「は?侵略……」
いきなり頭に流れた声に対する反応はそれだった。
なんだそりゃ、訳が分からない。
「ははっ、うける……いや、全然笑えないわ」
今まで飲んでいたコーヒーの空き缶を屑籠へと放る。
カンッ
端にあたりそのまま中へ……入ってくれればいいものを
わざわざ跳ね返ってきた。
「……はぁ、タル……」
異世界の侵略がどうの、
異能の力がどうの、
そんなことは知ったこっちゃない。
そんなことはどっかのお偉いヒーローが何とかしてくれる。
私には関係ない。
私の生には……そんな何かが変わるようなイベント、起きようがない。
……もう、これ以上は起きてほしくない。
「っこいしょっと」
転がった空き缶を拾い、今度は投げずにちゃんと入れる。
自分のノーコン具合……というか、運動神経のなさに呆れる。
壊滅的、というわけではないのが微妙に痛いところで、
自分ができる範囲をいつも見誤るのだ。
「さて、どっかのヒーローに世界は任せて、私はバイトに戻るか」
一人ごちで裏口から中へ。
私は、私の世界を守るので精いっぱいだ。
そんな御大層なことはもっとお偉い人がやってくれ。
私は、今私にできることをやるしかない。
皆の為にも、私の為にも……
「よぉ~こそいらっしゃいましたッ!!榊でございますッ!!」
「ハッ!?いや、ちょっと待て待て!?」
と思っていたのも……結構日にちがたったある日だ。
あの謎の声の主であろう男が目の前にいる。
いや、なんで私なんだ。
おかしいだろ。
もっと他にできるやつが、うまくやってくれるやつがいるはずなのに。
どうして……
どうして世界は、いつも思い通りになってくれない。
「ホント、ツマラナイ」
無性にイライラした。
コーヒーを一気に流しこみたい気分だ。
本当になんだここは、見たことあるようで見たことがない。
訳が分からなくて、混乱で頭がおかしくなりそうだ。
そこに現れた、よくわからないもの。
あれを倒せって?
冗談、どうやって――
「あ……」
そう思った瞬間、なぜかいける気がした。
なら、やってやるさ。そうまでして私に何かさせたいなら。