十。
それは本来の自分がついぞ得ることのなかった平和な日常を過ごす、普通の人間だった。
神としての生を押し付けられた挙句存在を否定され、追放された身。
その私に、あろうことか神を名乗らせるとは……
このアンジニティにおわす神様とやらはどうにも性格が悪いらしい。
作られたキャラクターが自分自身と似ても似つかぬ境遇というわけでもなく、
似通った部分があるのが殊更質悪い。
さらに言うならばこの侵略先は──過去に私が居た世界だ。
それに気付いたのは雪が降った日、河川敷ですれ違った男の一言。
『どうして、アンタがいる。』
アレは確かに私の顔を見てそう言った。
彼は当時の私を知っているし、私もまた彼を知っている。
歳は重ねたようだがアレは旧い知り合いで間違いない。
つまり。私を否定したあの世界を、神は侵略先として選んだのだ。
「一度は否定されたこの身だが、よもや再び彼の地を踏むことになるとはな。
……これも神の思し召し、か?」
くつくつと自嘲気味に笑みを零す。
あぁ、これが笑わずにいられるか。私を否定した世界の、憎き神。
その神の選択が間違っていたことを証明する絶好の機会を得たのだ。
侵略か。良いだろう、乗った。私はきっとあの温かい日常を手に入れる。
どれだけ渇望しても届かなかった、人としての日常を。
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十神 「さぁ、侵略開始だ。」 |
サングラスを外し、服の内側に入っていた短剣を構えて歩き出す。
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十神 「私は……我は、十神十。 アヴェンジャー この世界を壊し、神を殺す──復讐者。」 |