腰の痛みは、幸いにもすぐにひいてくれた。 モークは探索者たちの拠点となる街にジムを見つけると、そこでフィットネス・バイクとショルダー・プレスに屋内ロック・クライミング、あとはトランポリンで飛び跳ねながらの翼の運動をやって、その身に活力と自信を取り戻させた。 荒事は避けるつもりでいるが、それでも何があるかわからない。いざという時に最も頼りになるのは、やはり自分の肉体なのだ。 ☆ ○ ☆ ○ ☆ ○ ☆ ○ ☆ トレーニングを終えて颯爽と歩きだしたモークは、やがて海岸につきあたった。 既に高く昇った太陽は、惜しむことなくその光を水面へと放ち、不確かで、しかし儚いと言うにはほど遠い輝きを海に与えている。砂浜も、たった一歩歩いただけで、ひどく賑やかにきらめいてみせる。 特に危ないものはいないらしい。モークは、のっしのっしと浜辺を通り過ぎ、その先の岩壁に登ると、バックパックを地面に降ろして休憩の用意を始めた。灰色の棒状の物体を土の上に突き立てて側面のボタンを押せば、シューッと三メートルばかり伸びあがって枝を生やした後、それらをつなぎ合わせるようにオレンジの不透明な膜を吐き出して、陰を作ってくれる。四角い箱はひとりでに展開して小型のコンロになり、そこでお湯を沸かして携帯用の圧縮食を戻すことができた。 そんなことをしつつも、モークの目は海のほうに向いていた―――食料になるようなものがあれば、採っていきたかった。のどかな風景だが、ここは既に未開の領域のはずである。いつまた人に会えるかわからない。 年老いた今でも少々味が濃すぎるように思える圧縮食を平らげ、一息ついたら、今度はカゴと銛とを手にして海へと潜る。 遠くで魚たちがその身をひらめかせたのを見れば、太い両足を力強く上下させて突き進む。モークの頭は、既に自らが為そうとしている運動の軌道をはじき出していた。それは、経験と訓練のたまものである。 ついに追いつき、銛をグッと突き出したら、ブオッ! 魚群が、オレンジ色の煙を吐き出した……モークは慌てず海床に下降すると、この目くらましを懐から取り出したカプセルに収める。それから、得物の先端に運悪く捉えられた一匹の魚を見て、あの岩壁の上に戻った。 オレンジのパラソルの下でバックパックから灰色の立方体を取り出し、脇についているケースから親指ほどのガラス管を二つ抜き取ると、その中に先ほどの煙幕と魚から切り取った肉片とをそれぞれ入れて、立方体に開いた穴に差し込む。スイッチを入れて電気を流せば、箱の中の有機体が活性化し、抽出された成分を取り込んで、代謝をはじめる。 この毒見ボックスが結果を出してくれるのには、少し時間が必要だった。それまでは魚を凍らせつつ、海を眺めてしばし待つ。 そういえば、若い頃の探検で、ほとんど海だけの星に行ったことがある。あの時は乗り上げた島が実は巨大なアンコウめいた生き物で、ブルー・バード号ごと丸呑みされそうになったりもした。何とか離脱して上空に出たら、今度は吸盤のついた触手が海の底から飛んできて、カエルが虫でも捕まえようとするかのように追いかけ回してきて…… ピロン! 毒見ボックスが明るく肯定的なサウンドを発して、モークを回想から呼び戻した。 ☆ ○ ☆ ○ ☆ ○ ☆ ○ ☆ そのまま西へと歩く中で、モークは多くを見た。天を衝く塔があったかと思えば、地の底に続いているのではないかとも思われる縦穴があり、その先には魂魄がまるごと漂っているかのような畏れを抱かせる川が流れていて、やがて海に流れ込めば激しい渦へと変じていた。 たった半日歩いただけで、世界が四度も変転する……これまで多くの星を渡り歩いてきたモークだったが、流石にこんなところは見たことがなかった。もっともっと歩いてみたかったが、気づけば陽はすっかり沈んでおり、雨の匂いもしてきた。これ以上の探索は危険が伴う。 テントを張るのに丁度いい場所を探していたら、人工物とおぼしき大きな影を見つけた。 ☆ ○ ☆ ○ ☆ ○ ☆ ○ ☆ それは木々の間に埋もれかけているようで、確かな形を保っていた。 モークは崖の上から羽ばたいて、それの屋根の上に乗り、木を伝って地面へと降りる。 上方に向けたライトが、口を結んだいかつい顔を浮かび上がらせた。 巨人が、いる……! モークは、思わず後ろに下がった。そうするとライトが照らす範囲は広がり、この巨人がそこに存在する理由を映し出した。石造りの門、丁度反対側に立つもう一体の巨人、植物たちに呑まれかけながらもなおその存在を確かに訴えかける小道。ここは、寺院であるらしかった。 ふと、ぽつりと鼻先に水気を感じる。ついで頭の羽根に。バックパックの上面も軽く音を立てる……とうとう降り出した雨は、急速に強くなっていくようだった。 モークは寺院の屋内へと駆けていった。土着の人々がいるなら後々面倒に巻き込まれぬためにも声をかけておきたかったが、生き物の気配は感じられない。 寺院の中は意外と広く、床は石造りであったためコンロを使っても問題はなさそうだった。 昼間の魚を解凍し、火を通してから身を解し、乾燥インスタント・スープに混ぜ合わせて足しにする。弾力のある白身魚なので、塩気の強いスープとの相性は悪くはなかった。 夕食を終えたら、ライトを手に軽く寺院を歩き回る。 柱に文様を見つけたら、ライトのお尻についたボタンを押し、中から『脚』を展開させて地面にセットする。そうして空中に固定された明かりを頼りに、デジタル・カメラで文様を撮影する。カメラは土地に宿った霊的存在を刺激するのでよろしくないという意見もある―――実際、それで被害を受けた者もモークは知っている―――が、ここにはそんなものはいないだろうと思っていた。さっきからずっと、自分の立てる音と雨の音しかしないのだから。 歩いて、照らして、記録を取る。その中でモークはふと、翼を生やした人型の像を見つけた。オーゲリアンにも似ているが、スマートに締まったシルエットだ。こいつのモデルになった人は、自分よりもずっと軽やかに空を舞うのだろう……そう考えた時、モークの頭に、忘れられないおとぎ話がよみがえった。 はるか昔、オーゲルに夢を抱いた男がいた。そいつは自らの翼で、天に住まうオーゲルの神―――と言っても三柱おり、オーゲリアンに鳥の翼を与えたものと、獣のたくましさを与えたものと、知恵を与えたものとがいる―――に会いに行こうとした。どうしてそうしたいのかを、彼は語らない。 男はただひたすらに天への階梯を求め、全ての山に登った。最後に訪れた頂で、彼は空の果て、衛星の狭間、星の海の手前に浮かぶ光の国を見た。迷うことなく翼を広げて空へと舞い上がった男は、しかし宇宙から降り注ぐ熱の矢に焼かれ、跡形もなく消えてしまったという。 今の感覚からすればいささか濃く、遊びのない絵柄の本は、この物語を勇気を訴えかけるものとしてモークに教えた。だがある時遠くの町に行ってみた時、そこではこの男は無謀さの象徴であり、神に戒められたのだということになっていた。強い信仰を謳った話とされていたこともあったし、神は触れ得ざる者だとしたものだと言う人もいた。物語の中の男は、何も語らないというのに。 モークは、時々このことを考えて、時には誰かと話したりもして、いつしか答えに思い至った。きっと自分も、根っこの所ではこの男と同じなのかもしれない。だからこそ、勇気を高らかに掲げて生きていくしかない。だからこそ、ふと顔を出す無謀さに目をつむってはいけない。 いつでもそのことを心に留めながら、冒険家をやってきた。 どこかから、足音が聞こえてくる。 やはり誰かがいたのだろうか……ライトを手に振り向いたモークが見たのは、不時着した時に出迎えてくれたあのスーツの紳士だった。お菓子をプレゼントしてくれて、そのままどこかへ去って行った。 意外と先の方まで人はいるのかもしれない。そういえば、『追加注文』の講習とやらももっと北の方で行われるのだっけか。少し安心する反面、がっかりしたような気分にもなる。まあ、一度は人が入った星だというから、当然のことなのかもしれないが。 夜は更けていった。 |
Gone Past 「トレックさんね。よろしく 」 Gone Past 「オーゲル?……うーん。悪ィ、初めて聞く名前だ。そこはどんな星なんだい 」 Gone Past 「へえ、宇宙探検家。そいつは凄い。俺もあちこち行くが、旅行みたいなもんだからな 」 Gone Past 「……アー、ここに来る前は鉄ばかりの世界にいたぜ。その前は虫の楽園みたいな場所だな。その前は——どこだったか 」 Gone Past 「この星も、様子は違えどBUGの楽園っぽいがな」 |
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交流歓迎 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地球から遠く離れた「プラゾア太陽系」に存在する、惑星「オーゲル」出身の宇宙探検家。 温厚で落ち着いた性格の持ち主だが、時には感情を強く出すこともある。趣味は風景の写真集を読むこと。 応急処置や料理、サバイバル技術、さらには写真撮影といった、探検家に必要なスキルをもれなく身につけている。老齢に近づいた身でありながら身体能力も高い。「ブルーバード号」という宇宙船を個人所有しており、これで宇宙を旅している。 幼いころから宇宙を旅することを夢見ており、カレッジ(大学)を卒業した後に本格的に探検家活動を始めた。数年後、先史文明に関する重大な発見をしたモークは一躍時の人となり、その後も多くの実績をあげていった。そんなある日、彼は宇宙海賊に襲われていたオーゲル星人の女性を救い、そのまま交際を始めて結婚に至った。程なくして息子ムートを授かったこともあり、モークはここで探検家を一旦引退した。 だが幸せな時間は長くは続かず、ある事故によって妻に先立たれてしまう。モークは遺されたムートを育て上げることに全力を注いだが、やがて彼も大人になり独り立ちをした。一人になったモークはもう一度昔のような生き方をしてみたいと思うようになり、探検家業への復帰を決意したのだった。現在は「白鈴公司(はくりんこうし)」という企業のバックアップのもとで活動を続けている。 ある日、新たな冒険に向けブルーバード号で宇宙を旅していたところ、原因不明の空間異常に巻き込まれてしまい、この物語の舞台となる惑星の近海にワープ。その際ブルーバード号は故障してしまい、修理の為に金を稼がなくてはならなくなった。 (Twitter: @BehindForestBoy) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 |
Ino | 所持Max12 / 所持数8 | 種類 | 効果 | 効力 | 精度 |
1 | 【主力】オーゲルの皮鎧 | 固有殴打武器 | - | 8 | 8 |
惑星オーゲルで作られた獣の皮の鎧 | |||||
3 | 武器屋のカード | 固有設置 | 武器屋Lv3 | 2 | 10 |
現在地マスに武器屋を設置する(区分:武器屋) | |||||
4 | モークのメモ | 確認 | - | - | - |
落書きなどができる。出品、送品、廃棄などの挙動確認にどうぞ。 | |||||
5 | モークのメモ | 確認 | - | - | - |
落書きなどができる。出品、送品、廃棄などの挙動確認にどうぞ。 | |||||
6 | モークのメモ | 確認 | - | - | - |
落書きなどができる。出品、送品、廃棄などの挙動確認にどうぞ。 | |||||
7 | 癒しの川のカード | 特有設置 | 回復施設Lv6 | 6 | 5 |
きれいな川と小さな小屋だ(区分:信仰) | |||||
8 | 見つけた丘のカード | 特有設置 | 散策施設Lv5 | 5 | 5 |
とても静かな丘。人は少ないはずだが……(区分:散策) | |||||
9 | 熊胆 | 固有薬物 | 利胆Lv1 | - | - |
Sno | 所持Max26 / 特有Max3 / 設定Max5 / 所持数9 | 所有 | 種類 | 効果 | LP | FP |
1 | 無名のカード | 固有 | 解離 | 傷殴打Lv1 | 0 | 12 |
2 | 無名のカード | 固有 | 解離 | 傷疾風Lv1 | 0 | 12 |
3 | 無名のカード | 固有 | 解離 | 治癒Lv1 | 0 | 14 |
4 | モークの縄 | 特有 | 罠 | 罠列傷身突刺Lv1 | 0 | 24 |
5 | 無名のカード | 固有 | 先発 | 個別御替Lv1 | 0 | 2 |
6 | モークの靴 | 特有 | 解離 | 列傷殴打猛毒Lv1 | 0 | 30 |
7 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 活気Lv1 | 14 | 0 |
8 | モークの羽根 | 特有 | 解離 | 列応傷投射Lv1 | 0 | 24 |
9 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 全活気Lv1 | 42 | 0 |
Marking Chara List |
[Command] Eno23:トビー |
[Command] Eno74:絆の姫君と力の皇息 |
[Command] Eno42:まりあ |
[Command] Eno14:闇 |
[Command] Eno320:シンセミア |
[Command] Eno31:デカパイ少佐 |
[Command] Eno59:トロィスィ |
[Command] Eno85:宵 |
[Command] Eno90:アルテナ |
[Command] Eno97:NASと宇宙探索ロボ達 |
[Command] Eno100:クラヴィス・クレイドル |
[Command] Eno103:ながれぼしのミリウ |
[Command] Eno142:Gone Past |
Ano | 名称 | 休日 | 区分 | 詳細区分 | 価値 | 期限 |
S-1 | 全自動おきがえルームのカード | 豊穣 | 衣服 | 衣服屋Lv5 | 25 | 4 |
自動的におきがえさせてくれる便利なお部屋だ | ||||||
K-2 | 祭器屋のカード | 安息 | 祭器 | 祭器屋Lv5 | 54 | 8 |
区分 | 設立数 | 運営日数 | 利用計 | 本日の収入計 | 区分 | 設立数 | 運営日数 | 利用計 | 本日の収入計 |
衣服 | 1 | 2 | 0 | 0 | 祭器 | 1 | 1 | 0 | 0 |
Mission List |
#追加注文基礎講座受講 指定の場所へ行き、講座を受講する。 目的地:D-Lv4 |
Mission#A List |
AdditionalOrder List |
A | B | C | D | E | F | G | H | I | J | K | L | M | N | O | P | Q | R | S | T | U | V | ||
5 | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | 5 |
4 | 4 | ||||||||||||||||||||||
3 | ★ | 3 | |||||||||||||||||||||
2 | ☆ | 2 | |||||||||||||||||||||
1 | ☆ | 1 | |||||||||||||||||||||
A | B | C | D | E | F | G | H | I | J | K | L | M | N | O | P | Q | R | S | T | U | V |