エアリス 「オーケー、分かった。 魔術師は王が命のままに、愚者は友の願いのままに── 君が望むなら、私はそれを叶えよう」 大仰な口調でそう告げると、懐から取り出したハンカチをあなたの腕にきつく巻きつける。 エアリス 「少しだけ、目を閉じていて……うまくいけば、一瞬で終わる」 あなたが言葉に従い目を閉じれば、いよいよ短刀の冷たい刃がそっと当てられる。 血流が滞り、腕の感覚がなくなった瞬間──まるで腕が落ちたかのように錯覚した瞬間。 どさりという音が聞こえるはずだ。 その感覚が現実に影響したかのように、綺麗な断面を残して異形の腕が斬り落とされているだろう。 ──それを妨げる事態が起きない限りは。 |
どさり、と音がした。 冷たい刃が、肉体のみならず、精神の一部まで持ち去ってしまったような、そんな感覚。 腕が落ちた。それだけでは済まない感覚。 ーーーーしかし。 |
ロズ 「っ……!?」 |
咄嗟にーー右腕が落ち、身軽になった分だけ素早く、遠くーー貴方から遠ざかる。 怖気がする。予感がする。彼女を敵だと認識してしまう。 冷や汗が止まらない。切断された腕から流れ落ちる血液は、急速に流れ落ちる量が減っていく。 |
ロズ 「か……あ……!? お腹、が……!」 |
飢餓感が急速に増していく。切断された腕の切り口が隆起していく。 牙が生えた。顎が生えた。骨が飛び出、長くなり、本体を形成し、鱗が形どられていく。 飢餓に周囲が見えなくなる。手頃な肉を欲している。 見える。 人影が。温かい肉が。 そしてーー |
ロズ 「ダメ、……ダメ……!」 |
ーーもう一つ、足元に落ちた、食べにくく不味い肉があった。 肉を貪り食う右腕は、切り落とされる前よりも細く、鱗も生え立てで小さくなっていた。 もう一度切ればより細くなるだろうが、今の身体でそれを行えば、命が持つか怪しいだろう。 |
ロズ 「ごめ……ん、ちょっと、これ以上、は……」 |
しかし、体調以外に変化した物がある。それが何か、はっきりと口はできないが、それは確かだと感じていた。 |
周囲に散らばっていた服を拾う。 何処かへ散らばっていたり、破れていなかったのは救いだ。下手をすれば全裸で徘徊をする羽目になったかもしれない。 身体を覗いて見れば、甲殻は様々な場所を覆ってはいるものの、流石に体全体を覆ってはいないから、服無しで人前に出られる格好では無い。恥ずかしすぎる。 立ち上がって、身体を確認する。 新しく生えたのは左肩の肩甲骨下から伸びた、もう片方の翼だ。 右側と同様に、甲殻のような羽根で覆われていて、重い。更に体重が重くなっているから、羽ばたいて飛ぶことはできないと思う。 試しに一度、羽ばたいてみる。羽根が空気を捉え、卵の殻を吹き飛ばし、ふわり、と脚が浮くものの、これをずっとやれるかというと、多分無理だろう。 滑空するのには、両側が揃ってバランスが良くなっているだろうか。高いところから、あるいは、少し高く跳んで滑空して移動、ということもできるだろうか。 色々と新しい事ができるようになっていると、そう思った時、ふと気がつく。 「……って、あっ」 迂闊だった。服が羽ばたいた時の風で吹き飛んで、水辺へ落ちてしまった。 幸いにも淡水で、乾かせばすっかり綺麗になると思うけれど、それまで出発はお預けだ。 「まあ、休憩は必要だよね。」 そう思う事にする。水を汲んで、荷物の中から非常食を引きずり出して、落ち着いた場所を作り出す。 食事を準備する左腕には新しい甲殻ができていたが、少し触るとペリペリと剥がれていく。厚く、剥がれにくい甲殻は二の腕に集中していて、服を着る分には隠れて見えないだろう。 ソレ以外の部分で大きく変わったのは鱗だ。目立つ甲殻より細かい、鱗のような物が、腕や、脚の太ももの半ばまでびっしりと生えている。 甲殻のように動きを阻害せず、皮膚のように自在に動く。ごつごつとした肌触りだから異質な物ではあるものの、心の余裕ができているからか、落ち着いて受け入れられている。 そう、心の余裕ができている。落ち着いて、身体を見ることができている。 もう、これ以上の侵食は、異形への変化は無いのだ。これが最後なのだ。 水を汲んだ器を覗き込む。 うっすらと見える自分の顔には、はっきりと変わった部分があった。 右目の赤が消え、青色になっている。 しかし、左目のような空色ではなく、体中の甲殻の色と同じ様な、夕暮れの青空のような深くも淡い、青の色だった。 甲殻と、目の色から悪魔の要素が抜けて、名残を残しつつも、これらが全て、ロズトアのものとなった証拠であった。 水を煽り、非常食の干し肉を口に収める。勿論、右腕の口に、だ。 その感覚も大分異なっている。口は右腕の――歪だがきちんと腕と、手のひらの形を伴ったものになった――手のひらの中心にあった。 頭の形がなくなり、手のひらから食物を摂取するのは今まで以上に異様な光景だとも思ったが、それはもう、ロズトアの中では大した問題ではなかった 甲殻と鱗で包まれているのは変わらないが、きちんと指まで存在して、物を傷つけずに掴めて、摘める、腕。 ひょい、と「右手で」肉をつまみ、上へ放り投げ、右掌で受け止め、飲み込む。その一連の動作ができることが、何より嬉しかった。涙があふれるほどに。 右腕は歪な形となってしまった。それはおそらく、悪魔の限界だったのだろう。 魂の穴を埋めた時、肉体はその形へと変貌しようとした。しかし、形だけ、しかも歪に整えた魂は、元からある肉体を全て変化させるには足りなかった。 だから、こんなに中途半端な形に戻ったのだ。 だけれど。 そう、だけれども。 胸の宝石を見やる。余り、溢れ出た魂は、その大きさを小さく、それこそ首飾りほどの大きさへと縮めていた。 右腕は人の形を多少なりとも取り戻し、胸を圧迫していた宝石は、気道を邪魔しない程には取り除かれた。 そして、悪魔……いや、竜が抜け、赤目がいなくなった今、右腕が勝手に人を襲い、噛み砕く事はもうない。 これだけでも、十分すぎるほどだ。変わってしまったが、身体を全て自分の元へと取り戻せたのだ。 それは、一番欲して止まなかったことだから。そう、噛みしめるのだ。 非常食を粗方食べ終え、最後のひとかけらとなった時。ふと気がつく。 胸の宝石が小さくなったなら、口から――右腕でない、本来の口から固形物を食べられるのではないだろうか、と。 最後に残った、小さな干し肉を口へ運ぶ。 「……!?げっほ、ゲッ……!!」 思わずえづく。右腕と同じように、一回噛んで、丸呑みにしようとしたところで、食道どころか喉の奥まで入っていかなかったのだ。 そうだ。右腕で物を食べるようになる前からずっと、硬いものを食べることなんて、殆ど無かったのだ。咀嚼というものを完全に忘れていたのだ。 改めて、肉を口に入れる。今度はしっかりと噛んでから飲み込もうとして。 「……かったぁ!?」 ……できなかった。 思った以上に干し肉が硬い。咀嚼を忘れた顎は弱りきって、干し肉を噛みちぎることすらできないのだ。 しかしそれでも、暫くしゃぶっていると肉が解れて喉の奥まで破片が運ばれる。 それを恐る恐る、しかし楽しみと共に嚥下する。 感じる。 肉の味を。塩分を。油の味を。喉越しを。 それは、長い間忘れていたこと。しかし、今ようやく取り戻した物。 涙が、自然と溢れてきていた。 「さて、と………。」 これからどうしようか、と考える。 身体は歪に変化してしまったが、取り戻した。帰る手段にも目処が付いている。 つまり、ここに留まる理由はもう、無いと言っていい。 だけど。 「前に、進んでみようか」 そう。前に進む。 それは、この星に来て、最初に決めたこと。最初は身体を取り戻すための手がかりを求めて。だけど、今は。 「この先を見てみたい。」 単純な、だけど今まで押しのけられていた、彼女自身が持つ、探究心という強い気持ち。 それに突き動かされるように、彼女は歩き出した。 「…………服干してたの忘れてた!!!」 半裸でもあまり気にならなかったのは、多少なりとも竜の考えが混ざってしまったのだろうか。 |
ロズ 「どこまで、強くなるんだろう、なれるんだろう。」 |
ロズ 「……強いのだと良いなあ。」 |
ロズ 「……強いのだと良いなあ。」 |
ロズ 「……片付かないよぅ。」 |
ロズ 「兎に角、前へ、前へ……。」 |
「………」 |
エアリス 「やあ、やあ。『わたし』を呼び出したのはきみかな。 ご期待に沿えるよう、できるだけ頑張って見せるよ」 |
デイ 「幽霊でもいいのなら、手を貸しましょう」 |
シーレ 「私は一人では何もできませんので」 |
ロズ 「使い方……まだ分からないけど、みんなを援護して、それで 」 ロズ 「……ええと。 」 ロズ 「……力いっぱい、やります。ちょっと周りごと、みんな傷つけちゃうかもしれないから、気をつけて……。」 |
○ | Pno113 ロズPT [前 / 新 / 集] Eno113 ロズトア Eno14 闇 Eno80 エアリス・フローレンシア Eno117 デイ Eno57 シーレ |
VS | Pno231 うさぎ隊 [前 / 新 / 集] Eno231 うさぎのバニラ Eno159 ケス Eno85 月猫 Eno312 ライラ Eno13 烟玖 |
× |
○ | Pno113 ロズPT [前 / 新 / 集] Eno113 ロズトア Eno14 闇 Eno80 エアリス・フローレンシア Eno117 デイ Eno57 シーレ |
VS | Pno302 レイアPT [前 / 新 / 集] Eno302 レイア・ドルミール Eno301 アレックス・ドルミール Eno14 闇 Eno59 サート Eno300 リーヴィア |
× |
○ | Pno112 スォムPT [前 / 新 / 集] Eno112 【j-ⅩⅢ】喰らいしスォム Eno133 ウィンテル・ノワキ・ナギ Eno7 チェヌリョーザイーミエ Eno202 ヤマツ Eno261 シロ |
VS | Pno113 ロズPT [前 / 新 / 集] Eno113 ロズトア Eno14 闇 Eno80 エアリス・フローレンシア Eno117 デイ Eno57 シーレ |
× |
ロズ 「わたしは前に進む。何があるか分からないけど、前に進むって決めたから。」 |
「………」 |
誰にも知覚されない死角── もしかすると、彼女が『いるかもしれない』場所に、 幻術士は、音もなく現れていた。 ■■■■ 「こんにちは、こんばんは。 始めまして、お久しぶり。 教えてくれるかい、わたしの名前を」 |
ロズ 「私は前に進むの、だから……!」 |
「………」 |
エアリス
「きみが、わたしを止めるというのなら。 その『意志』、しっかりと示して欲しいんだ。」 |
デイ 「さぁさぁ……どちらがBUGか答え合わせといきましょう」 |
シーレ 「……」 |
真音 「えーと、お手柔らかにね?」 |
チェノー 「よし、行こう!」 |
ヤマツ 「我はヤマツなり。 “哲学者”のカード。“隠者”のカードの逆さ裏。 」 ヤマツ 「────自由に使うがいい…… 愚者より愚かな隠者ども」 |
ナギ 「軽くいきましょう。ね?」 |
チェノー 「魔を破る石よ、邪悪を祓い清めろ!」 『チェノー』 「フン」 チェノー 「ダメか……」 |
エアリス
「そっちは偽物だった、ってことにしようか」 |
エアリス 「清濁飲み込んで世界はなお綺麗だ」 |
エアリス 「予想外のハプニングが、君たちを待ち受けているよ」 |
エアリス 「どうして、今それを行う必要があるだろう?」 |
エアリス 「多少は消費を軽減してくれるはずだよ」 |
ヤマツ 「よもや──── この期に及んで“此れの対策を講じてないとは言うまい?」 ヤマツ 「くっくっ、それでは答え合わせといこう」 |
ヤマツ 「人の話は最後まで聞きなさい」 |
ヤマツ 「“わたしのいう通りに動きなさい”」 |
風の鳴る音がする。ひゅうひゅうと、聞こえる。 もう耳など無いというのに、こびりついて離れない。 ああ……メリル。愛しいわたしのメリル。お前の息が。わたしの鼓動が。 どんどん小さくなっていく……遠くに消えていく。 |
「………」 |
「………」 |
「………」 |
「………」 |
「………」 |
「………」 |
「………」 |
ロズPT Chain | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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BUG Chain |
エアリス 「かつてより成長したって本当に言えるのかい?」 |
死者のためのものであり、生者のためのものでもある。 |
デイ 「ははぁ……いい音したわね?」 |
ヤマツ 「……ぐっ!」 |
ロズ 「……えっ?」 |
カードは枯れ朽ちてしまった。 |
エアリス 「あの時を境に時間は止まってしまったんだ」 |
ヤマツ 「やめろ、鬱陶しい」 |
カードは枯れ朽ちてしまった。 |
隣前後に仲間がいる。手をかけられる場所に、仲間がいる。 |
ロズPT Chain 列命傷冥闇Lv4(1) 治癒活気Lv4(2) 全活気Lv4(3) 惨殺傷冥闇Lv4(4) 列命傷冥闇Lv7(5) 遠自傷冥闇Lv5(6) 列治癒活気Lv4(7) 自傷冥闇Lv4(8) 列自傷冥闇Lv5(9) 列傷冥闇Lv7(10) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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BUG Chain ?(1) ?(2) ?(3) ?(4) ?(5) |
エアリス 「あてずっぽうよりはマシだね?」 |
ヤマツ 「……?はて…… 何をしようとしていたのだったか……」 |
チェノー 「イモもおだてりゃ木に登る。ヒトなら何をしてくれる?」 |
ヤマツ 「わたしも衰えたな……」 |
正義が心に力を与える。自分に非はない、あいつのせいだ。 |
ナギ 「証明を開始する!」 |
チェノー 「腐鎖りは始まる」 |
『チェノー』 「マトワリツケ」 |
チェノー 「いずれは枯れ」 |
『チェノー』 「潰セ、潰セ!」 |
ナギ 「惨くはしないわ」 |
ヤマツ 「なるほど」 |
エアリス
「怖いね。あと半歩だったよ」 |
チェノー 「全ての生は砂と化し」 |
肺が膨らむたび、入ってくる、侵ってくる―― |
ナギ 「答えを聞かせてね!」 |
「………」 |
エアリス
「そろそろやめにしないかい?ダメ?あっそう」 |
真音 「まだまだ始まったばかりだよ。油断はしないでね」 |
チェノー 「まだ始まったばかりでしょ?」 |
ヤマツ 「……」 |
ナギ 「これからよ!」 |
エアリス 「世界はゆっくりと停滞していく。破滅は近いよ」 |
ヤマツ 「傷つく準備のひとつも出来ていないのなら、どれ、 わたしが拵(こしら)えて差し上げよう」 |
チェノー 「腐鎖りは始まる」 |
ヤマツ 「では、こちらも」 |
ヤマツ 「そら、頂戴しよう」 |
チェノー 「いかな大地であろうとも」 |
振り回して、振り回されて。 それを良しとするのが……僕たちの生き方だから。 |
チェノー 「これだけだったっけ?」 |
ヤマツ 「………………ありがとう」 |
チェノー 「凡ては地続きだよ」 |
シーレ 「……。」 |
このカットインはいもさん(Eno.106はぴこさんPL)から頂きました ありがとうございます!
It`s show time! |
シーレ 「……。」 |
デイ 「繋げましょう」 |
ロズ 「ありがとう……。」 |
「………」 |
エアリス
「すごいね、まるで回復されてるみたいだよ!」 |
ロズ 「あ。」 |
チェノー 「うぐっ……!」 |
ロズ 「あ。」 |
チェノー 「うぐっ……!」 |
「………」 |
6'th chain!! |
シーレ 「cluse.」 |
ロズ 「ありがとう……。」 |
ロズ 「ありがとう……。」 |
「………」 |
「………」 |
エアリス
「……ほんとは私にそこまでする必要なんて、ないのさ」 |
エアリス
「……ほんとは私にそこまでする必要なんて、ないのさ」 |
発揮したスキルカードが崩れていく |
「………」 |
Over drive!! |
エアリス
「ふふっ、やっちゃった!」 |
シーレ 「weisheit.」 |
デイ 「あっははは!楽しいわ!楽しいでしょう!!」 |
チェノー 「うぐっ……!」 |
ロズ 「あ。」 |
ナギ 「い゛っっっ」 |
「………」 |